村上春樹の「ラオスにいったい何があるというんですか?」をもじって「大洗にいったい何があるというんですか?」と、書いてみました。
観光スポットであろうとなかろうと、人が暮らしているところなら、必ず何かがあります。
大洗には海があり、海から昇る太陽があり、「陽」の気に満ち溢れています。茨城を代表する地銀が「常陽銀行」であることからわかるように、常に「陽」にあふれています。寅午戌(とらうまいぬ)の三合火局(さんごうかきょく)の吉方取りにこれ以上ふさわしい場所があるでしょうか。
そして、アニメ「ガールズアンドパンツァー(ガルパン)」のファンにとって大洗は聖地です。
アニメや映画の熱心なファンが舞台となった場所を訪れるのを「聖地巡礼」と呼びますが、キリスト教信者からすると眉をひそめる現象かも。
私が教えている日本語学校の学生の大半はヨーロッパから来ています。
日本のアニメや漫画好きが高じて日本留学を決めた彼らは、アニメの舞台を「聖地」と呼ぶことに抵抗がないどころか、「それはすごい、ぴったりだ」と大喜びします。
大洗のあちこちでガルパンのキャラクターを目にします。
水戸から大洗行きの電車に乗る時から始まっています。
高齢化と人口減少で、多くの地方自治体が町おこしに躍起になっています。
アニメで町おこしを心んだ自治体は数多くありますが、失敗に終わることが多く、数少ない成功例が大洗です。
地方の保守的な住民は、町おこしが必要だと思っても、アニメに抵抗があったり、中途半端な対応になるところもあるでしょう。そして、町おこしという目的が見え見えだと、逆効果です。
日本オタクの外国人学生を相手に日本語を教えていると、一口にオタクといってもそれぞれに強いこだわりがあることがわかります。「これ、おもしろいでしょう」と押し付けてもそっぽを向かれます。彼らの中に自発的に芽生えた気持ちを尊重しつつ、新鮮な発見を与える。これは本当にむずかしい。
大洗はそのあたりのバランスが絶妙で、アニメの町おこしの稀有な成功例とされています。太平洋に面し陽に満ちた開放的な気候が、アニオタにも心地よかったのでしょう。
大洗シーサイドホテルの戦車ケーキ。単にアニメのキャラクターのポスターを貼るだけでなく、こんなメニューを開発したところに大洗の心意気を感じました。
アニメと町おこしの幸運なマッチング。
それを目にするだけでも、大洗に行く甲斐があります。
そして、願わくば私も幸運なマッチングに恵まれるよう、海を見晴らす絶景の大洗磯前神社で祈りました。