翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

リセットしては元に戻り、繰り返す人生

ウラナイ8の杏子さんがこのところ不調ぎみ。

火曜の夜に連絡があり、「伊豆高原の断食施設やすらぎの里、二人部屋に空きがあるから行きませんか」というお誘いが。高原館の3泊4日断食コースです。

ちょうど一年前のこの時期、本館に一週間滞在しました。ただし、空腹では仕事も読書もできないので、普通食コースを選びました。

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もう断食は卒業したつもりでした。とにかく空腹の時間をやり過ごすのが大変だから。食事シーンがでてくるので読書もネットも目の毒です。

でも話し相手がいれば、大丈夫かも。気心が知れて共通の話題のある杏子さんは絶好の断食パートナーとなるでしょう。それに、火曜の夜に決めて木曜には出発ですから、迷う暇もありません。2つ3つの用事を大慌てで片付け、東京駅から踊り子号に飛び乗りました。

 

去年滞在したのは本館で、一昨年は養生館。週末の3泊と2泊だけを受け付けている高原館は12年ぶりです。前回も占い師仲間の優春翠と2人部屋で、初めての断食はつらかったけれど、話し相手がいるので乗り越えられました。

 

初日の夕食、具なしのお味噌汁。丁寧に調理された一品ですが、さすがにこれだけではお腹が空きます。断食の前準備で昼ご飯も抜いていますし。

2日目の朝は人参のスムージー、夜はじゃがいものすりながし味噌汁でした。

空腹の極地にあり、「ここを出たら何を食べたいか」と、杏子さんと囚人のような会話。あんなにお酒を飲んでいたのに、お酒よりまず食べ物。特に、甘いものが食べたい。

強い欲望を覚えたのが、自宅の冷蔵庫に入っているニュージーランド産のダブルキャラメルアイスクリーム。最近ハマって常に買い置きしています。1000ml398円と格安なのは、イオンのトップバリューブランドだから。羽田空港JALラウンジで食べたハーゲンダッツのカスタードプディング味よりおいしいと感じる私の舌はどうなっているのか。

 

今日の夜には回復食が出て、明日の朝は普通食。そして、お昼には娑婆に戻れます。

 

初日に参加者の自己紹介があり「昨年、ここの断食コースで4キロ痩せました」という女性がいました。1年後、すっかり元に戻ったのでまた来たそうですが、普通食を選んで日常生活にやすらぎの里のスタイルを取り入れて行きたいとのこと。普通食は一食500カロリーを1日2食、間食がないのでそれなりに痩せます。それでも私は1年も経てば元に戻っていました。

人間は誘惑に弱く、一度の体験ですっかり変わろうとしても無理。リセットして、元に戻って、またリセット。その繰り返しなのかもしれません。

桜に誘われ、秋田の金浦へ

先日の1泊2日の那覇行きは思いつきでしたが、それとは別に月に一度、計画を練って旅に出ています。ただし、行先はJALの「どこかにマイル」任せ。1か月前から申込めます。

青森、秋田、大分、熊本という東北と九州の組み合わせを選んでみました。4つの候補地のどこになっても楽しめるはず。

 

結果は秋田。宿はサウナ検索サイトの「サウナイキタイ」で探します。

ドーミーインもあるのですが、秋田は青森と並ぶ公衆浴場天国。ホテルを併設しているユーランドホテル八橋の評価が高いので行ってみることにしました。

 

名水が湧く地には、いい水風呂があります。秋田の水風呂も肌に柔らかい名水でした。

ユーランドホテルには、フィンランドをイメージしたコワーキングスペースもあり、食事処かっぱ亭の料理は絶品。春野菜とタコのサラダ、白身魚の紫蘇包み揚げなど秋田の地酒が進みます。1週間ぐらい滞在したいと思ったほどです。

 

かっぱ亭のテレビにNHKのローカルニュースが流れていました。

秋田市の桜は咲き始めですが、県の南部「にかほ」では満開とのこと。地名の読み方はどこも独特です。「にかほ」は「仁賀保」。ネットで検索するとJR羽越本線で1時間の距離です。たまたまこのニュースを耳にしたのも何かの縁ですから、行ってみることにしました。

 

秋田を代表する桜の名所は仁賀保駅の一つ先、金浦(このうら)駅の勢至(せいし)公園です。

午前9時11分に秋田駅を出発し、戻りの電車は午後1時11分。約3時間の滞在です。数分おきに電車が発着する東京の感覚とは別世界。秋田駅Suicaで乗っても金浦では出られないかと思ったのですが、秋田駅の改札からしSuicaに対応していませんでした。

 

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観音潟を取り囲むように桜が満開。

平日の午前中だったせいか、花見客はちらほらとしかいません。異世界に連れていかれそうな幻想的な風景を満喫しました。

 

満開の桜をたっぷり愛でて、時間は午前11時を回ったところ。秋田行きの電車が来るまでの2時間近くをどう過ごせばいいのでしょう。Googleマップでカフェを見つけて行ってみました。

美術品の展示スペースのような個性的なカフェです。扉を開くと、ランチ用にセッティングされた席が目に入りました。お昼は金浦駅のおにぎり屋さんと決めていたので、「お茶だけでもいいですか?」と声をかけると「どうぞ、どうぞ」という温かい歓迎の声。広いテーブルに案内されました。

 

「酒田から? 福島から?」と聞かれて答に詰まりました。秋田ではコロナ感染が増えていますから、東京からの客なんて嫌がられるかもしれません。でも、こんなに歓迎されたら嘘もつけないので、東京からと答えました。

 

カフェの女主人は金浦の人ではないけれど、秋田出身で東京に行き、秋田に戻ったそうです。金浦駅の図書館に毎日通っているうちに「図書館の帰り道にコーヒーを飲める場所があるといいのに」と言っていたら、地元の人たちから「それならここで」「開店はこの時に」と、あれよあれよという間に開店の運びになったそうです。

 

自分好みのカフェを開きたいというのは、多くの女性の夢ですが、そんなにスムーズに実現できる場所があるとは! 開店のストーリーを聞いているだけでうっとりしてきました。そして、秋田から金浦までの路線から眺める海辺の夕日は、涙が出るほど美しいし、秋田の温泉と地酒を巡る旅はなかなか終わらないこと。

 

お昼時に近くなったので、ランチタイムのお客さんのために店を出ました。金浦駅にはおにぎりと麺類の店があり、やさしいお母さんのような女性が接客と調理を担当しています。鉄道に乗らない人も昼食のためだけに来店する人気店です。

そして、食後は階段を上って図書館へ。電車を待つための時間つぶしですが、司書の方もとても感じがよくて、本に囲まれた心地良い時間を過ごせました。

 

秋田への旅を終えて自宅に戻り、なんてすばらしい体験ができたのだろうとしみじみ思っています。海沿いのあの街のカフェでは今日もランチとコーヒーが用意され、駅ではおいしいご飯のおにぎりが作られて、読まれるべき本が図書館に並んでいる…そんな街が日本にあると知っただけで幸せな気持ちになります。

精神の自由のためのルーティン

「仏教の修行を体験してみたい」という外国人が数日間、日本のお寺に滞在。

「早朝の読経から始まり、寝るまでスケジュールがぎっしり組まれて、精神の自由を得るどころではなかった」という感想を抱いたところ、「次に何をやるか考えなくてすむところに、精神の自由がある」と返されたという話があります。

 

本業が徐々に暇になってきて、自由時間をたっぷり持っている私には耳の痛い話です。休む間もなく働いていた頃は、アガサ・クリスティ自伝のこの一節にあこがれたものです。

朝、目を覚ます、はっきり目がさめる前にもう心の中でこういってる。

「さて、今日はどういうふうにするかな?」

選択の自由がある。目の前にある一日を思うように計画することができる。

私は、しなければならないこと(これを私たちは義務といっている)がたくさんないとはいわない。もちろんある。家の中にもなすべき仕事がある。写真入れの銀の額縁を磨く日、ストッキングを繕う日、「歴史上の大事件」を勉強する日、町へ出て小売り商の勘定をみんな支払う日。手紙や覚え書きを書くこと、体重を測ったり、運動すること。そして刺しゅう―でもこれはみんな私の考え通りに手はずをきめ、私の選択に任されていることである。

私は自分の一日を計画して、こういえる。

「今日の午後までストッキングはそのままにしておいて、今日は下町へ出かけ、別の道を通って帰る途中、あの木が花を咲かせているかどうか見てみましょう」

クリスティが作家になる前の若い日々です。なるほど、こういう豊かな感性で日常生活を送っていたから、平凡な生活を舞台にしたミス・マープルのミステリーのネタも尽きなかったのでしょう。

 

ようやく私も優雅な生活を送れるようになったはずでしたが、現実はネットやゲームを際限なく続けて一日が終わることも。これではいけない、仏教に学ぼうと手に取ったのが『モンク思考 自分に集中する技術』です。

著者はインド系イギリス人二世。両親から俗世での成功を期待されビジネススクールに入ったものの、出家の道を選びます。たまたまインド人僧侶の講演を聞いたのがきっかけです。その僧侶はインド工科大学ボンベイ校卒。アメリカのMITに並ぶエリート輩出の名門校です。成功が約束された輝かしいキャリアを投げ打つ魅力があるのかを知ろうとして、気が付いたらミイラ取りがミイラに。自らも出家してインドのアシュラムで修行しました。

 

結局、僧院の中にこもるより社会に出て仏教を広く伝えるほうが向いているタイプだとわかり、俗世に戻り学校を卒業。就職先はアクセンチュアですから、もともと優秀な人なんでしょう。アクセンチュアでも瞑想を社内に広める活動をして、現在は執筆や講演、ポッドキャストに専念しています。

 

この本で説かれているのも、俗世においても生活はシンプルに選択肢を少なくすることです。朝のルーティンを決めて、日課をこなす。洋服の数を決めて、何を着るか迷わない(僧侶は僧衣2枚しか持たない。1枚は洗い替え)。

所有から自由になるために、住まいを仮の宿と考えればいいと書いてあります。たとえ住宅ローンを払い終わっても、あの世まで持っていけません。エアビーアンドビーで借りているようなもの。期限がくればチェックアウトするのだから、執着する必要はない。そして、肉体も頭脳もこの世を生きていくための仮の姿です。

 

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また海外旅行に行けるようになったら、タイの僧院に滞在してみたいのですが、バンコクで参加した瞑想教室では「あなたは、バンコクにもいるし、東京にもいる。世界中どこにでもいる。わかるかね?」と師に諭されました。わざわざお寺にいかなくても、今、生活している家を修行の場とできればいいのですが。

 

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那覇ポンコツ旅行

家で晩酌し、酔っ払った勢いでJALの「どこかにマイル」。夫が「札幌、大分、鹿児島、那覇」という組み合わせを出したので、その場のノリで申込みました。夫の休暇に合わせた一泊二日の弾丸旅行です。

往復交通費がかかるのは羽田までなので、我が家にとっては箱根や伊豆の温泉に行くより敷居が低いのです。札幌なら丸駒、大分は別府、鹿児島なら霧島と比較的空港から近い温泉での一泊を想定していました。

当たったのは那覇。飛行距離は長いものの、那覇空港は「ゆいレール」が直結しているので街へのアクセスは抜群です。

宿泊先は、先月、夫が一人で泊まってとてもよかったという「HOTEL SANSUI NAHA 波の上温泉」。オープンしたばかりでとてもきれいで、サウナ水風呂完備。周辺が風俗街という微妙な立地ですが、波の上宮の近くです。南国の人はあまりサウナが好きではないのか、サウナは常に私だけの貸し切り状態でした。

 

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チェックインして温泉とサウナを堪能したら、大好きな居酒屋へ。

 

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店名「むるぶし」は、群星という意味。「はいむるぶし」は南十字星です。

国際通りから少し離れているので、観光客よりご常連の多い店です。女将さんがお菓子好きで会計時に沖縄のお菓子をもらうようになりました。お返しとして東京のお菓子を持っていくようになり、いまや物々交換のようになっています。

 

オリオンビールの生と泡盛ですっかりいい気分になり、ゆいレールに乗ってホテルへ。降車時にバッグから切符を取り出した際、ホテルのカードキーも一緒に出てしまったようです。私は気が付かなかったのですが、近くにいた人が「落ちましたよ」と声をかけてくれたので、拾うことができました。改札を出たところで、「本当に助かりました」と重ねてお礼を伝えました。

 

そんなことがあったのにも関わらず、ホテルに着いたらまたカードキーがありません。夫の鍵があるから部屋に戻れたものの、カードキーがなければエレベーターにも乗れません。部屋でバッグをひっくり返して探したものの見つかりません。まったく、どこまで間抜けなのか。調子に乗って飲むからだと自己嫌悪。フロントで2000円払って再発行してもらいました。

 

しばらくしてフロントから「カードキーが見つかったので、2000円をお返しします」と電話。帰る途中で立ち寄ったスーパーから電話があり、ホテルのスタッフが取りに行ってくださったそうです。

 

スーパーで落としたのは、この写真を撮るためにスマホを取り出した時だと思います。

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沖縄のお墓参りといえば「清明祭(シーミー)」。四月の節入である清明から2~3週間ほど週末を中心に縁者が集まり、お墓の前で重箱を広げます。中国から伝わった風習で、春分の半月後、万物が清々しく明るい時期に死者への思いを新たにするそうです。ローソクやお線香の隣の棚には、ピクニック用品のような容器も並んでいました。

同じ日本とはいえ、沖縄の文化は独特。街には「沖縄復帰50年」の垂れ幕もありました。私が小学生の頃、沖縄はアメリカの統治下にありました。クラスの誰かが沖縄に行った時、先生が「沖縄は普通ならとても行けない珍しいところです」と説明したのを覚えています。お金も円ではなくドルだったと聞き、私もいつか行けるだろうかと子供心に考えたのをよく覚えています。

ウクライナ侵略がらみで「日本を占領したのがソ連ではなくアメリカでよかった。アメリカは領土的野心がないから、沖縄も返してくれた」という書き込みがありました。たしかに。ソ連の占領下に入ったら、今頃私たちはロシア語を話していたのかもしれません。そして那覇は、ホテルのルームキーを二度落としても、二度とも返って来るというやさしい街にはなっていなかったでしょう。

 

書かないと、なかったことになってしまう

ライターの仕事を30年以上続けてきて、私にとって書くことは原稿料を稼ぐためのものでした。活字媒体の減少から締切に追われることも少なくなるとともに、そろそろリタイアの年齢を迎えています。

 

「年を取ると、どんなことも忘れる一方。書いておかないと、なかったことになってしまう」

ネットで目にしてどきりとした言葉です。私から書くことを取ったら何も残りません。このブログを始めるきっかけは、横浜中華街での占いの店に座るようになったことです。どんな占い師なのか知りたい人もいるだろうと思って書き始めました。中華街の店は2年で卒業しましたが、原稿料をもらって書くのと違い、好きなように書けるのが楽しくて続けています。体験や思考の記録となっており、一時期フィンランドにハマったり、カウチサーフィンや日本語教師を始めた動機も書きとめています。今の私には、もうあんな無鉄砲なことを始めるエネルギーがありません。

 

2019年8月にウラナイ8が誕生し、7人のメンバーで曜日ごとにデイリーメッセージを掲載しています。こちらは穴を空けるわけにはいきませんから、ブログの更新より優先しています。

uranai8.jp

「開運虎の穴」というタイトルにしているので、運の悪いことは書けません。

占いのライターとなった時に編集者に言われた言葉を思い出しました。

「太ったダイエットライター、肌荒れの美容ライター、金欠のマネーライターには原稿を発注しない。占い原稿は、運がいいライターに頼みたい」

コロナにウクライナと世界は不安定な情勢が続いていますが、なんとか自分の運気を保っているのは、開運について書き続けているからでしょう。

 

ネットのおかげで、昔ならチラシの裏に書き留めていたようなことを世界に向けて発信できるようになりました。何のために書くかは人それぞれですが、私は自分のために書いています。そしてウラナイ8のイベントで「ブログ、いつも読んでいます」と声をかけてもらうこともあり、読者がいることにびっくりしありがたく思います。

 

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旅先の思い出の写真を貼れるのもブログのいいところ。「スターウォーズ エピソード2」のロケが行われたセビリアのスペイン広場です。1929年の博覧会の会場として造られたものですが、後世に残り観光スポットとなる箱物なら税金を投入する価値があります。

スター・ウォーズ」の名言の一つ。

Luke, you're going to find that many of the truths we cling to depend greaty on our own point of view.

ルーク、我々が固守する真実のほとんどは、見方によって変化することに気づくであろう。

同じ旅をしても、書き残すかどうかで記憶が変わってきます。どんなに心動かされても、言葉にしなければ整理されていない漠然とした思いのままで、やがて忘れ去られます。

 

コロナ以前、自由に旅していたのが遠い昔のように感じます。最後に行った海外旅行がスペイン。セルビアのスペイン広場、カルメンの舞台となったタバコ工場、歴史的なバル、そして街の片隅にあったコインランドリーも思い出の場所。こうして書いておいたからこそ、リアルに思い出せます。

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