数年前には想像もしなかった毎日を送っています。
まさか外国人相手に日本語を教えるようになろうとは。
そのきっかけを作ってくれたのが、フィンランド人のヘンリク君です。
フィンランド人とつながるためにカウチサーフィンを始め、そのサイトを見て、ヘンリク君の通う学校のアコモデーション担当者から連絡があったのが3年前。初めてホストファミリーとなって迎えたのがヘンリク君でした。
せいぜい2~3泊にカウチサーフィンに対し、3週間のホームステイ。しかも未成年(18歳)の男の子を預かるというので、どうなるものかと思ったものです。
しかし実際にやってきたヘンリク君は、いかにも育ちのいい聡明な青年で、こちらが教わることのほうが多かった滞在でした。
ヘンリク君の帰国に合わせてご両親と弟さんがフィンランドから来日。
お父さんもお母さんも経営修士号取得のグローバルエリートです。特にお父さんはフィンランドの携帯電話会社ノキアの出身ですから、さぞかし波乱万丈の仕事人生を送ったことでしょう。
長男のヘンリク君に日本語を学ばせることで将来にキャリアに役立たせようと考えていることは明白でした。「好きなアニメやまんがを原文で読むために日本語を勉強する」という留学生とはまったく違います。
ヘンリク君の日本留学に対して彼らが最も期待したのは、日本語力ではなく異なる文化の人とうまくやっていくスキルの習得だと思います。だから寮ではなくホームステイを選び、来日前のメールのやりとりもお母さんが添削するほどの力の入れようでした。
お母さん公認のもと、ヘンリク君と私は友達になりました。フィンランド人のいう友達は、一過性ではなく、一生続く関係です。
そして私はヘンリク君が学んだ学校で教えることになったのですが、「あなたの学校に就職するためにあなたをホームステイさせたんじゃない。結果的にこうなった。計算高い人間だと思わないでね」と釈明メールを出しておきました。
フィンランド人男子の義務である兵役を終え、名門アアルト大学にトップ5%の成績で進学したヘンリク君。日本語の勉強も続けていて、3月末に再び来日すると連絡がありました。
フィンランド発の起業家支援イベント「スラッシュ」のアジア大会が毎年東京で開かれていますが、今年、ヘンリク君はボランティアスタッフとして参加します。
またうちに泊まるように誘ったところ、代金を払うとヘンリク君。
そういえばホームステイは有償でホストファミリーには学校から謝礼が支払われました。「私はカウチサーフィンをやっていたから、お金なんて払わなくていいから。あなたはペイイング・ゲストじゃなくて友達なんだし」と返信。
サウナ大国のフィンランド人ですから、ヘンリク君は温泉で裸になることに抵抗がありません。前回は都内の日帰り温泉で大いに楽しみました。
今回は学校もないし、1泊2日で温泉もいいかと熱海行きを提案しました。
私の英語の時制がいいかげんで、ヘンリク君はすでに温泉旅行を計画しているところに自分が割り込むんじゃないかと誤解して「せっかくの計画を邪魔したくない」とのこと。「そうじゃなくて、あなたの来日を知ったあとに計画した」というやりとりがあり、ヘンリク君、夫、私の3人で熱海に1泊旅行に行くことになりました。
こういうご褒美のような楽しみがあると、私の選んできた道はそうまちがってなかったんだと天からお墨付きをもらったような気がします。
天下の名湯は草津ですが、東京からのアクセスを考えて熱海にしました。
ヘンリク君は新幹線に乗りたがっていたし、共立メンテナンスの2LDKタイプの客室もある宿を予約しました。