翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

AI時代に働き続けるためには

50代半ばを過ぎて、職業生活のゴールが見えてきたはずなんですが、「一億総活躍社会」の掛け声により60代だけでなく70代になっても働かなくてはいけないのかもしれません。「ゆとりの老後」は、これからの日本では一部の特権階級だけに許される贅沢なのでしょう。

 

しかし、いくら「働け」と言われても、これからの時代、仕事はどんどんなくなっていきます。

 

私の本業であるライター業はそろそろ消えつつある仕事。雑誌という媒体自体が毎年縮小しています。

副業の日本語教師も、教科書通りのことしか教えないのなら、そのうちAIに取って代わられるでしょう。

 

このブログを読んで、これからの仕事について考えさせられました。 

reon5653desu.hatenablog.com

教師については、こんなことが書かれています。 

これからの教師に求められるのは生徒が楽しみながら学べる授業を展開できるとか、なかなか興味を持ちにくい科目でも生徒の興味をグワッと惹きつけられるとか、勉強に対してモチベーションが上がらない生徒をうまくサポートできるといった、より人間味があるとか、人の気持ちがわかるといったより人間らしい能力です。

 

まさにそうです。

日本語学校で作文のクラスを教えていると、「ひらがなをやっと覚えたのに、次はカタカナ! ひらがなだけでいいじゃん。漢字なんか絶対やりたくない」という学生に日本語を書かせるというアクロバティックな指導をしなくてはいけないこともあります。

日本で働きたいとか、日本語を使って仕事をしたいという動機があれば、学生のモチベーションも高いのでしょうけれど、私の働いている学校に来る学生は物見遊山を兼ねた短期留学生が大半です。

6週間1クールで一通りテーマを決めて教材を作っているものの、学生に合わせて少しずつ手直しする必要があり、いつまでたっても楽ができません。

 

先日、プライベートレッスンを担当しました。

通常のクラスは10人前後のグループレッスンですが、1対1のプライベートレッスンを希望する学生もいます。

30代のスイス人女性でした。10代後半の学生が多い学校なので、グループレッスンはあまり楽しくないのでしょう。そして世界一物価が高いと言われるスイスですから、プライベートレッスンの費用も割安に感じるのでしょう。

 

一通り自己紹介が終わったら、ピンポイントで知りたいことを質問してきました。

・ショッピングで、服を試着したい時はどう言えばいいか。

・レストランで会計したい時はどう言えばいいか。

・お寺と神社は何が違うのか。

・日本人はみんな忙しそうなのに、こんなに面倒くさい漢字をいちいち書いているのか。

最後の問いに対しては、タブレットを使ってローマ字入力を見せました。baraと打って薔薇という漢字が出しながら「漢字を書く練習よりも、漢字を読めるようになることが大切」と説明しました。

 

3時間のプライベートレッスンを持たせるのには、日本語教師養成講座で学んだ文法や教授法より、幅広い知識や対応力が必要だと痛感しました。

 

ボブ・ディランは「どんなことがあっても絶対に消えない仕事」は、"male prostitute, escort"だと言っていました。

「ジゴロ」「男娼」「ホスト」…AIにはできないような対人スキルが要求される仕事です。

bob0524.hatenablog.com

 

いつになったらやすらかなリタイア生活が実現するのか。

自分が仕事をやめる、やめないを決めるのではなく、社会からお声がかからなくなったらそれが引退のタイミング。そう考えて、四苦八苦しながら続けていくしかありません。

 

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この4月に訪れた呉の森田食堂。安くておいしいメニューがずらりと並び、地元のおばちゃん二人が切り盛りしていました。時代が変わっても、こんな食堂は生き残るでしょう。

うまい棒とプッチンプリンでおもてなし

我が家に滞在中のフィンランド人のトーマス君。

毎日YouTubeで日本のテレビを見ていただけあって、妙に日本通です。「フィンランドのテレビなんて全然おもしろくない。日本のテレビは最高。コマーシャルもすごい」と力説します。テレビをあまり見ず、レニングラードカウボーイズばかり見ていた私と足して2で割ると平均化するのでしょうか。

 

日本滞在を少しでも楽しんでほしいと、何が食べたいのか聞き出そうとしても、遠慮してなかなか好みを言いません。

ようやくプリンが好きだとわかったので、あれこれおいしそうなプリンを買ってデザートとして出していました。

一緒にコンビニに行き、「欲しいお菓子を選んで」とうながしたところ、「うまい棒がある! 一度食べてみたかった」と目を輝かせました。

うまい棒って、1本10円なんですけど。

お次はプリン。スイーツ売り場で「プッチンプリンだ!」とうれしそうに手に取ります。

なんて安上がりなんでしょう。

 

ホストファミリーは朝食と夕食を提供することになっています。凝った料理を作っても、果たして喜んでいるのかどうか、わかりません。何を出しても「おいしかったです。ごちそうさまでした」と礼儀正しく挨拶します。

レパートリーも尽きてきたので、オムライスを作ってみました。和洋折衷料理の代表だし、トーマス君はオタクだけどメイドカフェには行きそうにないタイプなので。

 

もちろん、オムライスのことも知っていました。「ケチャップで字や絵を書くんだよね」というので、「ここはメイドカフェじゃありません。自分で書きましょう」とケチャップを渡しました。

 

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カタカナは完璧に書けるようです。ひらがなもおぼつかないまま来日する学生が多い中、トーマス君は立派なものです。

 

ホームステイの学生を受け入れると、あれもしてあげよう、これもしてあげようとはりきります。そして、手をかけたり高いものを出せば喜んでもらえると考えがちです。

 

日本流のおもてなしは、相手の要望を聞くことなく、相手の気持ちを忖度してもてなすことだと言われますが、それって本当に喜ばれるのでしょうか。

日本人同士だって気持ちが通じないことがあるのに、訪日外国人へのおもてなしは、けっこう空振りに終わっているのかも。かといって、言われたことしかやらないというのも味気ないし、いちいちお伺いを立てるのも相手を気疲れさせます。

 

人口動態からみて、これから衰退の一途をたどっていきそうな日本。訪日外国人相手の観光ビジネスは数少ない成長分野ですが、おもてなしはけっこうむずかしいものだと痛感しています。

選択の幅を広げて、起こったことを受け入れる

老後の海外滞在を目論んで、日本語教師の資格を取りました。語学も学校も大嫌いだったはずなのに。

 

「資格さえ取っておけば」と思っていたのに、現場で経験を積まなければ資格は何の役にも立たないことを知り、意を決して日本語学校の非常勤講師に。

長めの旅行のために休もうと思えば代講を頼んで休むこともできるのですが、担当コマ数を増やすのをを断り続けているので、なかなか言い出しにくい。気がつけば2泊程度の国内旅行ばかり出かけるようになりました。

教室では外国人に囲まれ日本人が私一人という状況ですから、わざわざ海外に行こうという気もなくなりつつあります。海外旅行もおっくうなのですから、海外滞在なんてとんでもない…。

 

人生のビジョンとか、計画とか、あってもなくてもどっちでも同じということでしょうか。

 

宗教人類学者の上島啓司氏の『生きるチカラ』(集英社新書)を読んでいると、「人生なんでもあり」というおおらかな気持ちになります。

 

こんな話が紹介されています。

広告代理店のアートディレクターになりたいと願う女性。すぐに仕事が見つからないので、エアロビクススタジオでアルバイトをすることに。そこで偶然、靴メーカーの社員と知り合い、靴のデザインのプロジェクトにフリーランスで参加。手腕が認められ、正社員になるように誘われたけれど、断ってしまいます。

その後も、おもしろそうな仕事に就くチャンスがあったのに、広告代理店のアートディレクター以外の道を選ぶことができず、年月だけを重ね、今はキャリアの行き詰まりを感じています。

 

上島氏からのアドバイス

たしかに自分の望む進路は大切で、あくまでもそれにこだわる気持ちも理解できないわけではない。しかし、それは自分に訪れるあらゆるチャンスを妨げてしまうことでもあるということを、よく頭に入れなければならない。

 

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いったん決めたら、多少のことがあっても投げ出さないことが美徳とされていますが、そんなに一途にならなくてもいいのでは。

 

東京オリンピックまでは、日本語教師を続ける」「将来は沖縄で暮らす」と目標を立てているものの、達成できてもできなくても、どっちでもいい。夏は北海道で暮らしているかもしれないし、日本を巡る状況が変われば、日本語学校もどうなるかわかりません。6年前、東日本大震災が起きた年は、留学生たちが一気に帰国して休校状態に追い込まれた日本語学校もあったそうです。

 

再び上島氏からのアドバイス

自分を取り巻く状況はどんどん変化しつづけていく。それに従ってわれわれも変わっていく。それゆえ、自分が決めたことなどちっぽけなもので、そんなものはいつでも捨ててやるくらいの気持ちでいなければならない。

 

このあたり、日本語学校の学生たちから教師の私が学んでいます。

オタク趣味が高じてあこがれの日本にやってきた彼ら。日本語学校に通ってはいるものの、それを将来のキャリアに活かそうと考えている学生はどのくらいいるのやら。作文のテーマの一つに「将来の夢」があるのですが、「そんなの時期が来てみないとわかんないよ」と反応する学生が一定数います。

「ギャップイヤー」で日本に留学している学生たちの多くは、見聞を広めるために日本に来て、とりあえず日本語を学んでいるけれど、将来に活かそうとまでは考えていないようです。日本語学校なんか通わずに秋葉原に入り浸っていたかったけれど、親を納得させるために、とりあえず短期留学という形を取っているのかもしれません。

 

まあ、それでいいんじゃない、じゃあ、大好きなアニメの話でも日本語で書いてみる?とテーマを変えます。

国に帰って日本語の動詞の活用を忘れてしまっても、自分の大好きなことを大好きな国の言葉で書いたという記憶が残ればいいのですけど。そして願わくば「大好きなことをした」という記憶が、次の選択の幅を広げてほしいものです。

 

多拠点居住とチャンプルー文化

沖縄旅行から帰って来て1ヶ月。沖縄熱が続いています。

JALの「どこかにマイル」でたまたま那覇に行ったわけですが、旅行ではなく沖縄で暮らしたいという気持ちになりました。

 

「多拠点居住」という言葉を知ったのは元ニートのphaさんやジャーナリストの佐々木俊尚氏の記事から。phaさんは東京と和歌山の熊野のシェアハウス、佐々木氏は東京と軽井沢、福井を行ったり来たりして暮らしているそうです。

 

恩納村の海でシュノーケリングをした際、インストラクタの方は東京出身で、奇遇なことに元ご近所の方でした。そしてもうお一人は札幌出身。お二人とも、沖縄の海に魅せられて移住したのでしょう。

マリンスポーツのインストラクターといった沖縄に特化できる技能があるわけでもないし、完全に移住するのはハードルが高いので、冬の寒い時期とスギ花粉のシーズンだけ沖縄で暮らすというのはどうだろうと夢は広がります。

東京の家はそのままキープしておき、半分ホテル化。長期滞在したい人を泊めて沖縄滞在の費用の足しにできないものか。

エアビーアンドビーという手もありますが、不特定多数の人が出入りするのは不安です。管理組合から苦情も出そうですし。

留学生のホームステイはホストである私が東京にいないと受け入れることができませんが、日本語教師を続けていけば、数ヶ月単位で東京に滞在したいという元教え子のネットワークができるかもしれません。いますぐというわけでなく、数年先の話です。

 

沖縄に移住して現地に溶け込むのはかなり大変そうですが、多拠点居住の一つなら、けっこう居心地がいいのではないでしょうか。

数年前までは、「夏はフィンランド、冬はアジアのリゾート」と夢想していたのですが、パスポート不要の北海道や沖縄は気楽に行き来できます。日本語学校の教室では、外国人10人ほどに日本人は私一人という状態なので、海外に出かける気がだんだん失せてきました。

 

そもそも、日本語教師の資格を取ろうと思い立ったのは、将来、フィンランドに滞在するためだったのですが、歩き出してみれば気分も目的地も変わってしまうのはしかたがないことです。むしろ「これじゃなきゃ絶対にダメ」と思い込まないほうがいいのでは。

 

 沖縄でヘリオス酒造の工場見学に出かけてみました。もともとはラム酒を製造していたので、木の樽で泡盛を熟成させます。そのため、泡盛はうっすらと琥珀色になります。

 

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もともと泡盛は東南アジアのお酒。原料はタイ米です。

ヘリオス酒造のガイドさんは「冷夏でコメ不足となった1993年、緊急輸入したものの大量に余ってしまいましたね」と苦笑しつつ説明していました。

 

その夜、居酒屋でヘリオス酒造の泡盛を飲もうとしてメニューを見たら「泡盛」としか書いていません。「これはどこの泡盛ですか」と聞いたところ、「いろいろ混ぜています」とのこと。

「いくらチャンプルー(混ぜ合わせる)文化といっても、お酒も混ぜてしまうとは!」と思っていたら、那覇の最終日に立ち寄った忠孝酒造の「マイブレンドバー」では、新酒や古酒、度数違いの泡盛を自分好みでブレンドできます。

 

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住まいも仕事も人間関係も、適度に混ぜ合わせて退屈しないで生きていきたいと泡盛でとろんとしてきた頭で考えました。

 

新たな王子様現る

先週からフィンランド人のトーマス君が3週間の予定で我が家にホームステイしています。

Tuomasというファーストネームは、英語のThomasのフィンランド語版で発音はトゥオマスだろうと思っていたのですから、のっけから「はじめまして、トーマスです」と流暢な日本語で自己紹介されました。

2年前のヘンリク君、去年のソフィアさんより日本語は上手です。1年間、独学で勉強したとのこと。そして毎日「ガキの使い」の動画をネットで見ているそうです。弱冠17歳で高校の1年目が終わったばかり。これはなかなかの逸材かも。

 

通学のためにJRの券売機でSuica定期券を買うのを手伝い、近所の神社を参拝。スーパーに寄って朝食に食べたい果物やパン、シリアル、お菓子などを選ぶように言ったのですが、そこは奥ゆかしいフィンランド人らしく「僕は何でもいいです」と好みを言いません。

そんなところにスポーツクラブ仲間の奥様と出くわしました。「また王子様みたいな男の子連れて…」と奥様。

そう、ヘンリク君に続いて二人目の王子様です。

 

トーマス君が本屋の場所を聞くので駅前の本屋に連れていきました。漫画コーナーで手に取ったのは『銀魂』。英語版は10ドルするそうですから、400円はお買い得だそうです。あとは『山田くんと7人の魔女』を買いたいとのこと。やはりオタクか…。

「私のメインの仕事はライターです」と自己紹介すると、一瞬、トーマス君は漫画家と誤解して目を輝かせました。「ちがいます、私は漫画を描きません。日本語だけ書きます」と言うとがっかりされました。

 

日本語に慣れているのは、来日2回目ということもあるのでしょう。

前回はお父さんと二人で東京と京都を1週間旅行したそうです。もしかしたら、お父さんもオタク?

bob0524.hatenablog.com

 

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 我が家の玄関先にて。

しっかりしたトーマス君ですが、写真に撮ってみると、あどけなさが残っています。こんな子を見ず知らずの日本人の家に託すなんて、お母さんは心配じゃないんでしょうか。日本語学校がホームステイの受け入れ先の自宅まで出向いてチェックしているわけですが、学生たちからはホームステイのトラブルの話もよく聞きます。

 

「ホームステイの学生にいかに接するべきか」で夏瀬杏子さんに出してもらった卦は風天小畜の第二爻。

 

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王子様みたいだからといって、あれこれ過保護にするのではなく、風天小蓄で「少しくとどめる」程度にしておくのがいいのでしょう。

外国人学生のホストファミリーになるのは、いろいろと面倒なこともあるのですが、年に一度なら、いい刺激になります。

風水では、風通しが悪く、気がよどんだ家は凶。自然界の風だけでなく、来客も風のようなもの。トーマス君の滞在で、我が家に新しい風が吹き込まれました。