ウラナイ8ブッククラブで玉紀さんが紹介してくれた『BTS、ユング こころの地図』を読んでいます。著者のマリー・スタインはユング派の分析家です。
BTSのメンバーは7人ですが、7という数字に象徴的な意味があり、今回の活動休止を示唆するようなことも書いてあります。
1週間は7日ある。これは誰かが勝手に決めた数字ではない。神は6日で世界を創造し、7日目に休息したとされる。7は物事を完成させる数なのだ。それは創造的な行為が完了し、とても大切な何かが成し遂げられて、いまは休息の時なのだという感覚を伝える数字である。
10年以上にわたって強烈な経験をしてきたのだから、「自分はBTSのメンバーだ」という気持ちはきっと消えることがないだろう。思春期から成人期初期への変化の時期に、BTSのメンバーはこうした強い絆と共通の目的を作り上げた。それは生涯にわたって彼らのもとにありつづけるだろう。たとえメンバーそれぞれが自分の道を歩むことになっても、そのことに変わりはない。いつの日か、彼らは別々の道を歩んでいくのだろう。グループは解散し、メンバーは現在よりもずっと充実したあり方で、それぞれの個別的な人生を歩むことになる。
世界的な人気を手にしたタイミングでの休息を惜しむ声も多いのですが、メンバーは限界に達していたのでしょう。リーダーのRMはこう語っています。
『Dynamite(ダイナマイト)』『Life Goes On(ライフ・ゴーズ・オン)』までは僕らのグループが自分の手のひらの上にある感じだったが、その後の『Butter(バター)』『Permission to Dance(パーミッション・トゥ・ダンス)』からは自分たちがどんなグループなのかよく分からなくなった。
私が彼らを知ったのはズンバのレッスンでかかった"Butter"と"Permission to Dance"。原曲を調べて韓国のグループであることにびっくりしました。私のような、にわかファンが増えすぎたことも彼らの疲労を増やしたのでしょう。
「歌詞を書くとき、どんなストーリーやどんなメッセージを伝えたいかがいつも重要だ」というRMにとって、欧米の有名ミュージシャンとコラボした英語のポップソングを歌うのは、あまり楽しいことではなかったのかもしれません。国連でのスピーチやバイデン大統領との会談のために髪を黒く染め直してスーツ姿になるのも、ヒップホップやラップからほど遠い世界です。
仲良さげな7人ですが、いつも一緒というのも息詰まるものがあるでしょう。最年長のジンは兵役に就くと言われていますが、アイドルの超過密スケジュールより軍隊のほうが楽かもしれません。
心に残った彼らのエピソード。
RMは成績優秀だったので両親は大学進学を期待していました。芸能界入りを反対する良心を「勉強ならいくらできても5000位だけど、ラップなら1位を取れる」と説得したそうです。日本以上に学歴社会の韓国でみすみす難関大学への入学機会を逃すことは親子ともに大きな賭けだったでしょう。
そして端正な顔立ちのVの父親とのいかにもアジア的な思い出。
デビュー前の練習生時代、親元を離れてレッスンに明け暮れる日々。両親は息子に会う30分のために故郷の巨済島から往復12時間かけてソウルを訪れていました。お父さんはバナナや牛乳、パンを持参して「メンバーたちと一緒に食べなさい」とVに渡したとか。
あまりの辛さに「やめたい」と電話をかけると、お父さんは「辛かったらやめてもいい、他の職業もたくさんあるから一緒に探してみよう」と言ってくれたそうです。
2月にセブンイレブンのキャンペーンがあり、指定のアイスクリーム3個を買えばBTSのシートを1枚もらえました。一気に大量に買うのがはばかられ、店や日を変えて21個のアイスクリームを買って7枚をコンプリート。B5の透明ファイルに入れて、曜日ごとのTo Do Listや覚え書きを入れて活用しています。
BTSの人気が高まるにつれて、現実の自分と世間から求められるアイドルのイメージのギャップに苦しみ、心身のバランスを崩したメンバーもいます。多くの人が羨望するような光り輝く成功を手に入れても、そこには深い闇があったのでしょう。
あまりにも早く手にしてしまった、あまりにも大きな成功の結果を恐れる人は少なくない。これは本能的な恐怖であり、当然のものだ。成功は他者の中に羨望を生み、そして他者は羨望の中で成功した者の破滅を企てる。