翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年秋、スペイン巡礼(フランス人の道)。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。おかげさまで重版になりました。

断食で異邦人気分

ヨーガ断食の話の続きです。
おかゆと野菜、豆腐、味噌汁の復食期間も終わりました。

通い断食では、施設での断食と違い、食べ物の誘惑がしょっちゅうありました。

荻窪駅から友永ヨーガ学院へ向かう途中には、ハンバーガー、立ち食い蕎麦、ラーメン、ドーナツ、コーヒーショップ、ファミレスなどの飲食店がずらりと並んでいます。断食中は嗅覚が敏感になるので、ポスターや立て看板のおいしそうな写真だけでなく、臭いにも誘惑されます。

街行く人たちは、食べたいと思ったら、好きなものが食べられるのに対し、減食・断食・復食の約2週間は食が制限される私。隣の駅なのに、とんでもない遠い国を旅しているような気分になりました。

以前、「遠くに旅して珍しい景色を見たり、ご当地グルメを味わうのも楽しいのですが、断食は自分の内側に新しい世界を感じるインナートリップです」と書きました。

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現代の日本に暮らしていると、切実な空腹を感じることはめったにありません。お腹が空いたら、手っ取り早く食べられるものがあふれています。
長い歴史の中では、食べ過ぎや肥満が問題になるのは、ごく最近のことですし、現代でも国や地域によっては空腹に苦しんでいる人もたくさんいます。

私が断食をやり通せたのは、自ら求めたことであり、期間が決められていたから。
外から強いられて、いつ満たされるかわからない空腹だったら、どんなに苦しいことでしょう。

断食期間中、空腹が当たり前の状態になり、空腹を飼い馴らすしかありませんでした。こんな状況、山で遭難するか、危険な国でテロリストに人質にとられない限り、まず起こりません。

そして、感情は胃袋に支配されることも実感しました。高尚なことを考えようとしても、お腹が空いていれば、何が食べたいかが重要問題です。悟りを開いた人は、ここを超越しているわけです。

通い断食にはリピーターの方もけっこういました。
「前回の断食は楽しいことしか覚えていなくて。今回またやってみて、こんなにつらかったんだと思い出しました」と苦笑まじりに話していましたが、人間の記憶もあいまいなものです。
過度の断食はよくないので、1年明けないと次の断食はできません。今は「1回でもうたくさん」という気持ちなのですが、1年過ぎると、「またやってみよう」という気持ちになるのでしょうか。

特別な感覚で過ごした断食の1週間、そして、徐々に普通の生活に戻っていき、自分がどう変化していくのか。
お仕着せのパック旅行では味わえないような新鮮な体験です。


昨年10月の大洗で食べた昼食は、潮の香りがしました。大きい器でたっぷり味噌汁というのもいいものです。