翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

気になるドラマ『アンという名の少女』

ネットフリックスで『アンという名の少女』を観ています。NHKでの放映も始まりました。

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アンを演じる女の子が原作のイメージ通り。ただし、エピソードがかなり追加され、往年の『赤毛のアン』ファンは意見が分かれているようです。

 

新完訳本の詳しい訳注により、文化的な背景がよくわかりました。

 

「農場を手伝う男の子を養子にしたかったのに、手違いで女の子が来た」という設定。

「手伝いに来ている男の子を養子にすれば手っ取り早いのに」とずっと思っていました。しかし、使用人はフランス系で二級市民扱い。カスバート家はスコットランド系で、養子にするなら同じルーツを持つ子供を望んだのでしょう。

しかし、見ず知らずの孤児を家に入れるのはリスクもあります。リンド夫人が脅すような「家に火をつける」「井戸に毒を入れる」ほど猟奇的なことはないにせよ、アンの姿が見えなくなると、マリラがすかさず銀食器がなくなっていないか確認していたシーンが心に残りました。

 

そして、アンが学校で孤立していくのを見るのもきつかった。

原作ではすんなり受け入れられていたのに、『アンという名の少女』では「孤児」と連発されます。

そして、女子教育の必要性を語る進歩的な奥様が、「アンはうちの子に悪影響を及ぼすから学校へ来させず、自宅学習せよ」とマリラに詰め寄ります。

 

時代は1900年初頭だし、島という閉鎖社会。よそ者に対する冷たさは容易に想像できます。

共同体には共同体のよさがあり、ギリス家が家事になれば村中が総出で消火に当たり、焼け出された一家も分散して村の家にお世話になります。家の修復も村人たちが協力します。カナダも日本も、一昔前は共同体は強い絆で結ばれ助け合って生きてきたのでしょう。

アンが共同体に受け入れられたのは、孤児院で得た消火知識が役だったこと。そして原作にもあるダイアナの妹の急病を子守の経験で救ったこと。

 

よそ者が入らなければ、村に新しい風はもたらされないのです。今の日本はどうでしょうか。コロナでリモートワークが脚光を浴び、地方への移住も話題になっていますが、そうすんなりとはいかないのでは。

 

さまざまな改変があっても、根底にあるテーマは不変です。

アンを孤児院に戻そうとするマリラに、マシューはなんとかアンを置いておけないかと言い出します。
「あの子が私たちに、何をしてくれるというの?(What good would she be to us?)」という辛辣なマリラ。

マシュウの答えが胸を打ちます。
「私たちが、あの子に何かしてあげられるかも(We might be some good for her.)」 

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孤児のアンに愛情を注ぐことにより、マシューとマリラは孤独で味気ない日々を脱し、生きる喜びを得ることができたのです。

その象徴が3人で海辺に出かけるシーン。プリンス・エドワード島の自然に心奪われたアンはマシューとマリラにそのすばらしさを常に語ります。彼らにとっては見慣れた地であり、わざわざ海辺まで出かけることもなかったのに、アンがいることで新たな目で日常を見直したのです。

 

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帯広・真鍋庭園にある洋館。カナダに行けなくても、北海道でプリンスエドワード島へと想像を広げることができます。

主(ぬし)になんか、なるもんか

女性用サウナを語る時、必ず出てくるキーワードが「主(ぬし)」。

古参の常連客で、我が物顔でサウナを支配します。サウナマットや持参のタオルで自分の場所を確保し、水風呂や外気浴でサウナを離れていても誰かに取られないようにキープ。サウナの温度を自分好みにするために、ドアに何かを挟んで温度が上がらないようにしたり、見慣れない顔があると値踏みするようにじろじろ見ます。

 

サウナ愛好者はホームサウナという本拠地を持っている人が多いのですが、私にはありません。毎日のように通っているスポーツクラブには立派なサウナがあるのですが、水風呂がないのが致命的。それに加えて、何人かの主がいるのです。

コロナ対策のため、会話禁止というサウナもあるというのに、主たちのおしゃべりは止まず、サウナマットで場所キープは当たり前。温度を下げるためにドアを激しく開閉する主もいて、蝶番が壊れるんじゃないかとはらはらしました。

 

男性用のサウナで「主」はあまり話題になっていないのは、女性特有の現象だから? 男女平等が進んでいるとはいえ、男性はどんどん外に出て活躍する傾向があるのに対し、女性は内を守るのが本能だからなのかもしれません。

 

ホームサウナを持たず、あちこちを転々としている私は、主になりようがありません。そして行く先々で先輩の女性たちから貴重なアドバイスをもらっています。「水風呂は首までつかるべし、リンパの元を温めて冷やすことで健康になる。私はすべての病気をサウナと水風呂で治してきた」ときっぱり言い切ったのは函館の常連さん。外気浴の重要性に気付いたのは地元の銭湯で「差し出がましいようですが、水風呂のあとすぐに温めず、体の中からじわじわ熱が出るのを待った方がいいですよ」とアドバイスしてもらったおかげです。

 

ホームサウナはなくても、これから水風呂を極めて年齢を重ねるうちに、主の貫禄が出てくるかもしれませんが、主にはなりたくありません。誰でも平等に楽しめるのがサウナの世界。たしかに、汗を流さず水風呂に入ったり、体を拭かずびしょびしょな状態でサウナに入るようなマナー違反もありますが、声高に注意するようなことはしたくありません。

 

サウナを愛好する女性が増えているとはいえ、男性に比べるとまだまだマイナーです。今後、女性サウナ―が増えてマナーが周知されれば、主も消えていくと期待しています。

 

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函館市熱帯植物園。温泉を楽しむ猿の世界にも主がいるのでしょうか。

伊豆「やすらぎの里」の飢えの記憶

海外旅行は無理でも、感染対策に気を付けた個人の国内旅行なら許される雰囲気になってきたように感じます。

秋の到来で温泉も気持ちいいだろうし、水風呂とサウナのある温泉の情報を集めるようになりました。

 

東京から近い熱海や伊豆もいいということで思い出したのが「やすらぎの里」。

 

y-sato.com

ここには二度、滞在したことがあります。

最初は10年以上も前、高原館の週末2泊3日。断食ということで不安もあり、親友を誘って二人で行きました。

なんとか無事にを終了したので、2011年の春に本館で1週間の断食コースを一人で予約しました。3月に東日本大震災が起こり、こんな時期に不謹慎かと思いましたが、決行しました。

 

その後は荻窪の友永ヨーガ学院の通い断食を二回。特別な施設ではなく、日常生活を送りながら、断食ができるかどうか自分を試してみたかったのです。 

 

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ここまでやると自分のパターンがわかってきました。

生活が乱れ、体が重くなり、アルコールも飲みすぎる。これではだめだと一念発起して断食プログラムに申込む。あまりのつらさに、断食を始めたことを激しく後悔。しかし、小心者で見栄っ張りなので途中でやめることができない。終わってみれば、ぐっと体が軽くなり断食をやってよかったと思い、食生活も気を付ける。

そのまま持続できればいいのですが、日がたつにつれて元の木阿弥に。そしてまた同じパターンを繰り返してきました。

 

久しぶりに「やすらぎの里」のサイトを見てみると、本館、高原館に加えて養生館と3施設に増えていました。リピーターが多いし、断食はつらくても、雰囲気はとてもよく気持ちのスタッフばかりですから、発展しているのでしょう。

本館として新しい施設ができ、それまでの本館が養生館となったようです。そして養生館には、屋上にサウナと水風呂が設置されているではないですか! ここの屋上の露天風呂はとても気持ちよかったのをおぼえています。

行きたいけれど、断食しながらサウナと水風呂は危険だし、外気浴でととのうこともむずかしいでしょう。断食中は「おなかが空いた」以外には考えられないのですから。思い悩んでいる人には断食は効果的ですが、交互浴には不向きです。

 

しかし「やすらぎの里」には、断食コースに加えて、食事が出るコースもあります。10時の朝食と6時の夕食の1日2食。メニュはご飯、漬物、野菜と魚か豆で1食500キロカロリー。ここの食事はとても丁寧に作られています。

 

だったら食事付きで1週間、行ってみようと思い立ち、すぐに予約しました。お値段は温泉旅館並みで「ご馳走もでないのにどうしてそんなに高いの?」とよく言われますが、それ以上の価値があります。

予約後、「10月1日からGo Toキャンペーンの対象になった」とメールが来ました。通常の旅行ではないので考えさえもしていなかったのですが、なんとラッキーなことでしょう。

 

「やすらぎの里」はおひとり様も多く、わざわざ伊豆まで断食に来るようなタイプですから、すぐに打ち解けて楽しく交流できます。本もドラマも食べ物のシーンがあると集中できず、断食仲間との会話で時間をやり過ごすことが多かったからです。

しかし、食事ありのコースを選んだ今回は、断食中の人には近づかないほうがいいでしょう。

 

というのも前回の断食コースの強烈な思い出があるからです。

「やすらぎの里」の食事会場は、断食コースと食事ありコースで席を分け、衝立で視界をさえぎっています。味噌汁1杯、スムージー1杯のみという人の隣に、低カロリーとはいえ食事を摂る人がいては目の毒だからです。

 

ところが前回、食事コースの方が、自分のお盆を持って私の隣に移動してきたことがあったのです。温泉かどこかで話をしてその続きがしたかったのでしょう。私は回復食の途中で薄いおかゆと味噌汁が出ました。少し食事らしくなったので、とてもうれしかったのですが、となりで普通食を食べられたらたまりません。断食でここまで意地汚い人間になるのかと愕然としました。

 

プリモ・レーヴィの『これが人間か』の一節を思い出しました。断食中に食欲をなくすために読む本です。

強制収容所に入れられたレーヴィはトリノ大学を最優等で卒業した化学者だったので、

研究所に選抜されます。過酷な肉体労働から解放され、暖かな屋内にいて、だれからもなぐられることもない天国のような状況だとレーヴィは書いています。しかし、寝泊りしているは収容所ですから、飢えは続いています。

研究所にはアシスタント作業を担当するドイツ人とポーランド人女性も働いていました。清潔で美しい服を着た優雅で上品な女性たち。彼女たちは収容所から派遣されたレーヴィの目の前でジャム付きのパンを食べます。飢えた者にとって、どれほど苦痛で残酷な光景であるかなど想像せずに。

 

たかだか数日の断食で、強制収容所まで思いを馳せるなんて大げさですが、食は人間の根源的な行為です。できればまた断食に挑戦したいのですが、いつになるかわかりません。

 

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宮城県秋保温泉「佐勘」の朝食。海老とアボカドサンドに野菜中心の品を選んだはずが、おかわり自由のビールサーバーが! 朝から一杯、ひっかけました。

「やすらぎの里」の最終日、参加者の一人が「家に帰ったらまた食生活が乱れてしまいそうです」と心配していたら、大沢代表が「その時はまたここに来たらいいじゃないですか」と大らかに答えていました。

暴飲暴食と節食を行ったり来たりしながら、ちょうどいい地点を見つけたいものです。

GTDで人生の棚卸し

「異常も日々続けば日常となる」という言葉がありますが、外出時は必ずマスクという習慣もすっかり身につきました。

緊急事態宣言の頃は、朝からドラマを見ても罪悪感はなく、お上の言う通りに家に閉じこもる模範的な国民になった気がしたものですが、社会は動き出しています。本業のライター業は先細りながらも続けていますが、編集者にも会わず、メールでやりとりして完了です。

 

仕事以外にやることはたくさんあるはずなのに、明確な締め切りがないとつい先延ばしに。これではいけないと、この本を読み始めました。

 

 

『意志力の科学』という本で知り、ずっと読みたいと思っていました。

 

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GTDとはGetting Things Doneの略。

生産性向上コンサルタントのデビッド・アレンが提唱する方法です。アレンは空手を学んでいたことから、武道で言う「水のような心」、すべてのことをコントロールできている状態をキーワードにしています。

 

思えば時間に追われていた時は、心が乱れる隙もありませんでした。特に日本語教師時代は、月火水の授業を成立させるだけで1週間が過ぎていき、気が付いたら3年間が過ぎていました。授業が終われば学生の作文を回収して添削、次の課題を作りつつ、本業のライターでも締め切りは待ってくれませんから、完全な休日はほとんどありませんでした。外資系の学校だったのでお正月もお盆も授業があったし、息抜きの短い旅にも仕事をどっさり持参していました。へとへとになっていましたが、余計なことは何も考えなくて済みました。

 

それが一転して、ひたすら怠惰な日々。 時間ができたらあれもやりたい、これもやりたいと思っていたはずなのに、気がつけば時間だけが流れて、頭の中はぐちゃぐちゃです。

 

GTDの基本はすべてをリスト化してファイルを作り、頭の外に追い出すこと。

デビッド・アレンによると、脳の短期記憶はコンピュータのメモリのようなもので、ほとんどの人はメモリ以上の「気になること」を抱えています。 容量ぎりぎりのパソコンで作業をしているようなもので、脳に負荷がかかって集中できず、常に気が散ってしまうのです。

 

ステップは5つ。

1 気になるすべてのことを「把握する」。

2 それぞれが何を意味するか、どのような対応をすべきかを「見極める」。

3 2のステップによって明らかになった内容を「整理する」。

4 行動の選択肢を「更新する」。

5 何をするべきかを「選択する」。

 

大企業のCEOじゃあるまいし、こんなステップをいちいち踏んでいられないと思いましたが、 挙げられている例は「オゾン層を守るために何かできないか」から「キャットフードが切れそうだ」まであります。クリスマスカードプレゼント、や年賀状も直前になってあわてて用意するよりゆとりを持って準備すると、気の利いたメッセージも浮かびます。

 

親の家の片付けをずっと先延ばししていたのは、大量の母の服、父の仕事の資料、納戸に押し込められた贈答品を思い出すたびに気持ちが重くなって心の中から追い出していました。「実家の片付け」というファイルを作って何をリストに入れるかを検討。一人でゴミを捨てるのは到底無理だから、業者に依頼することにしました。ネットで検索して実家から近くサイトがちゃんとしている業者を選び、問い合わせフォームを送りました。折り返し連絡があり、次の帰省に合わせて見積もりにきてもらうことに。母が亡くなって1年半以上過ぎて、やっと動き出しました。ぐずぐずしたのは恥ずかしいけれど、何もしないで悶々としていたのよりはずっといい。これが脳のメモリを回復させるということでしょうか。

 

そして「訪ねたい場所」「始めたい趣味」「読みたい本」「観たい映画」など楽しいこともリストにあります。訪ねたい場所にメキシコというファイルを作り、ラテン文学をどういう順番で読んでいこうかリストを作ります。

 

軌道に乗るまでは時間がかかりそうですが、GTDを自然に使いこなすようになると「クルーズコントロール(自動的に物事がうまくいっている状態)になるそうです。

  

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 GTDの目標「水のような心」が実現出来たら、どんなにすばらしいでしょう。

ルース・ベイダー・ギンズバーグに学ぶ老後の生き方

先週、アメリカ連邦最高裁判事のルース・ベイダー・ギンズバーグ(RBG)が亡くなりました。87歳の大往生ですが、これほど死去が惜しまれた高齢女性はいないでしょう。

長官を含めて9人いる連邦最高裁判所判事は、アメリカという大国の行方を左右する存在。大統領に任命され、任期は終身で人工中絶や同性婚など、アメリカ社会を二分するような問題に最終的な判断を下します。

 

性差別に戦う女性を象徴するRBGですが、男性のためにも戦っています。シングルマザー対象の社会保障をシングルファーザーも受けられるように裁判を起こしたこともあるのです。

 

ドキュメンタリー『RBG 最強の85歳』で印象的だったのは、パーソナルトレーナーについて筋トレを行うシーン。

トランプ大統領が就任し、右傾化するアメリカで彼女は命ある限りアメリカの自由を守ろうとしたのでしょう。そのためには健康を保たなくてはいけません。

ズンバで汗を流して運動している気分になっていますが、筋肉はふにゃふにゃ。筋トレみたいなストイックなことは苦手ですが、長い老後を考えると筋トレも必要です。何しろ日本の女性の四人に一人が70歳以上に。RBGほどのことは到底できませんが、少なくとも人の助けを借りずに自立した生活を送りたいものです。

 

腹筋も腕立て伏せもまともにできないのですが、ネットに流れてきたのがプランクツイスト。1分だけというのがいい。

 


毎日1分!プランクツイストで健康的に痩せよう【脂肪燃焼】【くびれ】〜1 Min Hip Dip Plank

 

RBGの人生を開花したのは夫。『君がアメリカの法曹界の階段を駆け上がっていくのが何よりうれしかった』という台詞は並みの男には言えません。

 

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そして、三児の母だったRBGは料理が下手だったというエピソードも心安らぎます。苦手なことは無理にしなくてもいい。子供たちからの苦情を受けて料理することを控えるようになったそうです。

 

孫娘も法曹の道を選びハーバード大学ロースクールに進みます。同期の卒業生は男女半々。RGBが入学した時は560人のうち女子学生は9人だけでした。

問題だらけの世界でも、着実に進歩しています。

 

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 帯広・真鍋庭園のリスの教会。