あと1ヶ月で冬至です。
易者にとっては、一年で最も重要な日。
陰の中に陽が生じる冬至は、「一陽来復」すなわち地雷復の卦で示されます。陰が五爻並び、一番下に陽が一爻。この陽がどんどん伸びてくるのです。
夏至から冬至までは、陽が少しずつ衰えていくプロセスですが、冬至の瞬間に反転します。
地上での寒さの本番は1月から2月にかけてですが、天の「気」は冬至を境にして、春に向けて変化を始めます。
冬至の陽は生じたばかりですが、強い力を秘めています。冬至の日に、太陽を象徴する柚子をお風呂に浮かべたり、かぼちゃを食べるのは、陽が生じたことを祝うためです。
易者は、冬至に年筮を立てます。
易は奥が深く、何年学んでもこれでいいということはありません。
「出た卦はすべて正しい。当たらなかったのは、易者が解釈を誤ったから」と最初に習った先生に教わりましたが、いい加減な気持ちで筮竹をさばいては、まさに「当たるも八卦、当たらぬも八卦」となってしまいます。
これまで多くの卦を立ててきて、明らかに解釈ミスだったこともあります。
しかし、年筮だけは、一年を振り返ってみて、「まさにそんなふうな年だった」と
納得できるのです。おそらく、「この卦で一年が決まる」という緊張感が、正しい卦をもたらしているのでしょう。
昨年の冬至に出たのは、地火明夷(ちかめいい)の上爻。
思わず頭を抱えました。
地火明夷自体が、太陽が地の下に隠れてしまった暗い卦です。明夷の夷は、中華民族からみて野蛮な民で、正統な支配者がその地位を追われて、外敵に支配されるという意味があります。あるいは、無能なリーダーの下で働く有能な部下という読み方もできます。
しかし、幸いなことに私は社長でもなければ、組織で働いているわけではありません。
易者の世界では、地火明夷には例外的な吉があるといわれています。
それは、水商売。夜の世界で輝くという象意がぴったりですし、ホステスがこの卦を出したらかなりの売れっ子になれます。
卦辞、爻辞をそのまま読むのではなく、誰を占ったかで吉凶が変わってくるのが易のおもしろいところであり、むずかしいところです。
私の仕事である売文業、占い鑑定も水商売のようなものですから、ゲリラ的な動きをするには地火明夷は悪くない感じです。そして、上爻ということは、卦の最終局面だから、しかるべき時間がたてば再び日も昇るだろうと楽観的に考えました。
出版業界の惨状を見れば、まさに地火明夷のようであり、毎月から隔月になり、消滅してしまった連載もあります。
それでも、今年はネットでの占いコンテンツ「輝石推命占」が立ち上がりましたし、開運雑誌からは地道にお仕事をいただけました。
冬至まで1ヶ月。
毎年、冬至までに大掃除が完了するように計画を立てます。
すっきりと片付いた清浄な空間で年筮を立てたいからです。
実際は、やり残しが出て年末を目標にクリアしようとして、さらに立春まで持ち越すものもあります。
日の出前の伊勢神宮。