翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

老いの階段を一気に降りる

筋トレしながらずっと働き続ける高齢女性の記事を紹介しましたが、すべての人があんなことができるわけではありません。老化現象は右肩下がりのなめらかな線ではなく、階段状にがくっと下がると聞いたことがあります。

 

これまであまり意識しなかったのは、根が丈夫なのと、毎日のようにスポーツクラブに通っていたからです。

大学がずっと休校でオンライン授業ばかりという学生はとても気の毒ですが、それぞれの立場でコロナの影響を受けています。私の場合はスポーツクラブが2か月休みになり、6月から再開後は60分のズンバのレッスンが30分に縮小されたこと。感染予防のためとはいえ、20年以上続けてきた定期的な運動習慣が失われることは大きな痛手です。

 

嘆いていてもしかたがないので、水泳を再開することにしました。プールは時間制限なく自由に泳ぐことができるからです。

水泳を中断したのは、ヘアマニキュアを始めた10年前のこと。プールの塩素でせっかくのマニキュアがはがれるような気がして、スタジオレッスンだけにしてプールに足が向かなくなりました。

しかし、水泳は年を取ってもずっとできる運動です。この機会に再開するのもいいでしょう。

一度泳ぎを覚えたら忘れることはないだろうと思ったのですが、やっぱり20年のブランクは大きかった。肺活量が落ちたのか、クロールの息継ぎの感覚が短くなる。平泳ぎのスタートやターン時の蹴伸びは得意だったのに、距離が伸びない。レーンの右側通行で背泳ぎをしていたはずが、左側に寄っていた…。もう全然だめ。

 

こうやって、過去に当たり前にできていたことが徐々にできなくなっていき、人は老いを受け入れていくのでしょう。『Forever Young いつまでも若く』というボブ・ディランの曲がありますが、それはあくまでも精神であって、肉体の老いを回避することは誰もできません。

 

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老いを迎え撃つなんて、ドン・キホーテのような無謀な試み。

ずっと働き続ける人生

調理補助のパートで働いている79歳の女性の記事を興味深く読みました。

president.jp

 

配膳と片付けは体力勝負。20代の栄養士とペアを組んで厨房を走り回るため、週6回、カーブスに通っているそうです。まるで日本のルース・ベイダー・ギンズバーグ

「あなたにとって仕事とは?」という記者の問いに対する答え。

仕事は、自分を人間的に成長させてくれるものですね。感情的にならずに、人の話しも聞いてあげて、いつもスムーズに仕事を進められるようになって……。

79歳にして成長という言葉を口にできるとは!

記事によると、夫婦ともに勤勉に働いてきて、老後の収支にはゆとりがあるようす。働き続けるのは収入より生きがいのため。こんな人は、家でごろごろするだけの毎日ではかえって元気がなくなるでしょう。

 

私にとっても何歳まで働くかは大きなテーマです。

連載中の週刊誌と月刊誌、季節ものの原稿はずっと続けていますが、出版業界の現状からするといつ休載になってもおかしくありません。ネットの原稿は紙媒体でずっと書いてきた身にはきつい。そもそも雑誌のライターは40歳定年という説があり、たまたま私は東洋占術という専門があったので今まで続けてこられただけです。

 

超高齢化が進み、70代、へたしたら80代にも働いてもらわないと社会が成り立たないと聞き、日本語教師の資格を取りました。公的な資格ですし、非常勤なら何歳でも働けるし、外国人にボランティアで教えるのもいいかと思ったからです。

資格を取っただけではだめで、実地経験が必要というので3年間、週3回教壇に立ちました。あまりの厳しさに3年で卒業しましたが、続けていたとしても今年の春にコロナで仕事はなくなっていたでしょう。

 

これからの長い老後を何もせずに過ごすのでは退屈で死んでしまいそう。成長までは望まないにしても、社会とつながるためにも何か仕事を探すことにします。できれば、社会が求めるものと私ができることがパズルのピースのようにぴったり合えばいいのですが。

 

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スペイン・セビリア駅前のバール、カルロス・アルベルト。

地元の人向けの肩ひじ張らないお店。働いている人もお客さんも高齢者の割合が高く、のんびりムード。旅行者の口コミを読むと、「料理が出て来るのが遅い」「注文を間違えられた」とさんざんですが、私にとっては最高に居心地がよく興味深い場所でした。カウンターに座ってビールを飲みながら、ベテランの店員と常連さんたちのやりとりを見ているだけで楽しい時間を過ごせました。地域の高齢者センター的な役割も果たしているのでしょう。

日本より早く没落し、経済もぱっとしないスペインですが、若者は高齢者に優しく接していました。この春、コロナで大きなダメージを受け、再び患者が急増しているスペイン。あの優しい社会は失われてしまうのでしょうか。

 

5秒ルールと2分ルール

日本語教師を辞して以来、のんびり過ごす毎日。今年はコロナの自粛期間もあり、家でだらだらすることが多くなりました。あまりに楽過ぎて、このまま一生が終わってしまいそう。そんなだらけた自分に活を入れるために、メル・ロビンズが提唱する「5秒ルール」を意識しています。

 


自分を変えるのに必要な時間 || メル・ロビンズ

この動画だけ見ると、メル・ロビンズはいかにも成功者風に見えますが、この本を読んで親近感を持ちました。

 

仕事が行き詰まり、夫の事業もうまくいかなって、アルコールに逃げる日々。朝起きられなくなり、学校に行く子供を見送ることもなくなりました。自分は何てだめな人間なんだろうと自己嫌悪からまた酒に手が伸びて、悪循環に。このままではいけないとわかっているけれど、変わるきっかけがつかめない。

そんなある日、テレビCMでロケット発射前の5秒間のカウントダウンのシーンを目にします。

「5、4、3、2、1、GO!」

これだとひらめき、朝6時に目覚まし時計が鳴ったら、スヌーズボタンを押さずに5秒数えて起き上がったのです。そこから人生が好転していきました。

 

何かを始めるのに、やる気が出るのを待ってはいけない。やる気になんて絶対にならないから。人間の脳は現状維持を好むので、最初の一歩を踏み出すのがむずかしいのです。5秒をカウントしているうちに言い訳するのを忘れて心が新しい方向に向きます。

 

私はスポーツクラブをさぼらないために、似たようなことをしているので5秒ルールが効果的なのはすぐにわからりました。

ウエア類はあらかじめ用意しておき、出発する時間にボブ・ディランの『ライク・ア・ローリング・ストーン』が鳴るようにタイマーをセット。アル・クーパーのオルガンのイントロが鳴り響くと、「今日は疲れているし」「雨が降っているし」という言い訳が頭に浮かぶ前にバッグをつかんで外に出るようにしています。

 

そして5秒の次の単位が2分。

終盤に近付く人生の総まとめをするために始めたデビッド・アレンのGTD(Getting Things Done)の手法の一つです。

 

頭に中にある気になることすべてを把握し、次にとるべき行動をリスト化していきます。もしその行動が2分以内にできることなら、その場でやってしまいます。優先順位が高くなくても、いつか行動するつもりなら、その場で片付けてしまったほうが効率的だとデビッド・アレンは説いています。2分でできることをわざわざリスト化する必要はありません。

 

仕事なら締め切りになんとか間に合わせてきましたが、家の整理や終活はいつかやらなければと考えつつ年月だけが過ぎてきました。

5秒ルールと2分ルールを実行する気力もないぐだぐだな日もありますが、なんとか一生が終わるまでに帳尻を合わせたいものです。 

 

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マイル錬金術とGoToの教訓

登別温泉に行ったのは、JALの「どこかにマイル」で行先が札幌になったから。1泊旅行なので朝一に出発し、翌日は一番遅い時間帯で申込みました。帰りは空席があれば早い便に振り替えることもできます。

 

羽田発6時25分の便となり、始発電車で羽田へ。

搭乗口に向かうと「満席で席が足りないので8時の便に変更してくださる方を募集」というアナウンスが。GO TOキャンペーンが東京でも始まったからでしょうか。こんな早朝から札幌に行く人がいるとはびっくりです。

新千歳空港から登別温泉のバスが減便となり、3時間ほど新千歳で時間をつぶす予定だったので、席を譲ることにしました。羽田だったらJALのラウンジが使えるし。

 

JALの職員にたいそう感謝され、協力金かマイルのどちらにするか聞かれました。うわさに聞いた「フレックストラベラー」制度というものです。マイルはけっこう溜まっているので協力金を選びました。

1万円札が入った封筒を渡されました。しかし、もともとの航空券は「どこかにマイル」ですからお金を払って購入したものではありません。これぞマイル錬金術

新幹線だったら、普通席に立って乗ることもできますが、飛行機の座席は増やせません。朝一の便、そして最終便で起こるようで、翌日以降の便に振り替えた場合、協力金は2万円となります。

 

1万円もらえてラッキーといえばラッキーですが、不要不急の旅なんだから、必要とする人には喜んで席を譲り、感謝されるほうが気持ちがいいと思ってしまいました。

 

日本では1960年代まで、献血するとお金がもらえました。現在は飲み物や記念品がもらえますが、基本的に無償で献血することになっています。お金がからむと貧しい人が偽名を使って頻繁に献血して血液の質が悪化するなどの弊害が出ます。そしてマイケル・サンデルの『それをお金で買いますかー市場主義の限界』では、売血を認めると、人々は血液を商品とみなし献血をしようとする道徳的な責任を感じにくくなるという説が紹介されています。

 

とはいえ、飛行機の座席の売買は時間勝負ですから、悠長なことを言っていられません。私が席を譲って別の便に振り替えられたのは当初乗る予定だった飛行機のドアが閉まる15分ほど前でした。お金は明確に感謝を示す指標になります。

 

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登別前にそびえるデンマーク風のお城。中は水族館になっているそうです。

今回の旅では第一滝本館という登別を代表する宿に泊まりました。GO TOキャンペーンの恩恵で宿泊料金は35%引き、クーポンの15%は夕食時の飲み物とお土産に使いました。

ここのお風呂はすばらしかったので、GO TOでなくても泊まったと思います。秋の御膳のメニューを見たら、鮭、カニ、ホタテ、金目鯛と北海道のおいしそうなものがずらりと並び、つい夕朝食付きプランを選びました。

この夏ネットで炎上した「廃棄前提おじさん」。GO TOで行き慣れない旅館に行き、食事が多すぎて食べきれず「廃棄前提」とツイートした男性です。彼のことを批判できません。私も同じで、食べ過ぎて胃が苦しくなってしまい、夕食後はお風呂に行けなくなりました。

いつもは朝食のみのプランにして、地元の居酒屋で食べる量だけ注文するのに、GO TOだからと夕食を付けて食べきれないとは、なんと浅はかなことか。いくら安くなっても、自分に合わないものは選ぶべきではないという教訓を肝に銘じました。

 

登別で天国から地獄を臨む

雪が降る前の北海道を堪能したくて、 JALの「どこかにマイル」を札幌、旭川、釧路、女満別の北海道揃いにしてみました。

 

当たったのは札幌で、登別温泉に一泊旅行。

宿は第一滝本館。決め手はサウナと水風呂。10月から東京都民もGO TOトラベルが使えるようになったので大助かりです。

 

第一滝本館の温泉は圧巻でした。

硫黄泉、芒硝泉、酸性緑ばん泉、食塩泉、重曹泉の5つの泉質がさまざまな浴槽に注がれ、その名も温泉天国。サウナと水風呂、休息を挟みながら次々と浴槽をはしごしていると、あっという間に3時間近くが過ぎていました。

露天風呂脇の外気浴もよかったし、内風呂には地獄谷を見下ろせるスペースにも椅子があります。温泉天国から蜘蛛の糸を垂らしたい気分に。

 

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ホテルの窓からの風景。観光バスが泊っている先が地獄谷で、右手前が第一滝本館の温泉。

 

夕方まで入浴し、夕食後もまた温泉に行くつもりだったのが、布団から出られなくなりました。「この感覚はどこかで…」と思い出したのが山梨の増富ラジウム温泉。あそこでも入浴から部屋に帰るたび、布団に横になりました。心地よい疲れから、すとんと眠りに入る感覚。宿の女将さんから「いくら健康にいいからといって、入り過ぎないように」と言われたものです。

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露天風呂の一つ、金蔵の湯は初代の滝本金蔵が浸かった湯船を再現したもの。

江戸から北海道に移住した大工職人の滝本金蔵は、妻の佐多の皮膚病を治すために登別温泉に小屋を立てて湯治を始めたのが第一滝本館の始まりです。

 

西の別府、北の登別。別府観光の父、油屋熊八が別府に来たのも妻のためでした。 

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体調を崩したら、病院よりまず湯治。温泉のある国に生まれた幸運をしみじみと味わった旅でした。