翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

定職なんて欲しくない

 学校を卒業したからには、定職に就かなくてはならないと、会社に入りました。

いやだったけれど、そういうものだと思い込んでいたのです。

フリーランスという働き方があり、それで何とか食べていけそうだと気づいたのが30歳の時です。

50代半ばを過ぎ、フリーランスのライター業に加えて日本語教師を始めました。

前回「3年目の春を迎えた」と書いたものの、実態は週2~3日の非常勤ですから、週5日の常勤で3年目の先生の経験値にはまったく及びません。

「もっとコマ数を入れたほうが教え方も上達する」とアドバイスされたこともありますが、週5日も教えていたら、3ヶ月も持たなかったと思います。

雑誌の記事の執筆や翻訳の仕事は、紙媒体の衰退に伴い、徐々に減っています。それでも副業の日本語教師があるから、暇を持て余さずに済みます。そのうち、日本語教師の経験を活かして、まとめて留学生を預かるゲストハウスを始めるかもしれません。

 

世間を騒がしている公文書改ざんの現場で自殺者が出ました。

人間は「これこそが私のアイデンティティ」と信じているものが崩れると、命を絶ってしまうものなんでしょうか。

新卒で入った組織を定年まで週5日、残業や休日出勤もしながら定年まで勤めあげることができる人には頭が下がりますが、そんな生き方がもてはやされる社会は息苦しいと思います。仕事=その人の価値となってしまい、新卒で就職に失敗すると取り返しがつかないなんて、ひどいルールです。

 

二足のわらじどころか、複数のわらじをはいてきました。

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日本語学校で失敗ばかりして何度もやめたいと思いましたが、副業だからなんとか耐えられました。週5日も冷や汗をかく毎日が続いたら、神経がもちません。

学生時代、家庭教師からデパートの売り子、喫茶店のウェイトレス、甲子園球場のボールガールまで、雑多なアルバイトをしました。大学の講義以上に学ぶことは多かったし、好奇心も満足しました。

社会人になっても定職を持たないと「フリーター」と揶揄されますが、超高齢化社会を迎え、60代や70代はそんな働き方が主流になるはずです。

 

みうらじゅんの本業は、一応イラストレーターなんでしょうか。ゆるキャラや仏像など数々のマイブームを仕掛け、「ない仕事」を作ってきた彼が一貫してあこがれてきたのはボブ・ディラン

ディランに初めて会った時、通訳がみうらじゅんの仕事について説明したら、ディランは一言、「定職はないのか?」と聞いたそうです。

そういうディランだって、ミュージシャン、詩人、作家、俳優、DJ…と好き勝手やってきたくせに。

 

社会は変わり、求められる仕事も変わります。定職なんて持っていたらリスキーなだけ。その場その場で求められる仕事をしていき、それもできなくなったら静かに退場する、そんな人生の終わり方を夢見ています。

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3年目の春

桜も開花し、春の陽気が地上に満ちています。

 

日本語教師になって3年目の春です。

50代半ばの新人教師として教え始めたのが2016年の3月。

3年目といえば、中学や高校の新入生が最終学年を迎える年です。ここまでくれば、今年も無事に務めて丸3年としたいものです。

 

2016年の春、世間を騒がせていたのが、ショーンKの経歴詐称でした。

「年齢からしてベテラン教師に見られるから、そのようにふるまおう」と思ったものの、現場では化けの皮がすぐ剥がれ、冷や汗だらけの毎日でした。

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憔悴して食事ものどを通らず、4キロぐらい痩せました。

痩せたら貧相な顔つきになり、たまたま運転免許の更新で写真を撮ったところ「生活苦でスーパーで食品を万引きする女」みたいな人相でした。

今も授業に慣れていないのですが、体は正直なのか、体重は元に戻りました。

そして、日本語教師業界は出入りが激しく、気が付けば職場では中堅、へたすると古参となっています。

外国人留学生相手の日本語教師の需要は毎期(毎週)変わり、不安定極まりません。メインの職業としては心もとないのですが、「単なるパートじゃない知的な仕事をしたい」という主婦や定年後のビジネスマンが養成講座で資格を得て参入してきます。だから未経験の50代でも潜り込めるわけです。

一方、若い先生は海外と日本を行ったり来たりしています。

60代で活躍する日本語教師も多いのですが、その親世代は80代から90代。「忙しくて父の最期に立ち会えなかったけれど、せめて母はゆっくり送りたい」と職場を去る先生もいました。

 

私はこの仕事を選んだ時「東京オリンピックまでは続けてみる」と目標を立てました。遠い先のことのように思えた東京オリンピックも再来年です。

オリンピックが過ぎれば日本の国力が落ちて、来日する外国人が減り、日本語教師の需要もなくなると予測しているのですが、どうなることやら。

先のことは誰もわかりません。明日にでも大地震が起きれば、留学生は一気に帰国するでしょう。2011年3月にはそんなことが起こり、多くの日本語教師が自宅待機を余儀なくされました。

 

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外国人留学生が心待ちにしているのが、花見。日本人にとっては毎年の行事ですが、彼らにとっては一生に一度の機会です。桜の開花前に帰国する学生は「次は絶対に花見の季節に来ます」と名残惜しそうに帰国します。

自分の人生のストーリーを書こう

 日本語学校の作文クラスで教えていると、文章を書くスタイルは人それぞれだと改めて思います。

 

世界中の言語の中でかなり学びにくいとされる日本語を選んで留学し、わざわざ選択科目で「ライティング」を受講しているのですから、ことばや書くことが好きな学生が集まるはずです。

そういう学生は、一通りの定型作文(自己紹介や日記など)を書いたら、自由に日本語で自己表現を始めます。

方向性を見つけるためヒントとなるような質問を与えれば、作文はどんどん展開していきます。

日本語は初級でも学生はけっこう鋭くて、コピペの質問は上手に避けて、自分だけにしか書けないことを書こうとします。まるでピーマンが嫌いな子供がチャーハンから細かく刻まれたピーマンを除くかのように。

友達同士で受講している学生はお互いの質問を見せ合ったりしているので、手抜きはできません。

 

ジョジョの奇妙な冒険』のセリフから『孫子の兵法』まで話をつなげていったドイツ人の学生。一つのテーマだけで書いていると飽きるのか、「ポケモンGoのイベントでミニリュウを100匹ゲットしました」という報告も。

神道八百万の神キリスト教文化圏の学生にはおもしろいテーマになります。

 

その一方で、なかなか文を展開できない学生もいます。

「週末、どこに行きましたか」「何を食べましたか」といった簡単な質問には答えられるけれど、「日本語を勉強して何をしたいですか」に広げると「わかりません」と一言だけ。これは日本語能力というより、表現力の問題だと思います。

 

母国語で明日の予定は言えても、10年後にどうありたいかを語れない人はたくさんいます。

 

数週間で帰る短期生は、「日本語で何かを書いた」という体験ができればそれでいいのですが、数カ月の長期生は、もう少し深く日本語で自己表現をしてほしい。

 

そして、そういう私はどうなんだろう。

ちゃんとした文章を書いているだろうか。締切に間に合わせるために、紋切り型で帳尻を合わせていないだろうか。

 

人生のストーリーを書けるかどうか、それは本当に自分の人生を生きているかどうかに通じます。そんなことを外国人の学生から学んでします。

 

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帰るために旅に出る

 忙しいため、方々に不義理をしています。

なにしろ、日本語学校の授業準備は待ったなしです。30人近くに膨れ上がった学生の作文に目を通して添削して、質問なり次に書くべきテーマを提示するだけで一週間が過ぎて行きます。

 

新規の仕事は引き受けないようにしているのですが、その一方でしょっちゅう旅に出ています。

「あちこち旅をしている暇があるなら、仕事しろ!」と突っ込まれますが、どこにも行かず、家に引きこもって仕事だけしていると煮詰まってしまいます。

 

旅というご褒美があるから、ハードな締め切りがこなせます。

とはいえ、旅先にもパソコンや書類を持参して仕事をしていると、バカなことをしているような気になってきます。

 

しかも、私はあちこち出歩くよりも家にいるほうが好き。どこにも行かなくてもいい真っ白な予定の日があると、小躍りしたくなるほどうれしくなります。

 

何十年も前に読んだ伊丹十三のエッセイに、こんな内容がありました。

アイルランド人は、本当は来客が大嫌い。来客があると、時間がたつにつれて歓待する。なぜなら、客が帰る時間が近くなるのがうれしくてたまらないからだ」

 

30代の私はアイルランドにハマり、会社を辞めてフリーランスになる前の3か月、アイルランドを放浪しました。今の若い人に行っても信じてもらえないでしょうが、日本の景気がとてもよくて、食べていけるかどうかの心配なんてしなくてよかった時代でした。

 

ロンドンからリバプールに向かい、船でアイルランドへ。

やさしそうな老婦人の隣に座りました。

「私はイギリス人だけど、結婚してアイルランドに移りました。故郷に里帰りして、自分の家に帰るところ」と彼女は語ります。

「故郷で家族や親戚、古い友達に会って、それなりに楽しかったけれど、今ではアイルランドが私の家。早く帰りたい。旅に出て一番いいことはね、自分の家に帰れること」

 

あこがれのアイルランドへ意気揚々と向かっている私にはとっては風変りな話でしたが、老婦人は「あなたも年を取ったら、私の気持ちがわかるはず」と言います。

 

その老婦人の年齢に近づいた今となって、しみじみとこの言葉を思い出します。

旅に出るのは、家に帰るため。

いくら家が好きでも、家にずっと引きこもっていたのでは、家のよさが味わえません。

 

そんなわけで、旅から帰ったら、次はどこに行こうと考え始めます。 

  

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 指宿と鹿児島中央を結ぶ「たまて箱」。海岸線を走ります。

山羊座土星期間と、なくなる仕事

一緒に易を学んでいる夏瀬杏子さんからの情報で、先週の日曜日、ウラナイトナカイで開催された瑛兎ビットさんの講座「山羊座土星期間で押さえておきたい一つのこと」を受けました。

 

東洋占術で世の中の流れを読む時は一年単位が基本です。たとえば今年は六十干支の戊戌(つちのえいぬ)とか、九星気学で九紫火星が中宮の年だとか。

西洋占星術では惑星ごとにスピードが異なるので、複層的な読みができます。

 

山羊座土星期間は2017年12月20日から2020年12月17日まで。土星はもともと山羊座の支配星ですから、山羊座のパワーが強くなります。

 

西洋占星術をちょっとかじると、山羊座っていうのはとにかくおもしろくなさそうな星。ビット先生によると山羊座土星の2年間は「一人ひとりが『歯車』となって全体を構築する一員」にならなくてはならないことに。それって例の「一億総活躍社会」?

リタイアとか悠々自適にあこがれているのですが、いつになったら実現できることやら。

 

その一方で、変革の星・天王星が牡牛座に入り、AI技術の進展によって、なくなる仕事が続出。やるべき仕事がないのでは、社会の歯車にもなれません。

 そういえば、ボブ・ディランは「テーマ・タイム・ラジオ・アワー」では「消えそうな仕事、消えてしまった仕事」について語っていました。

 

bob0524.hatenablog.com

 

ボブ・ディランが「絶対に消えない仕事」として挙げたのは male prostitute、escort。今の日本ではホストなんでしょうが、高度な対人スキルが要求される仕事です。

そこまでいかなくても、ビットさんによると、ちょっとした気配りができれば生き残りができるとのこと。

たとえば、スーパーのレジ係なら、袋をちょっと開けてお客さんに渡すとか。AIはこうした気配りが苦手だから。そして、求められていることに対応していく柔軟性。

こういうのが、乙女座的な能力であり、乙女座のビットさん、夏瀬杏子さん、甘夏弦さんの3人がジョイントで「山羊座土星」のイベントを企画したのはこのためです。

 

語学の教師という仕事も、これからなくなる仕事と言われています。

わざわざ人間が人間を教えるのなら、学生一人ひとりに合わせた教え方をしなくては生き残れないでしょう。機械じゃなくて人間の先生でよかったと思われるようなクラスを作っていきたいものです。

 

 

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 灯台も昔は人が住み込んで操作していましたが、今は無人です。