翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

アガサ・クリスティーがなりたかった職業

アガサ・クリスティーは、年に1回、クリスマスシーズンに新作を発表していました。そこで出版社が作ったのが、「クリスマスにはクリスティーを」というキャッチフレーズ。というわけで、クリスマスが近づくとクリスティーを再び読みたくなります。

名探偵ポアロミス・マープルが登場するミステリーも夢中になって読みましたが、私が最も感銘を受けたのは、アガサ・クリスティーの自伝です。

若い頃のクリスティーの志望は小説家ではなくピアニストでした。あれほどの文才の持ち主なのに、意外な気がします。

彼女は留学までしてピアノを勉強しています。
そして、イギリスに帰国する直前、「私はプロのピアニストになれるか?」と教授に尋ねました。
クリスティーによると、教授は親切だけど嘘は言わない人だそうです。
答えはノー。「あなたは聴衆の前で演奏する気質を持っていない」と告げられるのです。

がっかりしたクリスティーですが、やはり彼女は非凡な人です。
教授に「本当のことをいってくださってありがとう」と感謝し、こう決意します。

そのことでわたしはしばらくみじめだったが、もうくよくよしまいと一生懸命に努力した。望むことが達せられなければ、そのことをはっきり認めて、愛惜と望みにくよくよする代わりに前へ進むことである。そうしたすげない拒絶が早くやってきたことが、私の将来のためになった。
アガサ・クリスティー自伝 ハヤカワ文庫)

占い師にとっては、とても考えさせられるエピソードです。
「あなたには才能がある」「彼との相性は最高」など、お客さんが聞きたい言葉だけを並べていれば、喜ばれ、感謝されるでしょう。

あえて苦い言葉を口にすることで、その人にとってもっと向いている道に目を向けてもらう。そんな姿勢の占い師のほうが、長い人生にはプラスになると思います。

アガサ・クリスティー自伝〈上〉 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

アガサ・クリスティー自伝〈上〉 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)