翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

乾(クリエイティブ)と坤(レセプティブ)

四柱推命をいくら学んでも終わりがないのと同様、易も「これで完璧にわかった」という地点に到達することはありません。

昨年から夏瀬杏子さんに個人レッスンをお願いされ、「教える立場じゃないのに」と躊躇したのですが、日本語教師と同じく、教えることは自分も学ぶことだと考えてお引き受けしました。易を学び続ける大きなモチベーションになっています。
易を学び始めたころは、毎朝、日筮を立てて出た卦を復習していたのですが、しょっちゅう出る卦もあればまったく出ないものもあり、偏ってしまいます。そこで、易経の順に沿って一日一卦を見ていくことにしました。64日で一巡り。一年続ければ、六十四卦それぞれに5回以上触れることができます。

六十四卦のトップバッターは乾為天(けんいてん)。
陽爻が6つ重なっています。
そして二番手が、陰爻が6つ重なった坤為地(こんいち)。
易は陰と陽の組合せで占うものですから、乾為天と坤為地は陽ばかり、陰ばかりで読みにくい卦の2つです。
易経のドイツ語を経た英訳本は"The Book of Changes(変化の書)"。 漢文と合わせて英訳を見ると、ヒントが与えられます。

乾為天はクリエィティブと訳されています。
乾為天は龍の出世物語です。水中に隠れてチャンスに恵まれなかった龍がやがて姿を現し、せっせと励み天まで昇っていきます。
とにかく上昇して自分を表現したいという陽のエネルギーに満ちた卦ですから、クリエィティブと英訳されているのでしょう。

対する坤為地はレセプティブ。受容性、感受性という意味です。
乾為天がぐんぐん自分を表現するなら、坤為地はそれを受け入れて鑑賞します。
どちらか一方では偏りますが、2つが混ざり合ってこそ、3番目の卦、水雷屯(すいらいちゅん)の産みの苦しみを経て新しい命が生まれます。

教師の役割も同じです。
私は常にクリエィティブな授業をしたいと思ってあれこれ工夫しているつもりなんですが、それが行き過ぎると、教師が一方的にしゃべって学生は置いてきぼりになります。
先輩の先生からは「自分がなるべく楽をするようにして、学生に発言させて板書させなさい」とアドバイスされます。教師が答えを言うのではなく、学生が答えに到達するまで待つべきです。
経験の浅い教師は、それができません。力のなさをカバーしようとあれこれでしゃばって、レセプティブになれないのです。

乾為天と坤為地、両極端な2つの卦を使い分けてこそ、陰陽がせめぎ合って発展していくのでしょう。
そんなことができるまで、あとどれだけかかるかわかりませんが、易を学んだことで「目標はこんな姿」というのが少しずつクリアになります。


高知、室戸岬は天と地が見渡せる場所です。