翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

コロンビアへ行きたしと思へども

本格的な老いに突入する前にコロンビア行きの野望を抱いていました。 

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愛読しているガルシア=マルケスに加えて、ずっと熱中しているズンバの創始者ベト・ペレスもコロンビア人です。

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コロナによってコロンビアどころか、日本の外に出ることができなくなった今、2年前の秋のスペイン旅行が、今となっては夢のよう。

マドリッドからラマンチャ地方セルビアを周り、カディスまで南下。カディスから多くの人々が新大陸へと渡った港ですし、マドリッドの空港で南米行きの便の多さを目にし、スペインと南米の近さを実感しました。

スペインの食べ物は美味しいし、人々は陽気で親切だし、すっかり気に入りましたが、コロンビアをあきらめることもできず、JALのサイトで航空運賃を調べたり、個人の旅行ブログを読んだりしていました。観光ではなく暮らすように滞在し、現地のフィットネスクラブでズンバのレッスンを受けることが夢です。

 

コロンビアは物騒なイメージがあります。

1994年のサッカーワールドカップオウンゴールをしてしまったアンドレス・エスコバルがコロンビアに帰国して射殺された事件は、ガルシア=マルケスの『予告された殺人の記録』が現実化したかのよう。

外国人旅行者がいきなり殺されたり誘拐されるような無法地帯ではないでしょうが、現地に知り合いがいれば何かと心強いはず。

 

カウチサーフィン、すっかり下火になったみたいですが、日本を旅行するコロンビア人をホストすれば友人になれるかも。フィンランドはこの作戦でうまくいきました。

それから、昔教えていた日本語学校にコロンビア人学生指定でホームステイを受け入れいてもいいし。ヘンリク君と親友になれたのはこの方法だったし。

そんなあれこれの思惑は、コロナで吹っ飛んでしまいました。

 

休館していたスポーツクラブが再開しましたが、60分のレッスンが40分に短縮されています。マスクをして長時間運動するのは良くないと言われているので、コロナが落ち着くのを待つしかありません。

貴重な若い時代の自由を制限された若者のことを思えば、いい年の人間があれもこれもと欲を持つのはみっともないものですが、先の希望がないと人は生きていけません。

 

萩原朔太郎は「ふらんすへ行きたしと思へども ふらんすはあまりにも遠し」に続けて、「せめては新しき背廣をきて きままなる旅にいでてみん」と書きました。

国内でも気ままな旅はむずかしい状況ですが、せめてYouTubeを検索してメレンゲサルサのステップを練習しています。

  

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小樽の老舗喫茶コロンビア。室内には巨大シャンデリアとグランドピアノ、深紅のソファ。小樽の最盛期を思わせる豪華さで、ガルシア=マルケスの小説の舞台になりそう。広い店内を一人で担当していた女性店員さんはとても丁寧な接客でした。小樽のドーミーインに長期滞在してコロンビアでお茶したり、いかにも昭和のパフェやプリンアラモードを楽しむ日々も夢見ています。

 

健康も運のうち

先日、若い女性に「素敵ですね」とうっとりされました。

年に一度の定期健診、若い女性は看護師さんです。体重は10代の頃とほぼ変わりませんし、数値はすべて正常。毎日、検査結果を見ている看護師さんからすると、60歳の健康体を目にすると「素敵」という表現が出てくるのでしょう。

 

どういうわけか、体だけは強い。

若い頃、病弱な美女に「そんな健康な体に産んでもらって、親に感謝だね」と言われて、健康よりも美人に産んでもらうほうがいいと思ったものです。学校に行きたない日があっても、病気にならないので休むこともできず皆勤賞をよくもらいました。

フリーランスのライターとして順調に仕事を回してもらったのも、病気で原稿を落とすことがまったくなかったから。急に発熱したライターの替わりに入稿したこともよくあります。

 

サンデル教授は『実力も運のうち』で「富は才能と努力のしるしであり、貧困は怠惰のしるしである」という世界観を批判しています。

「富」を「健康」に置き換えたらどうでしょうか。

人工透析患者は死ね」という過激な主張で炎上した元アナウンサー、「食いたいだけ食って、飲みたいだけ飲んで糖尿になって病院に入るやつの医療費は俺たちが払っているんだから、公平じゃない」と発言した元総理。彼らの意見に賛同できないのは、私はたまたま「遺伝子ガチャ」で健康を引き当てただけから。

 

肥満の傾向はあるのですが(兄弟はぶくぶく太っている)、30代からはほぼ毎日スポーツクラブに通いスタジオエクササイズで汗を流しています。与えられた健康を維持するために努力していると自慢したいところですが、そもそも体力のない人はスポーツクラブに通えません。一流大学に入れたのは努力の結果ではなく、努力できる環境にあった幸運のおかげなのと同じです。

そして、伊豆の「やすらぎの里」や荻窪の友永ヨーガ学院の断食で体重のコントロールに努めてきましたが、こういうプログラムはけっこう高価です。それなりの稼ぎがあったのも、運のおかげ。私の世代で進学、就職、結婚を自由に決めていいという境遇は恵まれていたし、たまたま文章を書くだけで潤沢な収入が得られた時代と場所にいました。だから、病気がちで肥満の人が怠惰であると断言してはいけません。

 

そしていくら健康自慢の私も、老いには勝てません。病気は自己責任なんて言っていたら、いつか特大ブーメランとなって自分に戻ってくるでしょう。

 

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帯広のマスク姿の鹿。 コロナが収まったら、北海道のサウナ巡りを再開したいものです。

望むのは水風呂だけ

ゆるく参加しているウラナイ8が二周年を迎えました。

uranai8.jp

2周年イベントの一環として、メンバーのうち温泉好きの甘夏さんと玉紀さんとトークを実施しました。


www.youtube.com

温泉やお風呂が好きと言っても好みは微妙に異なります。

甘夏さんは子供の頃から温泉と知らずにお湯を楽しんでいたという温泉育ち。玉紀さんはアメリカ留学中、すべてが快適だったけれどシャワーだけの生活に行き詰り、ホストファミリーに頼んでバスタブに入れてもらったそうです。

そういうお二人に比べると、温泉は好きだけれど、そこまでではないと改めて感じました。私が望んでいるのは水風呂だけ。サウナは水風呂のためです。

温泉地に育った甘夏さんに対して、私は海育ち。毎年、夏が来て海に入るのが本当に楽しみでした。プールは人工的であまり好きではありません。天然水の水風呂を求めて全国をさすらっているのはこのためです。

サウナ好きになってからは、実家があった神戸に帰るたびに、六甲の天然水の水風呂を満喫していました。

 

同好の士と話すと、自分の好みや欲望が明らかになってきます。

そこで思い出したのが『村上海賊の娘』の源爺の教え。 

 

 ウラナイ8のデイリーメッセージでも紹介しています。

uranai8.jp

悍婦(かんぷ)にして醜女で輿入れ先が決まらないくせに、あれこれ結婚の条件を出す景(きょう)。なんとか彼女をまるめこんで大坂本願寺の兵糧入れを実現させたい源爺は、こんなアドバイスをしています。

「姫様は、すべてを欲しておられるのですな。姫様は、海賊の家に輿入れしたいと望まれ、軍書にて禁じられておるという戦にも出たいと仰せじゃ。すべての望みを叶えたいのでござりますな」

「そうだ、悪いか」

「悪うはございませぬ。ただ、何かひとつでも捨てる覚悟をなされてはどうかと思うたまでにござりまする」

しかし景は鼻で笑い「オレは全部を手に入れる女子じゃ。そう心得よ」と豪語します。源爺は年の功で「左様にござりましょうとも」とあっさり引き下がります。

 

「サウナの温度が低い」「サウナにテレビがある」「水風呂がぬるい」「外気浴のスペースがない」「我が物顔の主(ぬし)がいる」…と注文ばかり多い私はまるで海賊の娘のよう。源爺の教えに従って、水風呂さえあればあとは捨てる覚悟をしなくては。

 

昨日のトークでも紹介したサウナーのバイブル『サ道』の言葉。

ととのっただの

ととのわなかっただの…

ある状態を追い求めると

それに振り回されてしまわぬものか?

 

ある状態を求めれば

苦しみを生むだけではないか?

 

ある状態は手に入れてもやがて失ってしまう

現れては消える状態を求めるな

信じるな

 

ととのった特別な状態など

はじめからない!

ととのうなんてものはない!

そんなものを信じるな!

サウナを信じるな!

  

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先月はまだ旅行できる雰囲気だったので、断捨離の思想に触れようと指宿のリヒトへ。サウナと水風呂があるのも決め手だったのですが、現地に行ってみるとコロナ対策のためサウナは休止中!

それでも水風呂があります。鹿児島湾を見渡せる山からは濛々と湯煙が立ち昇っています。山の力に満ちたお湯と水風呂があれば、サウナなんてなくてもどうってことはありません。自分の望みがはっきりしていると迷いが消えます。

広くゆるいつながりでチャレンジする。

勝間和代『ネオ・ライフハック』で知ったのが、「みんチャレ」という三日坊主防止アプリです。 

 

minchalle.com

 

私が参加しているのは「節酒チーム」。つい飲みすぎることが多いけれど、まったく飲まないのも味気ないので、禁酒ではなく節酒を選びました。

断酒チームはけっこうあるのですが、飲酒を減らすというチームはあまりありません。「みんチャレ」を始めた日にたまたま空きが一人分あったのはラッキーでした。

 

5人という人数、メンバー同士の距離感が絶妙です。これより少ないと煮詰まりそうだし、多いと煩雑になりかねません。

メンバーのプロフィールで性別や年代、簡単な自己紹介が読めますが、どこまで書くかは自由。性別不明の人もいるし、私は年代を明かさず旅先の飲酒写真やズンバの後のビールを報告しているので、まさかこんな年寄りが参加しているとは気づかれていないはずです。

出入りは自由なので「節酒の習慣ができました」と卒業した人がいて、新しい人が参加。早速、先輩風を吹かしています。

  

このチームを立ち上げた方は、みんチャレによってお酒と友達になり、ダイエットとTOEICの点数アップを達成したとのこと。大いに見習いたいものです。 

節酒に加えて断捨離や食生活改善のチームにも興味があるのですが、二つめのチームから有料となり料金は一か月500円。生活習慣の改善のためには安いものだと思う反面、複数のチームそれぞれに毎日写真やコメントを書けるかどうか不安。節酒なら飲酒カレンダーというアプリをスクリーンショットするだけですが、片付けた場所や食事の写真を毎日アップするのは大変そうです。10チームまで参加できるとありますが、そんなに入ったらそれだけで一日が終わりそう。2~3チーム向きの料金体系ができたら検討します。

 

それはともかく、こういう関係はネット時代ならではです。本名も顔も知らなくて、「節度ある飲酒」という目標だけで、毎日つながる仲間。人間関係は「広くゆるく」をモットーにしているのですが、こういうつながりがあれば老後もそんなに寂しくないかもしれません。

 

 

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サウナに惹かれて行った旭川のOMO7。スタッフも設備も申し分なかったのですが、エレベーターホールに飲み放題という悪魔のコーナーがありました。ビールはもちろん北海道の日本酒、ワインもありますした。

 

飲酒カレンダーには何を何倍飲んだか記録するのですが、飲み過ぎるとドクロマークがでます。節酒チームは「飲みすぎる日もあるよね」というゆるいスタンスだから、続けられます。

 

失敗する自分を受け入れる

子供の頃、母に届いた恩師からの葉書代が不足していたことがあります。

調べてみると、昭和47年、葉書代が7円から10円になった年です。母は配達員に不足分の3円を払い、「とてもしっかりした先生だったのに、もうお年なんだろうね」とつぶやいていました。

 

昨年、友人にレターパックを送った後で消費税分の値上げ分10円が不足していたことがわかり、大慌てで詫びました。

 

2月末、実家の後片付けで帰省した帰り道。

伊丹空港でチェックインしようとしたらJALカードが反応せずゲートが開きません。確認したら、伊丹→羽田ではなく逆区間で予約していました。行きは新幹線で帰りだけJALにしたので、間違えてしまったのでしょう。早割便なのでいつもならキャンセル代が50%かかるところでしたが、緊急事態宣言中だったので無料でキャンセルできました。伊丹から新大阪に出て新幹線で東京に戻り事なきを得ました。

 

それから、先日の指宿リヒトの予約でも失敗しました。

リヒトの会員ホームページから予約したはずのに、リヒトではなくワ―ケーションの予約となっており、現地で大いにあせりました。幸いなことに、指宿ベイヒルズのフロント及びリヒトのスタッフが柔軟に対応してくださり、リヒトでの滞在を満喫できました。

大きな失敗といえばこの2つですが、それ以外にもちょくちょくあります。

 

たとえば3月、玉紀さんのインナーチャイルド会。Zoom開催で、指示されたURLを開けて待っているのに時間になっても動きがありません。ぼんやり待っていたら玉紀さんから電話があり、私が開いていたのは前日の会のURLであることが判明しました。

 

そして新宿の銀行での手続き。最近の銀行は予約制となっており、外貨関連などは大きな支店でしか取り扱いがありません。ネット予約まではうまくいったのに、東口支店と西口支店を間違えて大恥をかきました。手帳には西口と書き込んでおいたのに、月に一度のボランティアで通っている献血センターが東口の銀行の上にあるため、新宿の銀行支店といえばあそこだという思い込みがあったらからです。この時も、窓口の人が親切に西口支店に連絡を入れてくださり、助かりました。

 

若いうちから注意力散漫によるミスはありましたが、年を取るにつれて頻度が多くなっていくのでしょう。老人だからしかたがないと世間に甘えるのではなく、できるだけ防止するためにどうしたらいいかを考え続けたい。

 

とりあえず、失敗したらメモして、防止策を講じるようにしています。 

ネットでの申込みや購入は決定する前に画面の下までスクロールして、確認すること。できれば、一晩置いて、決定は翌日に。ただ、飛行機や新幹線はこの期間までに予約すれば割引という制度があり、つい前のめりになって予約しがちです。

そして、スケジュールをぎりぎりに詰め込むのではなく、ゆとりを持って動く。JALの予約や銀行の支店を間違ってもなんとかなったのは時間のゆとりがあったからです。待たせるより待つ方が精神的にも楽ですし、「時間がない」とパニックになればさらにミスを重ねる恐れがあります。

 

今はこうしてじたばたしていても、最終的には、失敗する自分を受け入れなくてはならなくなるでしょう。

 

思い出すのは、湯島聖堂の陰陽五行講座を受け持っていた中国哲学の大家です。受講生からのたっての願いで、80代半ばの先生に講座を続けてもらっていました。体調を崩して突然休講になることもありましたが、受講生は納得していました。

ある日、時間になっても先生が現れず、事務局がご自宅に電話をしても外出中とのこと。移動中に何かあったのではと教室がざわざわしました。

 

先生はご無事でした。講義の日だということを失念して床屋にいたとのこと。ほどなく講義辞退の申し出があり、今度ばかりは受講生も受け入れるしかありませんでした。長年教壇に立っていた先生は、もう完全に引き時だと悟ったのでしょう。

 

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老いに抵抗するのは、風車に挑むドン・キホーテのよう。