翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

三江線の旅

今回の島根の旅では、三江線に乗ることも目的の一つでした。
島根県江津(ごうつ)市と広島県三次(みよし)市を結ぶJR西日本の路線で、JR東日本岩泉線の廃止後、乗客が最も少ないともいわれています。
2013年の豪雨により不通となり、昨年の7月に運転再開となったのですが、フィンランド人のアンネと私が訪れたのは7月の第一週だったので間に合いませんでした。そんなわけで今回はぜひ乗ってみたかったのです。

優春翠の実家が三江線の駅のそばにあり、山陰本線大田市駅まで車で迎えに来てもらわなくてもすみます。彼女のお母さんは「本当に三江線で?」とびっくりされたそうです。
それもそのはず、大田市を西に進んで江津に行くまで時間がかかるのに加えて、三江線江の川に沿って平地を大きく迂回しながら進みます。直線距離60キロ足らずの距離が108キロとなります。車体はキハ120形の一両編成で、ゆっくりした速度で進みます。

乗客は私を入れて15名程度。そのうち半分はカメラや時刻表を手にした鉄ちゃんのようです。三江線は目的地への移動手段というより、乗ることに意味があるのです。

川沿いをゆるゆると電車が走り、車窓には山桜が咲くのどかな風景が広がります。
4月に入ったばかりの花曇りの午後。まるで桃源郷を走っているかのようです。

観光列車としてもPRすればいいのではないかと思うのですが、出雲から江津まで山陰本線で1時間10分。出雲大社をお参りしたついでに足を伸ばすには、ちょっと距離があるのでしょう。

村上春樹の『辺境・近境』には、香川県で1日3食、3日間うどんを食べ続けたり、アメリカ大陸を2週間かけて車で横断、西宮から神戸まで2日がかりで歩くといった旅行記が載っています。

辺境・近境 (新潮文庫)

辺境・近境 (新潮文庫)

アフリカのジャングルや南極へも、お金を出せばパックツアーで行ける時代だと村上春樹は語っています。

いちばん大事なのは、このように辺境の消滅した時代にあっても、自分という人間の中にはいまだに辺境を作り出せる場所があるんだと信じることだと思います。そしてそういう思いを追確認することが、すなわち旅ですよね。

移動効率だけを優先する旅はつまらない。山陰に行って三江線に乗ってみようと思えるうちは、その人の旅心は老いてはいない。そうした旅人であり続けたいものです。

ディラン先生も『時代は変わる The Times They Are A-Changin'』で、こう歌っています。

The slow one now
Will later be fast
As the present now
Will later be past
The order is rapidly fadin’.
And the first one now will later be last
For the times they are a-changin’.

遅いものもいずれは速くなる 
現在がいずれは過去になるように
秩序はあっという間に消えていく
そして今、先頭のものは、そのうち最後尾になる
時代は変わっていくのだから


発表から50年以上たっても決して古くならない名曲。
2010年2月にホワイトハウスで行われた60年代の公民権活動の指導者たちを称える特別ショーでも歌われました。

リニア新幹線より三江線に乗りたい」という時代がそのうちやって来るかもしれません。