翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

幸運なカウチサーファーを招きたい

カウチサーフィンをやっている理由は人それぞれです。
日本だと英会話上達、国際交流などが一般的でしょうか。

フィンランド人の友達を作りたい」が私の表向きの理由。もうひとつ目指しているのは、開運です。

風水で最も重視されるのは、玄関です。
玄関を通して、その家に暮らす人に対し幸運、不運、あらゆる「気」が入って来るから。昔の中国では、家をぐるりと塀で囲い、どの向きに門を作るかを風水で決めていたそうです。外敵がいつ侵入するかわからない物騒な時代、門の向きは一族の命運を左右すると考えられていました。

現在でも、熟練の風水師は、ドアを開けて玄関を見ただけでその家の経済状態を言い当てます。

玄関のたたきを使い捨て掃除シートで拭くのが私の毎日の習慣です。側面に鏡をかけ、下駄箱の上には一対のシーサーを置いています。

しかし、掃除よりもっと重要なのは、玄関を通ってどんな人が我が家を訪れるかです。

東京でホストしている日本人は珍しく、在日外国人が多いという話を聞いたことがあります。
住宅事情が悪いし、日本人は友人でも自宅に泊める習慣があまりなく、ましてや外国人を宿泊させるなんて人はあまりいないのでしょう。だから、東京で日本人の家にホストされたサーファーはラッキーだと言われます。

スクールカースト、ママカーストではありませんが、運気にもカーストがあります。ただし、運気のカーストは固定していません。運のいい人と交流していると自分の運も上がり、その逆もあります。

だから私は、我が家の玄関を通るカウチサーファーは全員、幸運であってほしい。

これまで私のカウチサーフィンのホスト運は上々だと思っていたのですが、先日、トラブルの予感がありました。

リクエストを送ってきたのは、台湾在住のアメリカ人。30歳の男性です。
ちょっとおもしろいなと思ったのは、彼が中国語を学んでいる点。リクエストもプロフィールもしっかり書き込まれています。
易(Iching)について英語で話せるかもしれないので、とりあえず返信してみました。

彼のファミリーネームが日本で活躍したプロ野球選手と同じで、台湾在住ですから、王貞治の名前などが出て、「日本じゃタイガースといってもデトロイトじゃないからね」と野球話で盛り上がりました。

しかし、彼の問題は、長期滞在を望んでいること。私のカウチ紹介には、2泊までとしているのですが、ケネスからのレファレンスで4泊したとあるので、交渉次第で延泊できると思われたのかもしれません。
ケネスの場合は、旅の初めに2泊して、京都を訪れた後、日本を発つ前に2泊ですから連続4泊ではありません。ケネスと気が合ったから実現したことで、最初から4泊を受け入れるのは、負担です。

それをはっきり伝えればよかったのですが、日本人の悪い癖が出て「3日目の夜は、フィンランド語講座があって、自宅に戻るのが9時になるから、それまで家に入れない」と遠回しに、2泊したら次のホストを探すようにほのめかしたのですが、そんなのが通じるわけありません。
「ノー・プロブレム。9時までどこかで時間をつぶすから」

欧米人は、大学の寮の相部屋などで家族以外の人と同じ部屋に長期間暮らすことに慣れているので、カウチサーフィンに抵抗がないと読んだことがあります。彼のレファレンスを見ると、自宅にサーファーを1週間ぐらい泊めているので、一方的にずうずうしいわけではありません。

ただ、「大変なら料理なんてしなくていい。寝る場所さえ提供してくれればいいから」と言われて、私の心は一気に冷めました。
カウチサーフィンでは宿泊のみの提供が基本です。外食したり、別々に食べるなどホストによりさまざまです。
私は基本的に毎日料理をするし、一人分を増やすだけなら、苦になりません。凝ったメニューはできないので、簡単でコストもあまりかかりないもの。ハウスのバーモントカレーやスパゲティ・ナポリタンを作って、日本に洋食が普及したプロセスについて語ったりもします。
もちろん、せっかく日本に来たのだから、グルメな食事をしたいというサーファーなら、外で食べてもらってもかまいません。
だけど「料理をしなくていいから、延泊を」という申し出は、「素泊まりでいいから値引きを」と言われた安宿の女将みたいな気分にさせます。

彼とはちょっと合わないし、断ろうかなと思い始めた矢先、事態は急転。韓国を旅行中の彼からこんなメールが来ました。
「3日後から泊めてくれる予定だったホストが急にキャンセルしてきた。1週間泊めてくれる約束だったから、日本に行くことにしたのに! ホストは代わりに宿泊代を払うと言ったが、それは断った。アンラッキーなことに、日本へのチケットはもう買ってしまっている。ついては、3日後からホストしてくれないか? 重たい荷物を持ってあちこち移動するのはいやなんだ」

もう、全速力で拒否です。
気の毒な人を見捨てる冷たい人間と思われるかもしれませんが、このメールは致命的です。
まず、金銭のやり取りは禁止されているカウチサーフィンで、ホストが宿泊費を払うと言ったのは、彼が激しく抗議したからではないか。そうではなく、本当にすまないと思って申し出て、「お金は受け取らない潔癖な俺」をアピールするために、私に知らせたのかもしれませんが逆効果です。
「1週間泊めてくれるというから日本に行くことにしたのに」。彼は、日本に特別、興味があるわけじゃないことがこれでわかりました。
それに、重たい荷物を運びたくないというバックパッカーは初めてです。

もし彼を2泊させたとして、出発する日、彼は玄関でこう思うでしょう。
「もう追い出すのか。ケチなホスト」
いくら玄関を掃除しても、このネガティブな「気」はなかなか消えず、私の運気は一気に落ちるでしょう。これが一番恐ろしかったのです。

これからは、よほど心に響くものがない限り、相手にするのはよそう。
カウチサーフィンは、やり方を間違えると、不快どころか危険なものにもなるのです。

ノーと言えないのは日本人だけではありません。タイ人もそのようです。

カウチサーフィンは現実の人づきあいの縮図
d.hatena.ne.jp