翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

太陽のサーカス

22年ぶりにシルク・ドゥ・ソレイユの舞台を観ました。

前回は40歳の誕生日で、演目は「O(オー)」。ステージ全体がプールになるという大胆な演出に圧倒されたのを覚えています。

別の演目をまた観たいと思いつつ20年が過ぎ、2020年の新型コロナで公演はすべて中止。シルク・ドゥ・ソレイユは経営破綻に追い込まれました。それでも同じ年の8月には経営権を得た会社が再建に乗り出し、2021年6月からは公演を再開しています。

 

そして「アレグリア」の日本公演。発売と同時にチケットを買いました。

 

そうして迎えた公演日はまさかの豪雨!

不要不急の外出は控えるべきでしょうが、ネットで確認するとお台場での公演は決行す。電車が遅れぎみなので早めの到着を呼びかけていました。これは行くしかありません。登山用のレインジャケットを着込んで4時過ぎに家を出ると、新宿は帰宅ラッシュ。電車が止まるかもしれないから早めに仕事を切り上げる人が多いのでしょう。逆方向は空いていました。

最悪の場合は帰れなくなって、お台場のホテルも満室で劇場で夜を明かすことになるかも。劇場といっても、この公演のために設営されたテントなんですが、日本の天候にしっかり対策しているはずです。

こういうとき、断食経験があると気楽です。1食や2食抜かしてもどうってことはないし、むしろ健康にいいぐらい。雨風がしのげる屋根さえあれば、翌日に電車が動き出せば帰宅できます。

 

会場はほぼ満席。電車は遅れぎみですがちゃんと動いているから、ほとんどの観客は予定通り来たのでしょう。

アレグリア」は芸術的・演劇的なサーカスといったところでしょうか。シルク・ドゥ・ソレイユの設立者は火喰い芸の大道芸人空中ブランコやトランポリンなどアクロバティックな動きが中心です。軽業師ともいえますが、団員には元体操選手が多いのか皆さん姿勢がすばらしくストイックな印象です。「O(オー)」は水中での演技が多かったのでアーティスティック・スイミングの選手が多数参加していると聞きました。

 

演技に見入るとともに、コロナの時期、この人たちはどう過ごしていたんだろうとつい考えてしまいます。一時解雇とはいえ、仕事を失い、おいそれと転職できない特殊な職です。

そして一般の演劇なら年齢を重ねても役柄はありますが、体の限界まで使う演技はいくらトレーニングを重ねても引退の日がいずれ来ます。ようやく来日が実現して、ステージの上で演じるのはどんな気持ちなんでしょうか。

そういうことをすべて覚悟の上で、入団のオーディションを勝ち抜き、舞台へ。「シルク・ドゥ・ソレイユ」はフランス語で、日本語にすると「太陽のサーカス」。どんな対価を払っても太陽をの高みに到達したいという人々です。

 

外の雨を忘れるほど、舞台に吸い込まれていき、フィナーレへ。

最後の挨拶は写真撮影OKでした。頭上のネットの上でダイナミックな空中ブランコが繰り広げられ、最後は一人ずつ回転しながらネットに落下し、華麗にポーズを決めました。

ほとんどの観客はずっとスマホを構えていましたが、私はこの一枚だけ。スマホのレンズ超しだと、団員たちのリアルな表情や息遣いが伝わってきません。写真を撮るより、悪天候の中、ステージを無事に終えた彼らと安堵の気持ちを共有したかったのです。

 

ヘルシンキの最後の夜、カウチサーフィンで知り合ったスザンヌ、ノーラ、マイヤと日本料理店でお別れ会。夏の明るい夕暮れに立つ3人の姿を撮影したかったけれど、そんなことをしたらこのすばらしい瞬間が壊れてしまいそうで、そのまま別れました。当時はスマホではなかったので、今ほど気軽に写真を撮っていなかったのです。あれからほぼ10年たちますが、あの日の美しい夏の夕暮れを今でもよく覚えています。

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