2018年は戌(いぬ)の年。そして6月は午(うま)の月。
となると、寅(とら)の方位の吉方を取らなくては。
現代社会に生きる人にとっては、吉方取りなんて、とんでもない迷信でしょう。
私は女性誌のライターとして数多くの東洋占術の原稿を書き飛ばしているし、声がかかれば九星気学や易の講座もやっています。
商売のタネとして、吉方取りを実践したほうがいいという打算もありますが、それよりもまず、私は旅に出たいんです。
かといって、どこでも自由に行ってもいいとなると選べません。欲が深いから、どこが一番いいのか迷ってしまいます。
そんな私にとって、東洋の暦に従って「この時期はこの方位で開運」という教えがどれだけありがたいことか。
JALの「どこかにマイル」も、同じようにありがたい。占いの練習として、どこになるかを占ってみるのも一興。易の講座では教材にもしました。
吉方取りや「どこかにマイル」は旅に出る最高の口実です。
というわけで、戌の年(2018年)、午の月(6月)、寅の方位(東北東)へ。
東京からは水戸、大洗です。
一泊二日の旅はあわただしいので、水戸で一泊、大洗で一泊の二泊三日の旅。
偕楽園が混むのは梅の時期で6月の終わりの平日は閑散としていました。大洗も海水浴シーズン前ですから、混んでいません。わざわざこの時期に旅をするのは、暇を持て余した高齢者ぐらいです。
水戸光圀の隠居所、西山荘にも行くつもりでした。今後の隠居生活の参考にしたかったので。
水戸からの水郡線の時刻を調べ観光案内所で確認したところ、私が乗ろうとした列車は途中駅止まりで1時間の乗り継ぎ待ち。「その駅には何もありませんよ」とのこと。春か秋の花のシーズンでもないと見どころもあまりない感じだったので、次回の旅に回すことにしました。8年後の午の年、西山荘まで出向く気力と体力があるかどうかわかりませんが。
4年前の午の年、戌の月にも大洗を訪れました。前回泊まった大洗ホテルもよかったのですが、温泉ではありませんでした。
吉方の「気」を取るには、温泉につかって、大地の恵みを全身に取り入れることが効果的です。
というわけで「かんぽの宿 大洗」を予約したのですが、車で行かないとけっこう大変でした。大洗駅からバスに乗り、照り付ける日差しの中、宿まで歩き「送迎サービスのある宿にするべきだったかも」と後悔しました。
でも、宿の部屋からこの風景を見ただけで大満足。
例年にない早さの関東の梅雨明け。
澄み切った空と海、そこにかかる赤い海門橋。この光景を部屋の窓から眺めるだけで、大洗に来た甲斐がありました。
村上春樹がラオスを旅した時、乗り継ぎ地のベトナムで「ラオスにいったい何があるというんですか?」と質問されたそうです。
村上春樹がラオスから持ち帰ったのは、いくつかの光景の記憶だけ。
「それらの風景が具体的に何かの役に立つのか、立たないのかわからない。ただの思い出として終わってしまうかも。しかしそもそも、それが旅というもの。それが人生というものではないか」と村上春樹は書いています。
単に年を重ねるだけでは退屈でやりきれない。こうして役に立つのか立たないことを繰り返して、年月が過ぎていきます。
「次はどこに行こうか」と悩むなら、東洋占術にゆだねてみるのも一つの方法だと思います。