翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

小倉・旦過(たんが)市場で食べた生涯最高のイカ

JALの「どこかにマイル」の行き先が北九州空港になり、二泊三日の旅に。

小倉で一泊しようと思ったのは、このブログの影響です。

sakak.hatenablog.com

 

小倉の居酒屋やホテルで「観光で小倉に?」と怪訝な顔をされました。味のあるホテルに泊まり、松本清張記念館もじっくり観て、私にとってはおもしろいところでしたが、一般的な観光には不向きなのかもしれません。

 

最終日の昼食は旦過市場の大學堂と決めていました。 

 

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九州大学の学生さんが運営している食堂です。

200円のご飯を買って、旦過市場でおかずを買い集めてオリジナルの丼を作ります。市場活性化の産学共同体といったところでしょうか。

 

午後1時頃、大學堂に行くと「ご飯がありません。炊き上がるまで10分かかります」とのこと。先におかずを調達することにしました。

小倉名物のかまぼこに、ぬか味噌炊き。魚屋さんで丸ごとのイカを刺身におろしてもらえるか頼んだら、快く引き受けてもらいました。

 

大學堂で、小倉の味を堪能。そこへ魚屋のおばさんがやって来ました。

「さっき、イカの刺身を頼んだ人…」

魚屋のおばさんはイカの身を刺身にして、下足を包んで氷を入れようとしてくれたので「旅行者です。刺身は大學堂で食べますから、下足は他のお客さんに差し上げてください」と言いました。

 

それなのに、魚屋のおばさんはわざわざ下足を焼いて大學堂まで持って来てくれました。

 

イカの下足焼きは涙が出るほどの美味でした。この人生でこれ以上のイカを食べることはないでしょう。

 

近所のお客なら、リピーターになるかもと期待してサービスするのはわかります。一見の観光客にサービスしても、見返りは期待できません。それなのに、魚屋のおばさんは「わざわざ東京から来たって言うから…」と儲けにもならないことをしてくれたのです。

 

1年半前から日本語学校で外国人に日本語を教えています。

毎週、学生が入り、卒業していき、「初めまして」「さようなら」の繰り返しで、単に日本語を教えればいいという安直な姿勢に流れがち。教師の私はずっと同じところにいますが、学生は観光客のようなものです。

どんなに短い期間であっても、学生一人一人の特別の体験をしてもらいたい。

旦過市場の魚屋のおばさんに学んだ教訓です。

 

日本チョイ住み計画

JALの「どこかにマイル」で北九州の旅を満喫しました。

 

実は北九州に決まって、ちょっとがっかりしました。

JALから提示されたのは、伊丹、大分、帯広、北九州の4つ。

実家に帰る伊丹はできたら避けたかったけれど、大分で温泉に入ったり、帯広で北海道の秋を楽しみたい。北九州は日帰り出張の仕事のイメージが強くて旅心をそそらなかったのですが、超人気の観光地でないからこそ、さまざまな人生を垣間見ることができたのでした。

 

下関と小倉で二泊三日の旅。

下関の宿は安定のドーミイン。露天風呂とサウナ、水風呂を備えた天然温泉に充実の朝食。部屋で目にしたのが、30日連泊のマンスリープランの案内です。

ホテル住まいなら敷金礼金、光熱費は不要ですし、掃除もやってもらえます。フロントで聞くと、マンスリープランは12万円とのこと。30日間、新しい土地で暮らしてみたいという気持ちが沸き上がったのは、アン・タイラーの『歳月のはしご』の影響です。

  

歳月のはしご (文春文庫)

歳月のはしご (文春文庫)

 

 

主人公のディーリアははっきりした理由もなく突発的に家出して、新しい生活を築いていきます。主婦、母親という役割を離れて人生を見つめ直したかったから。

 

旅に出ることで人生に風を取り入れることができますが、2泊3日はちょっと短い。30日連泊なら、旅先だからと欲張ってしまうのではなく、自然体で過ごせそうです。

 

小倉で泊まったアークブルーホテルは今年の夏にオープンしたばかりです。

気さくな若い女性のスタッフによると、カフェに来て楽しかったので、ここで働きたくなったそうです。彼女に限らず、スタッフ全員がいきいきと働いていました。

ホステルも併設しているし、韓国も近いので海外から若い旅人も泊まるのでしょう。 

 

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シンプルでスタイリッシュな部屋。

 

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 カフェも併設しているし、キッチンや洗濯室もあります。

 

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屋上も解放され、夜風に吹かれながら一杯楽しむこともできます。将来的にはビアガーデンになる予定だそうです。

 

下関の居酒屋でテレビを見ていたら、地域の天気予報にソウルや釜山の天気も含まれるのにびっくりしました。下関からは韓国や中国に定期航路がありますし、北九州から釜山まで飛行機で60分。東京より近いのです。 国際都市だから旅人だけでなく、一時的な居住者にも居心地がいいことでしょう。

NHKに「世界チョイ住み」という番組がありますが「日本チョイ住み」で十分楽しめると実感した旅でした。

 

どこかにマイルで日常をリセット

欲が深い私は、静かで落ち着いた暮らしができません。

50代も半ばを過ぎたのだから、やりがいや承認欲求を手放せばいいのに、貪欲に世間の荒波に飛び込んでいます。

 

そうやって得たお金の一部を旅につぎ込みます。

旅に出ると、もろもろのストレスを吹き飛ばしてリセットできます。「なんて小さなことにくよくよしていたんだろう」「世界は広く、それぞれの人がそれぞれの場所で生きている」と実感できるからです。

 

しかし、いざ旅に出るとなると、どこに行こうかと迷います。選択の数が多すぎると決断できないのが人のサガ。

 

bob0524.hatenablog.com

 

「ここに来たけれど、あっちのほうがよかったかもしれない」という思いを断ち切ってくれるのがJALの「どこかにマイル」です。

 

www.jal.co.jp

 

2月は高知に行きました。

JALから示された選択肢は、大分、熊本、宮崎、高知。

温泉大国の九州で温まるつもりが、高知に行くことになりました。

 

bob0524.hatenablog.com

 

高知には占いの師匠の天童春樹先生がいらっしゃいます。

天童先生に「日本語教師の成り行き」で易を立てていただきました。この頃は日本語教師として暗中模索の状態で、学校に行くのが気が重くてしかかたがありませんでした。今も決して上手に教えているわけではありませんが、天童先生がおっしゃった通り、精神的な苦痛はかなり軽減されています。

 

bob0524.hatenablog.com

 

夏休み前のベストシーズンの北海道を狙い、6月は「釧路、帯広、札幌、那覇」の4択。結果、沖縄に行くことに。

 

bob0524.hatenablog.com

 

夏休みシーズンが終わり、私にとっては絶好の旅の季節が到来。

長野県の阿智村へ2泊3日のバスツアーを申し込みました。公共交通機関を使って東京から阿智村へ行くのはけっこう大変そうなので、昼神温泉に2泊するプランを選びました。小刻みに観光スポットを回る団体旅行は疲れますから。

 

ところが、参加者が集まらず、催行中止に。3度目の「どこかにマイル」で運試しをすることにしました。

 

占い師のはしくれとして、4つの選択肢のうちどこになるかを占ってみるべきなんでしょう。占い仲間の天海玉紀さんみたいに。

 

lady-joker.com

 

私は、JALに決められた行先を「天のお告げ」として読み解くことにしています。

最初の高知は「天道春樹先生に占ってもらえ」、2回目の沖縄は「多拠点居住を検討せよ」でした。

 

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そして3回目。提示された選択肢は、帯広、大分、北九州、伊丹。

伊丹は親の介護で神戸の実家に帰るために定期的に利用している路線です。伊丹が候補に出ると選択をやり直すのですが、今回はあえてそのままにしました。伊丹に決まったら、もっと実家に関わるべきだと天が告げているのでしょうから。

 

そして、北九州に行くことになりました。

北九州空港から大分に出て温泉三昧、あるいは福岡に出ておいしいものを食べることも考えたのですが、それなら大分か福岡になっていたはずです。

北九州ならではの旅行計画ということで、下関と小倉にそれぞれ1泊することにしました。温泉宿ではなく、ビジネスホテルに泊まって、吉田類の『酒場探訪記』的に楽しみます。地元の生活を垣間見て、あわただしい東京の日常からリセットされ、新たなエネルギーを得られる旅になればと思っています。

というわけで、行って来ます。

 

 

結界を張る

家のない状態から、今や熱海と菊名の家でさまざまな人を受け入れる坂爪圭吾さん。

 

私が坂爪さんのブログを読むようになったのは、カウチサーフィンを始めたころです。初対面の外国人旅行者を家に泊めるというと、たいていの人から「そんな危険なこと!」とびっくりされました。

カウチサーフィンの場合は、あらかじめメールでやりとりできますし、レファレンスをチェックすれば、その人がどんなカウチサーファーであるかがわかるので、それほどリスクは大きくありません。

 

bob0524.hatenablog.com

 

坂爪さんの「ごちゃまぜの家」にはそんなフィルターがないので、どうやってトラブルを防いでいるのか疑問に思っていました。

 

その答えがここに書かれていました。

ibaya.hatenablog.com

 

坂爪さんは結界を張っています。

 結界を張るとは『神社感を醸し出すこと』だと思っている。神社には、空間全体の雰囲気から「ああ、ここは静かに過ごす場所だな」とか「大きな声を出して騒ぐ場所ではないんだな」ということが伝わってくる(ものだと思う)。決して『騒ぐな!』とか『静かにしろ!』と言われたから静かにするのではなく、その場所の空気感を通じて「ああ、ここは静かに過ごす場所だな」ということを感じ取ることができる場所。わたしは、このような神社感を醸し出す空間を目指す行為を『結界を張る』という風に呼んでいる。

 

 自分の家に結界を張りたいし、日本語教師としては、自分が教えるクラスに結界を張りたいと切実に思います。

私が教えているのは選択制の作文クラスで、ひらがなの練習をする学生から、日本人顔負けの文章を書く学生まで、レベルは千差万別です。そのため一斉授業はできず、各学生に応じた課題を与え、質問を随時受け付けるスタイルで進めています。

ときどき、教室が乱れます。どこかで私語が始まり、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語など自国語を話す仲間が見つかると、ここぞとばかりにおしゃべりが盛り上がります。

10人ほどの学生に対し教師は私一人なので、質問が重なった時など、上級者が下級者に教えることも推奨しています。そのため私語は一切禁止というわけではなく、日本語が上手になるための私語なら構いません。

 

問題なのは、作文クラスなら何かを強制されることもなく、ただ出席するだけでいいと学生が考えることです。

私が教えている日本語学校は、留学ビザではなく観光ビザの短期留学生がほとんどなので、出席率が問題になることは少ないのですが、費用を出してくれた親の手前、欠席ばかりでは叱られるという学生もいるはずです。出席稼ぎのために好きでもない作文クラスに登録した学生は、80分の授業が退屈でしかたがないのでしょう。

そんな学生を放置すると、まじめな学生から「私語が多くて集中できない。教師が学生をコントロールしていない」というクレームが来ます。

 

だから、教室に結界を張りたい。かといって、私語を口うるさく注意したくありません。

文法を学ぶというより、日本語で自分を表現する創造性を伸ばしたいので、あまりぎすぎすした雰囲気にしたくないのです。

私の目標は坂爪さんと同じ。

強制されて何かをやるのではなく、自ずから『そうしたくなる』ような空間を目指すこと

そのために具体的なノウハウがあるわけでなく、教師としての私の姿勢が問われているのでしょう。

まだまだ満足のいくクラス運営のレベルには到達していないのですが、学生自ら「日本語を書きたくなる」ような空間を目指して、試行錯誤を重ねています。

 

アラン・コーエンの言葉も示唆に満ちています。

他人はあなたが「何を言い、何をしてくれたか」は忘れるかもしれない。
けれどあなたが「どんなエネルギーでそこにいたか」は覚えているものです。

日本語の細かい文法は忘れてしまっても、学生たちは私がどんなエネルギーでクラスにいたかを記憶するのでしょう。

 

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いすみ市の國吉神社。

この2年間、神社でお願いしてきたことはただ一つ。「私を日本語教師という道具としてお使いください。もし役に立たない道具なら、辞めさせてください」。横須賀、広島、愛媛、高知、仙台、沖縄と各地で手を合わせてきました。

東京オタクハウスの野望

甘夏弦さんの「カルミックインプリントモニターセッション」を受けてみました。

ameblo.jp

 

占いは私にとって大切な商売道具。四半世紀近く、女性誌を中心に原稿書きをしてきましたが、占いという専門ジャンルを持ったことで出版不況の中でも仕事を続けられています。

修業のために対面鑑定をやっていた時期もありましたが、精神的エネルギーをかなり消耗するので、原稿書きのみに戻りました。その後、副業の日本語教師を始めたのでそれだけで手一杯です。

 

今は占ってもらう側になることのほうが多くなりました。

占い学校まで通って占術のロジックを学んだのだから、自分で自分を占えばいいのですが、バイアスがかかってしまいます。時々、第三者の視点から語ってもらうことで、新たな発見があり、「そういうことだったのか」と腑に落ちます。暗闇の洞窟を歩くのにたいまつを手渡されるようなもので、視界が広がります。

 

甘夏さんのセッションのことは天海玉紀さんから聞きました。

テーマは土星土星は西洋占星術で恐れや苦手意識を象徴します。

私の土星は、4ハウス山羊座。4ハウスには土星だけでなく木星と金星も同居しています。

土星が制限の星なら、木星は拡大の星。私の行動が一貫せず、気持ちと裏腹のことに手を出してばかりいるのは、この配置のせいでしょう。

 

甘夏さんによると、4ハウスは「ここにいていい」という安全感覚。キーワードは「居場所」。

たしかに私は「必要とされたい」「役に立つ存在でいたい」という息苦しさを抱えています。のんびりしたいと願いつつ、何もしなかったらこの世界に自分の居場所がなくなるんじゃないかという恐れがあり、何かをすると「うまくできたか」「人からどう評価されるか」を病的に気にします。

 

1年半前から日本語学校で教えています。外国人との交流をライフワークにするための居場所です。でも、土星からの要求水準は高くて「この学校に私がいていいんだろうか」と胃の痛くなることばかりでした。それでも投げ出さなかったのは、「最終的には、なるようになる」という木星の楽観主義と「日本オタクの学生に日本文化を伝える」という金星の楽しさがあったから。

私の太陽星座は3ハウス射手座ですが、4ハウスのスタートも射手座であり、海外と日本をつなげることは、人生の目標です。

海外を放浪したり、外人バーで飲んだくれるだけで終わるのではなく「教師」という社会的に認められるポジションに進んだのは、権威を象徴する山羊座土星の重しが効いているからでしょう。

 

こうして、自分の選択の意味付けを考えることは、精神安定にとても役立ちます。

 

甘夏さんのセッションはそれで終わらず、今後のバージョンアップ計画まで進みます。

居場所のバージョンアップ…と考えているうちに、日本オタクの留学生たちの居場所を作ることが、私の居場所にもなると思い至りました。

今の住まいでは1人しかホームステイを受け入れられませんが、賃貸に出して広い一軒家を借りるとか。経済的に採算が取れるのは、家賃がいくらまでだろうと素早く計算。「東京オタクハウス」という名称もひらめいたのですが、居場所は物理的なスペースでなくても、ネットワーク作りでもいいかもしれないという気になりました。

 

作文のクラスは日本語で自己表現をするクラスなので、学生の内面がわかり親しくなりやすく、コース修了後もメールをもらうことがよくあります。

こうして海外の日本オタクとの関係を広げていく先に、私の生きる意味が隠されているのかもしれません。

 

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小湊鉄道養老渓谷駅には3匹の駅猫がいるというので楽しみにしていたのですが、2匹は引退していました。

不特定多数の人間と接する仕事は老猫には負担なんでしょう。

私も加齢により思うように動けなくなったら、心置きなく引退できるのでしょうか。「働かない老人社会の負担。超高齢化社会の日本には居場所がない」という風潮になっているんじゃないかと不安です。これも4ハウス山羊座土星の恐れです。