翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

四十九日を終えて

アガサ・クリスティの『葬儀を終えて』。

富豪の葬儀で親戚が集まります。少々頭の弱い妹が「兄は殺されたんでしょう?」と無邪気に言い放つことからストーリーが始まります。

 

 

母が昨年の12月16日に亡くなりました。

高齢の父は肺炎で入院中。頼りになる長男だった兄は一昨年の夏から闘病中。

父から「この家でまともなのはお前だけ。葬式を二つ出してくれ」と言われました。

 

高校卒業と同時に家を出て、好き勝手に生きてきた私。結婚はしたけれど子供は作らず、仕事はずっと自由業です。

兄はまともな会社に就職して結婚し、子どもも3人。実家のことは兄に任せておけばいいと思っていたのに、すべてが崩れてしまいました。

 

母が入所している施設に、看取りまでお願いしていました。

パーキンソン病で体の自由が徐々に失われて、父と兄の考えで胃ろうを選択しました。ドライな私は「母はさっさと死にたいだろう」と思ったのですが、ウェットな父と兄は

「どんな形でも生きていてほしい」と願いました。

 

今は「回復の見込みのない高齢者に胃ろうはいかがなものか」「北欧に寝たきり老人がいないのは、自然死を選ぶから」などの報道もあるのですが、数年前の日本では医師の言われるままに胃ろうを選択せざるを得ない状況でした。

 

自宅での介護がむずかしくなり、施設にお願いしてから母の頭は一気に衰えていきました。「家族から見捨てられた」という絶望感もあったのでしょう。でも、家族はそれぞれの事情を抱えていたのです。高齢の父の老々介護は限界に達していたし、兄と私にはそれぞれの家庭があります。

 

施設に入れた時点で、私の中では母の人生は終わったも同然だと思っていました。

 

栄養を受け付けなくなったと施設から連絡され、仕事のあれこれを片付けて帰省。5日目に母が亡くなり、それからは通夜、葬儀、初七日と各種手続きに追われました。お正月を挟んだのであわただしさも加速されましたが、年末年始の休みと重なったので、結果的に歯仕事先にあまり迷惑をかけずにすみました。

 

12月では喪中のはがきを出すのもタイミングが悪いので、年賀状を受け取りました。

寒中見舞いで母の死去を伝えると「さぞお力を落としでしょう」という返信がありましたが、とにかく忙しくてあまり実感がわきませんでした。

 

母が死んだということをリアルに感じるようになったのは、四十九日の法要後。

 

意に反して専業主婦になってしまった母は、私が仕事をすることをいつも喜んでした。自分の死で娘の仕事の妨げになってはいけないと年末の死を選んだのかもしれません。

 

クリスティの『葬儀を終えて』で放たれた真実の言葉。

母の四十九日を終えて、そろそろ私にも母からのメッセージが聞こえてきそうです。

 

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門司駅の線路の行き止まり。「線路は続くよ、いつまでも」じゃなくて終わりがあります。

 

塀の中も外も似たようなもの 『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』

 ネットフリックスで近藤麻理恵の片づけシリーズにハマっていますが、もともとは連続ドラマの『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』を見るのが目的でした。

 

舞台は女子刑務所。お嬢様育ちでビジネスウーマンのパイパーが若気の至りで犯してしまった罪(麻薬の運び人)を償うために刑務所に入ります。裁判でとことん争うという道もあったけれど、素直に認めたほうがいいという判断したため。実話に基づくドラマです。

  

 

刑務所にはさまざまな背景を持つ女性がいて、少しずつエピソードが紹介されていきます。アメリカのドラマは複数のシナリオライターがいるため、こういう重層的な構造も可能なのでしょう。

 

それぞれの特技によって仕事が割り振られるのですが、スピリチュアリストのジョーンズは刑務所でヨガの講師をしています。そして、入所したばかりのパイパーにこんなアドバイスを与えます。

Do you know what a mandala is?

曼荼羅って知ってる?

The Tibetan monks make them out of dyed sand laid out into big, beautiful designs.

チベットの僧は色のついた砂で大きくて美しい曼荼羅を描く。

And when they're done, after days or weeks of work, they wipe it all away.

何日も何週間もかけて完成したら、すべてを消し去る。。

Try to look at your experience here as a mandala.

ここでの経験も同じようなものだと考えてみれば?

Work hard to make something as meaningful and beautiful as you can.

意味があって美しいものをがんばって作る。

And when you're done, pack it in and know it was all temporary.

そして完成すれば、片付けて、すべては一瞬だったとわかる。

You have to remember that. It's all temporary.

覚えておきなさい。すべては一瞬のこと。

 

この教えに感動して、何度も繰り返し見て英文字幕を書き取りました。

 

すべては一瞬のこと。パイパーの刑期は15か月の予定。無事に務め上げれば、晴れて恋人と結婚もできるし、ビジネスにも戻れます。

 

どんなにつらいことでも、いつかは終わります。そして終わってみればあっという間というのをこの3年間で私も体験したから、心が揺さぶられました。

 

刑務所ほど過酷ではありませんが、日本語教師という仕事。しかも常勤ではなく週3日の非常勤ですが、自由業で気ままに働いてきた私にはこの数十年で一番苦しい3年間でした。

 

bob0524.hatenablog.com

 

流動性の激しい職場なので、すでに古株となっていますが、いまだに満足な授業はできません。そして、趣味で日本語を習いに来ているような日本オタクの学生が、帰国してから日本語を学び続けることは少ないでしょう。

砂に書いた曼荼羅と同じ。一生懸命やっても、すべて消え去ってしまう。

だからといって手を抜いてはいけない。意味のある美しい曼荼羅を描きたい。

 

タイトルの「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」。

ブラックは誰が着ても無難な色ということから、ニューブラックは「新しい定番」という意味があります。そしてオレンジはアメリカの囚人服の色。刑務所にいようが、娑婆にいようが、生きることの本質は変わらないというパンチの効いたタイトルです。

 

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仏教国のタイでは、ホテルのプールにも仏像が鎮座しています。

所有から解放される

海外で近藤麻理恵の『片づけの魔法』が受けるのは、禅とか、わびさびといった日本文化が背景にあると思われているからでしょうか。

 

bob0524.hatenablog.com

 

 

日本語学校で私が教えているデンマークの女学生、トーベはかなり優秀。デンマークでかなり日本語を勉強してきたのでしょう。教師に詰め込まれたというよりも、自分の考えを外国語で表現することに興味があって独学を重ねてきたとのこと。

 

 彼女は日本語能力だけでなく、鋭い観察眼を持っています。東京でホームステイを体験し、こんなことを言いました。

「神社に行ったり、茶道を体験すると、日本の美に触れることができます。ミニマリズムの美。だけど、日本人の家庭は物が多すぎです」

 

これは、痛い所を突かれました。

神社や茶室の整然とした空間。伝統的な日本家屋は布団や押し入れにしまわれ、何も置かれていません。

ところが現代の日本人の家といったら…。

 

2013年にフィンランドを旅した時、フィンランド人から「日本で片づけをアドバイスする本がベストセラーになっているって本当?」と聞かれたことがあります。近藤麻理恵の本のことを言っているのだろうとすぐにわかりました。

 

フィンランドじゃそんなの誰も読まないだろう」と思ったのは、カウチサーフィンでお邪魔したフィンランドの家がどこも物が少なかったから。食器にしても、シンプルなイッタラの大皿、小皿、スープボウル、それにコーヒーカップとグラスが家族とお客の人数分あるだけですから、食器棚もすっきりしています。さして料理も好きじゃないのに和洋中の食器が雑然と詰め込まれた我が家の食器棚が恥ずかしくなりました。

 

フィンランドを代表するブランド、マリメッコは鮮やかで大胆なデザインのアイテムが多いのですが、あれはシンプルで広々としたインテリアの中でこそ引き立ちます。

 

同じ北欧の国であるデンマークから来たトーベが東京でホームステイして物の多さにびっくりするのもわかります。

 

ネットフリックスのMarie Kondoの片づけ番組で出てくるアメリカの家は、さすがに大きいのですが、その分、溜め込んだ物のボリュームもけた違いです。

 

第2回目のアキヤマ・ファミリー。名前からわかるように日系の家族ですが、リタイアを目前にして家中にあふれる物によって心穏やかな引退生活なんて送れそうにないと、近藤麻理恵に助けを求めます。

 

奥さんの服の量が尋常じゃありません。近藤麻理恵がこれまで見た中で一番多いというほど。

奥さんはこう語ります。

For me, clothes are a passion, an obsession, recreation.

私にとって洋服は、情熱と執着と、リクリエーション。

And, you know, whenever Ron and I would fight, shopping was a diversion, it was way to, you know, just calm down, de-stress.

ロン(夫)と喧嘩をしたときはいつでも、ショッピングは気晴らしになり、気持ちが落ち着くし、ストレスもなくなる。

 

手頃な値段で簡単に服が買えるのは日本もアメリカもおなじ。

フィンランドは、郊外に住んでいるとショッピングしようにも店がそんなにないし、物価が高いのでおいそれと買い込めません。人件費が高く通販も割高です。買い物より、森や湖、サウナで気晴らしをするのでしょう。

 

一方、夫のロンさんは野球カードの収集家。子供たちと30年以上かけて1000枚のカードをコレクションしました。

片づけのプロセスを通して、カードを所有することに意味があるのか、大切に保管すべきか、感謝して手放すべきか考えるようになります。そして10%、つまり100枚あれば十分で残したカードを大切にすべきだという結論に達します。

 

最初、ロンさんは片づけにあまり乗り気ではなく、奥さんに引きずられてといった感じでした。現状維持でいいじゃないか、変えなくてもいいと言っていたロンさんが片付け通じて残りの人生の送り方を再考するようになったのが印象的でした。

 

私自身がリタイア後のための片付けを始めなくてはいけない年齢にさしかかっています。

コレクションしているボブ・ディランザ・バンドのCD、海賊版も含めたら一体何枚あることやら。今はネット上で視聴することもできますし、所有していることで満足するのではなく、本当に気に入った音源だけを選んでおかないと、老人ホームの入居の際に困ります。

 

ネットフリックスの視聴、月800円でここまで楽しめるとは。そして、一番いいことは、見終わったら削除、また見たくなったらダウンロードすればいいこと。DVDみたいに所有しなくていいことです。

 

 

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小泉八雲の旧居の書斎。目を楽しませるのは庭の風景だけで、室内にあるのは机といすだけでした。

 

ネットフリックスでMarie Kondoの『片づけの魔法』を見る

新年を機にネットフリックスに申し込みました。

ベーシックプランなら月800円。しかも最初の1か月は無料体験できます。

テレビじゃなくてタブレットの視聴にしました。複雑化したテレビはリモコンでスイッチを入れて切り替えるのが面倒。短い時間とはいえ切り替えに時間がかかるのもストレスになりますが、タブレットならすぐ視聴できます。

 

ネットフリックスを選んだのは英語の勉強になると思ったから。

海外のドラマや映画はまず日本語の字幕で見て大意をつかみ、気になるシーンは英語の字幕にします。10秒さかのぼって再視聴できるのも便利な機能です。アマゾンプライムやHuluではこういうわけにはいきません。

 

『オレンジ・イズ・ニューブラック』というアメリカのドラマにハマっていたところ、近藤麻理恵の『人生がときめく片づけの魔法』がリアリティ番組として登場。

さっそく第1回目を見ました。


How To Store Neckties | Tidying Up with Marie Kondo | Netflix


Tidying Up with Marie Kondo | Official Trailer [HD] | Netflix

 

片づけは tidying up、ときめきは spark joy。

第一回目に登場するのは、共働きで4歳と2歳の子供がいる夫婦。夫はきれい好きなのに奥さんは片づけが得意じゃないため、夫婦仲が少しぎくしゃくしています。

 

初訪問してまずやったのは、「家にあいさつ」。まず家に感謝の気持ちをささげて片づけを始めると説明します。

適切な場所を探して目を閉じて、無言で家に語り掛けるコンマリ。夫は「いいもんだ」と言い、奥さんの目には涙が。こういうところがアメリカ人には新鮮なのでしょうか。

そして、洋服をすべて出して一着ずつ手に取って、お決まりの質問「Does this spark joy?」。spark joyは「子犬を抱いた時のようなあたたかくてポジティブな気持ち」と説明。そして、洋服を手放す時は無造作にゴミ箱に入れるのではなく「Thank you」と声をかけるようにアドバイスします。

 

「すべての物に命がある」「物の声を聞く」という日本的なアニミズムが、大量消費に慣れたアメリカ人にとっては衝撃的だったのでしょう。

 

家の中が片づいてくると、奥さんは嫌いだった掃除も洗濯も楽しめるようになりました。そして「マリエは私の人生を変えた」とまで言います。

 

片づいた空間の空気が好きになり、それがモチベーションになり、ますます片づけたくなる。その境地に達すると「掃除はセクシー」と感じられるそうです。

「少しぐらい片付いていなくてもいいや」と放置して、どんどん無秩序な状態が広がり、汚部屋になっていくのと逆の流れです。

 

ネットフリックスの『片づけの魔法』はシーズン1だけで6本あります。第1回目のタイトルは『幼児と一緒にお片づけ』。他に『理想の引退生活』『ダウンサイズ』『哀しみからときめきへ』と魅力的なタイトルが続きます。

活字で読むより、片づけのモチベーションがぐっと上がりそうです。それに英文字幕で見て英語の勉強もできる一石二鳥のコンテンツです。

 

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リゾートホテルにチェックインしてときめくのは、ときめかない物が視界に入らないから。

 

思うようにいかない時こそ、運をつかむチャンス

占いをあれこれ学んだのは、女性誌の原稿料を稼ぐため。でも、それ以上に「開運したい」という思いがありました。

だから、占い学校に入って最もがっかりしたのは、占いをずっと学んでいるのにちっとも開運していない人たちを目の当たりにしたことです。

まあ、こんなことを書く私も、子どもを持たない人生を選びましたから、伝統的な東洋占術の開運の基準の一つである「一族繁栄」からすると運の悪い人間ですが。

 

それはさておき、世の中には占いなんてまったく興味がなくても、みごとに開運している人もたくさんいます。

 

数日前にネットでバズっていた「日本人がNASAで働くには」。

 

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日本人でNASAの研究所で働けるなんて、ずば抜けて優秀な方です。

しかし、いくら優秀でも運が味方しなかれば夢はかなわなかったでしょう。

 

日本国内で開かれる宇宙関係の学会に、NASA関係者がやって来るという情報を得て、学会に参加。単なる参加者ではなく、発表もします。

そして、思い切って「来月、学会でアメリカに行くので見学させてもらえませんか」と声をかけます。

「今は忙しいからちょっと無理」と断られ、異国の地で見ず知らずの人間に対する当然の反応だと納得しつつも、長年の夢が絶たれたように感じ大きなショックを受けます。

 

それでも解散前の最後の日に、もう一度「このまま帰国しますか」と声をかけます。

そして、「夜まで東京観光する」ということで案内することに。

この方のすばらしいところは、「自分からは見学を申し込んだのに、いま日本に来ているゲストをもてなさないのはフェアじゃない」という考え方。そして、東京案内中は一切、欲を出さず見学希望の話を出さなかったこと。

 

「欲しいものは欲しいと言わなければ手に入らない」というのも一面の真理ですが、露骨に見返りを求めると運を逃がします。この方の場合は、一度「欲しい」と言って、あとはあえて口にしていません。

bob0524.hatenablog.com

 

 そして数日後、NASAからお礼のメールが届きます。

「ホスピタリティに感動した。見学に来たければアレンジするから教えてくれ」

 

少しでも損をしたくない、得られるものはすべて欲しい、そんな貪欲な人間が得られるものは少ない。思うようにいかない時こそ、無心になり目の前のことに淡々と誠意をもって取り組むこと。

 

占いの理論書を隅々まで読むのもいいですが、ネットにあふれるさまざまな体験談にも貴重な開運のヒントが埋まっています。

 

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