翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

光が強ければ、闇も深い

ウラナイ8ブッククラブで玉紀さんが紹介してくれた『BTSユング こころの地図』を読んでいます。著者のマリー・スタインはユング派の分析家です。

BTSのメンバーは7人ですが、7という数字に象徴的な意味があり、今回の活動休止を示唆するようなことも書いてあります。

1週間は7日ある。これは誰かが勝手に決めた数字ではない。神は6日で世界を創造し、7日目に休息したとされる。7は物事を完成させる数なのだ。それは創造的な行為が完了し、とても大切な何かが成し遂げられて、いまは休息の時なのだという感覚を伝える数字である。

 

10年以上にわたって強烈な経験をしてきたのだから、「自分はBTSのメンバーだ」という気持ちはきっと消えることがないだろう。思春期から成人期初期への変化の時期に、BTSのメンバーはこうした強い絆と共通の目的を作り上げた。それは生涯にわたって彼らのもとにありつづけるだろう。たとえメンバーそれぞれが自分の道を歩むことになっても、そのことに変わりはない。いつの日か、彼らは別々の道を歩んでいくのだろう。グループは解散し、メンバーは現在よりもずっと充実したあり方で、それぞれの個別的な人生を歩むことになる。

 

世界的な人気を手にしたタイミングでの休息を惜しむ声も多いのですが、メンバーは限界に達していたのでしょう。リーダーのRMはこう語っています。

『Dynamite(ダイナマイト)』『Life Goes On(ライフ・ゴーズ・オン)』までは僕らのグループが自分の手のひらの上にある感じだったが、その後の『Butter(バター)』『Permission to Dance(パーミッション・トゥ・ダンス)』からは自分たちがどんなグループなのかよく分からなくなった。

私が彼らを知ったのはズンバのレッスンでかかった"Butter"と"Permission to Dance"。原曲を調べて韓国のグループであることにびっくりしました。私のような、にわかファンが増えすぎたことも彼らの疲労を増やしたのでしょう。

「歌詞を書くとき、どんなストーリーやどんなメッセージを伝えたいかがいつも重要だ」というRMにとって、欧米の有名ミュージシャンとコラボした英語のポップソングを歌うのは、あまり楽しいことではなかったのかもしれません。国連でのスピーチやバイデン大統領との会談のために髪を黒く染め直してスーツ姿になるのも、ヒップホップやラップからほど遠い世界です。

 

仲良さげな7人ですが、いつも一緒というのも息詰まるものがあるでしょう。最年長のジンは兵役に就くと言われていますが、アイドルの超過密スケジュールより軍隊のほうが楽かもしれません。

 

心に残った彼らのエピソード。

RMは成績優秀だったので両親は大学進学を期待していました。芸能界入りを反対する良心を「勉強ならいくらできても5000位だけど、ラップなら1位を取れる」と説得したそうです。日本以上に学歴社会の韓国でみすみす難関大学への入学機会を逃すことは親子ともに大きな賭けだったでしょう。

 

そして端正な顔立ちのVの父親とのいかにもアジア的な思い出。

デビュー前の練習生時代、親元を離れてレッスンに明け暮れる日々。両親は息子に会う30分のために故郷の巨済島から往復12時間かけてソウルを訪れていました。お父さんはバナナや牛乳、パンを持参して「メンバーたちと一緒に食べなさい」とVに渡したとか。

あまりの辛さに「やめたい」と電話をかけると、お父さんは「辛かったらやめてもいい、他の職業もたくさんあるから一緒に探してみよう」と言ってくれたそうです。

 

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2月にセブンイレブンのキャンペーンがあり、指定のアイスクリーム3個を買えばBTSのシートを1枚もらえました。一気に大量に買うのがはばかられ、店や日を変えて21個のアイスクリームを買って7枚をコンプリート。B5の透明ファイルに入れて、曜日ごとのTo Do Listや覚え書きを入れて活用しています。

 

BTSの人気が高まるにつれて、現実の自分と世間から求められるアイドルのイメージのギャップに苦しみ、心身のバランスを崩したメンバーもいます。多くの人が羨望するような光り輝く成功を手に入れても、そこには深い闇があったのでしょう。

あまりにも早く手にしてしまった、あまりにも大きな成功の結果を恐れる人は少なくない。これは本能的な恐怖であり、当然のものだ。成功は他者の中に羨望を生み、そして他者は羨望の中で成功した者の破滅を企てる。

BTSユング、こころの地図』より

 

「とりあえず」の魔法

片っ端から自己啓発本を読んでいるのに実践できず、だらだらと毎日を生きています。

認知行動療法のバイブル『いやな気分よ、さようなら』も読んでみました。原題は"Feeling Good"。いつもいい気分でいられたら、どんなにいいでしょう。

 

すぐに役立ちそうなのが、チックタック法 (TIC-TAC Technique)。仕事を妨害する認知(Task Interfering Congnitions)、仕事を方向付ける認知 (Task Oriented Congnitions)の頭文字を取ったものです。

私がいやな気分になるのは、やらなくてはいけないことを先延ばしている時。だめな自分を嫌悪し、ますます嫌な気分になるという自己嫌悪です。旅行なら計画を立てれば実行できるのに、大きめのプロジェクトの仕事や断捨離は一向に進みません。

 

紹介されている例が、まさに私に当てはまります。

断捨離を先延ばしにしている主婦。

「押入れを片付けるなんて無理。膨大な物が詰め込まれているのだから」が仕事を妨害する認知。「とりあえずやってみよう。1日で全部やってしまう理由はない」が仕事を方向付ける認知です。

論文や執筆を先延ばしにしている学生や作家。

「自分が書くものなんて大した意味がない」「大作で創作意欲が湧かない」が仕事を妨害する認知。「とりあえず書いてみよう。傑作である必要はないのだから」「適当な部分だけ、とりあえず手をつけてみよう。後になったらきっといい考えも浮かんでくるだろう」が仕事を方向付ける認知。

 

日本語の「とりあえず」は、将来を視野に入れない応急措置のようなニュアンスがありますが、英語では"for now"。過去や未来に囚われず「今」に集中。とりあえず手を付けてみなければ、何事も始まりません。「そのうちやろう」と思っているうちに、一生が終わってしまいます。

 

半年ごとに日赤から献血のお願いが来ると、とりあえず駆けつけます。確実に世の中に貢献できる方法だから。今回はマスクやカレー、クリアケース、タオルハンカチなどのお土産をいただきました。

 

「何もしないうちに一日が終わってしまった」と落ち込み「明日は心を入れ替え、先延ばししているあれこれを一気に片付ける」と思いたくなりますが、未来の自分も今の自分と同じようにグズです。「とりあえず」という呪文を唱え、できるところだけ着手してみることにします。「とりあえず」を毎日続ければ魔法が起こるかもしれません。

 

名もなき道を歩く

コロナで海外が遠くなり、気がつけば浦島太郎状態。

ニューヨークではラーメン一杯が2000円とか2500円というニュースを耳にしました。国内旅行と同じ感覚で海外に行くことはもうないのかも。

 

アメリカの社会学者が『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を出したのは1979年。今の若者にそんな本があったなんて言っても信じてもらえそうにありません。

スペイン無敵艦隊はイギリスに敗れ、七つの海を支配するとまで呼ばれた大英帝国も没落。日本もそうした歴史をなぞっているのでしょうか。スペインやイギリスならまだロマンがありますが、1997年のアジア通貨危機ヘッジファンドに狙い撃ちされたタイや韓国みたいなことになったら目も当てられません。

 

JALのマイルがあるので、国内には気軽に出かけていますが、それもインバウンド再開までかも。外国人旅行者がどっと来日すれば、宿が取りにくくなり宿泊料金も大幅に上がるでしょう。

 

1980年代初頭、大学のゼミ旅行はシンガポールとマレーシアでした。マラッカのホテルのレストランにTシャツ、短パンにゴム草履というラフな格好で入った学生に教授が注意しました。

「現地の人にとっては、めったに入れない高級な場所。そんなだらしない格好で入ったら現地の人やスタッフがどう思うか想像しなさい」

これからは日本人が「現地の人」として、高級ホテルやレストランに気軽に出入りする外国人をながめて複雑な気持ちになるのでしょうか。

 

そんな悲観的な未来を想像すると「スペインの巡礼の道を歩く」という野望にも弱気になってきます。

bob0524.hatenablog.com

 

ピレネーを越えていくフランス人の道は全長約800キロ。一日4時間ほどかけて20キロを歩けば40日。平均的なタイムテーブルは7時半に出発し、休憩をはさんで13時には宿に到着。14時からバルで昼食(スペインのランチタイムは遅い)、15時からシエスタ。20時に夕食、22時就寝と、そんなにハードではなさそう。

「お年寄りや子どももたくさん歩いている」とガイドブックにありますが、登山の経験のある友人によると「一日に20キロ歩けても、それを毎日となるとむずかしい」。休息日も入れると2か月ぐらいかかりそう。

そして、細々と続いている連載が終わらないことにはそんなに長く日本を離れられません。ワ―ケーションではないのだから、巡礼しながら仕事するなんてとても無理です。

 

日程を考えるより前に体力作り。インドア派の私はトレッキングの経験もありません。今月は八ヶ岳山麓をちょろっと歩いてみました。平坦な道なら4時間ぐらい歩けますが、それは1日だけだから。次回は2日連続、そして3日へと伸ばしていくつもりです。

そんなことをしているうちに寿命が尽きて、スペインではなくあの世に旅立つような気もしますが、それなららそれでよし。有名な巡礼の道でなく、名もなき道を歩くのも同じことだと思うから。

 

八ヶ岳山麓で歩いたホテル周辺の散歩道。ホテルの人が道を整えてくれているので、とても歩きやすい道でした。

人生のピークは、いつだって今

お世話になっている原稿執筆カフェの川井拓也さんのインタビュー記事。

 

hatawarawide.jp

 

川井さんの本業は映像関連。2019年にお酒を飲みながら対談できるスタジオをオープンし番組制作をしていたところ、2020年にコロナ禍。そこで原稿執筆カフェのアイデアが生まれたそうです。

原稿執筆カフェというコンセプトに加え、いかにも楽しそうに店を回している川井さんの存在はとても大きい。「状況に合わせて最適化していく」という柔軟な姿勢。いくつになってもそうありたいものです。

 

結果的にすごくたくさんのクリエイターの方々が来てくれるようになったのは、おもしろいですよね。ここにいるお客さんたちはみんな、ゲームや動画など誰かのコンテンツを楽しんでいるわけではなく、自分たちで何かを作っているんですから。

作家ではないけれど、40年近く雑誌の原稿を書き続けている私も「何かを作っている」わけか。

このブログは仕事ではありませんが、編集者に渡された企画ではなく自分が書きたいことを書いているのだから「何かを作る」により近いかもしれません。

 

そして、最も印象に残ったのが、この話。

はたらくことに限らず、僕は「今が一番おもしろいと思える人生を」というのをテーマに生きています。

3年前に亡くなった親父が編集者で、自分の会社で『TEEN BEAT』というビートルズの雑誌を作ったりしていたんですよ。そこが倒産した後も何回か出版社を作ったんだけど上手くいかず、死ぬ前に「俺の人生は何も残せなかった」と言っていました。ビートルズの雑誌の編集者なんてすごいじゃんと思うんだけど、本人としては、人生の前半に自分のピークが来たような感覚だったのかもしれない。

だから僕は、常に今が一番おもしろい人生にしたいんですよね。「あのころは良かった」と思いながら死にたくない。今だったら、「原稿執筆カフェおもしろかったな」と思って死ねる自分でありたいです。

若者が高齢者を敬遠するのは、過去の自慢話を延々と聞かされるから。「あのころの私はすごかった」と言ったところで、時代が違います。

 

私は学校が嫌いだったし、結婚できるかどうか不安でしたから、タイムマシンがあったとしても若い頃に戻りたくありません。結婚後の30代から50代、仕事は過酷で締め切りに追われる日々でしたが、有名人のゴーストライターという影の仕事も多くて、自分の名前を残すことはできませんでした。若い頃は、生産性の低い人間は価値がないという強迫観念に取りつかれていましたが、加齢とともに価値観もアップデートされ、ほどほどでいいし、自分が楽しければそれでいいと割り切れるようになりました。

 

60代の今、仕事はほどほどにして好き勝手に暮らせる今が人生のピークかも。

 

できれば70代も、仕事から解放されて好きなことだけできる人生の最良の時期にしたいもの。加齢による衰えを受け入れつつ、「人生のピークは、いつだって今」と思えるように、風車に戦いを挑むドン・キホーテのような生き方を目指します。

一人旅の楽しみ

先日の出雲旅行。

友人の優春翠に会いに行くのが目的でしたが、到着初日はドーミーイン出雲に一人泊。

 

夕食は名物の割子(わりご)蕎麦。丸い漆器に盛られ、だし汁をかけて食べます。

お店の女性から「一人旅ですか?」と聞かれました。「そうです」と答えると、心配そうな顔をされました。この平和な出雲に何の危険があるのでしょうか?

「明日から友人のところに行きます。東京で知り合って、島根にUターンした人です」と言うと「ああ、そうですか。よかった、安心しました」と、ほっとされました。

 

出雲大社に良縁祈願で多くの女性が訪れているはずですが、一人旅はめったにいないのかも。保守的なタイプの女性にとって旅行とは、独身時代は仲良しの友達、結婚してからは家族と行くものなのかもしれません。

 

優春翠は「婚活と妊活は絶対に友達と一緒にやるべきではない」と言います。結婚、妊娠のタイミングは人それぞれ。どんなに仲が良くても同じ時期というわけにはいきません。一人だけおめでたい状況になってしまうと、気まずくなります。

 

さて、コロナで世界は大きなダメージを受けましたが、リモートワークが定着するなどいいこともありました。一人旅がしやすくなったのもその一つ。

 

news.yahoo.co.jp

この記事にあるように、一昔前はパック旅行も温泉宿も2人以上での予約が求められていました。女性の一人客は自殺の怖れがあると警察に通報されたとか。「女性が一人で旅行なんてするわけがない」と思われていたのです。

 

一人では旅行なんか寂しくないのか?と思う人もいるかもしれない。が、意外に寂しさは感じないものである。

一人だからこそ、見知らぬ人に気軽に話しかけられるということもある、旅の恥はかき捨てというが、普段、人見知りな人でも、誰も自分のことなんか知らないと思うと、人間は大胆に行動できたりするものである。一人で旅をするという環境に身を置くことで「新しい自分」の一面を発見できることもある。

 

ウラナイ8のオンライン講座で、旅に出る目的を「箱から出る(think outside the box)」という言葉を紹介しました。新しい自分の一面を発見するのは、まさに箱から出ること。そして、箱は一人で出るもの。誰かと一緒に出ることはできません。