翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

鬼門(東北)が恐れられる理由

中華街のお店に座っていると、時折「風水の相談をしたい」というお客さんがいらっしゃいます。

占い学校の風水講座で学びましたが、実際に羅盤を持って風水出張鑑定というレベルに達する前にリタイアしてしまいました。
風水の依頼があると「八宅風水、それとも玄空飛星派?」と身構えますが、たいていの場合は、風水というより家相だったり、引っ越し時期や方位の相談のことが多いのです。
中国の伝統風水を研究している占い師にとっては、腹立たしい事態かもしれませんが、日本では、風水、家相九星気学の境界はあいまいです。

ドクター・コパ、直居由美里先生など風水として有名な人に建築業界出身者が多いのも日本風水界の特徴です。
日本現代建築の第一人者、清家清氏も「家相の科学」という入門書を書いています。

鬼門と裏鬼門の話など、建築家の視点からわかりやすく解説されています。
家相では鬼門・東北と裏鬼門・西南は、水気や不浄を嫌うので、浴室などの水回りを作るのを凶とします。

清家氏は、中国の伝説から鬼門について解き明かします。
中国の東北数万里に度朔山(どさくざん)という山鹿あり、大きな桃の木が生え、四十里四方に枝を張っています。その枝に鬼が集まり、人間を襲います。そこで、北東を鬼門としてこの方角を避けるわけです。
この伝説の背景にあるのは、気象と歴史です。
中国にはシベリアオホーツク海方面から厳しい東北の風が吹きます。そして、漢民族の敵である匈奴は東北部の満州からしばしば漢の領土に侵攻しました。

建築的な視点からも、東北の水回りを避ける理由があります。
冬は北から風が吹くので、火の粉が飛んで危険。昔は住宅の気密性が低かったので、浴室がすぐ冷えます。さらに、東北は日当たりが不十分なので、いつもじめじめして不衛生になり家屋も湿気で傷むというわけです。
一方、西南に浴室を作ると、夏は南から風が吹くので、やはり失火の原因になります。夏の南風は江戸大火災の原因となり、風上に浴室を作ることはタブーだったのです。そして、日当たりがよくて風通しもいい西南にわざわざ浴室を作るのはもったいないという理由もあります。

ガスや電気でお湯を沸かし、乾燥機も完備した現代の住まいでは、それほどこだわらなくてもいいのではないでしょうか。鬼門や裏鬼門に水回りがあるからといって、ストレートにその家の運気が下がることはないと思います。

清家氏は2005年にお亡くなりになっていますが、人格的にも、かなり器の大きな人物だったようです。
有名なのは、テレビ番組「タモリ倶楽部」。
清家氏はかなりの鉄道ファンで、自宅に車掌車の実物そのままを設置していました。
タモリは、単なる一般の鉄ちゃんだろうと思い込み、とんでもない会話が交わされました。
「いい家だね」
「私が設計したんです。建築家なんで」
「へえ、じゃあ今度、頼もうかな」
にこにこしながら、会話を続けた清家氏はかなりの大人物です。
ロケ弁当が手違いでスタッフより先に届いてしまい、受け取った清家氏は、その代金も快く立て替えてくれたそうです。