翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えていましたが、2019年3月で卒業。フィンランドが大好き。

この国で老いる覚悟

介護保険がなかったら、実家は崩壊していたでしょう。

まず母がお世話になりました。

一昨年の冬に母が亡くなり、肺炎で入院中の父は気落ちもあって病院を退院後、施設に入所することに。ところが春頃から「ここは監獄みたい。家に帰りたい」と言うようになりました。

離れて暮らす私としては、ずっと施設にいてくれたほうがありがたいのですが、本人の希望を優先することにしました。苦学して東京商船大学を卒業し、外洋航路に乗船し、50代で瀬戸内海航路の水先案内人に。72歳までずっと働き詰めで、ようやく退職したら母のパーキンソン病の老々介護の日々でした。

 

私が好きなように進学、就職、結婚できたのだから、父も好きなように老後を送ってほしい。

そこで介護保険プラス自費負担でケアプランを立ててもらいました。

週末は2泊3日のショートステイ、平日も週2日はデイサービス。自宅で過ごす日は朝昼晩とヘルパーさんが来てくれますし、デイサービスの送り出しも頼んでいます。

父自身も「こんなに人手を煩わすなんて、昔の王侯貴族みたいだ」ときまり悪そうにしていますが、やはり自宅をベースにしておきたいのでしょう。

 

私の世代は父のような手厚い介護は期待できません。

 介護は労働集約型産業です。これから高齢者が急激に増えて、労働人口が減る一方の日本で、今のシステムが続くとは思えません。

 

自分自身の終活を進めて、生前と死後事務契約を結びました。

自立して暮らしていけなくなったら、100歳まで費用が賄える前提で入所できる施設を探してくれるそうです。

年に一度、担当者が自宅を訪問してくれるサービスもあります。認知症の兆候が出ていないかをチェックするのでしょう。50~60代のしっかりした人は、断ることも多いと聞きましたが、私はあえてお願いしました。子供がいない私は、死後を委託する団体にどんな暮らしをしているかを知ってもらっておくのもいいだろうと思ったから。

 

今のところは特に相談することもなく、さまざまな人生の終わり方を聞くことになりました。

 

ある方は、自力で食事がとれない寝たきり状態になって施設に入所。毎食ごとに看護師さんがつきっきりで食事をさせてくれるのですが、意識がはっきりしているので「若いあなたの時間をこんな無駄なことに費やすなんて…」と心苦しそうにしていました。しかも、これから10年もそんな状態が続くというのです。

そこでその人は食事を徐々に拒否するようになり、2年後に衰弱死したされたそうです。

看護師といえども無理やり食べさせることはできないし、栄養剤の点滴も断固拒否したのでしょう。

 

こういう話を聞けただけでも終活を始めてよかったと思いました。

いつまでも若いつもりでも、もうすぐ60代に突入する私に残された健康寿命はあまり長くありません。自分がやりたいことをやっておく一方で、少しでも社会の負担にならずこの世を去る方法を模索しています。

 

日本にもマザー・テレサの「死を待つ人の家」みたいな施設があればいいのに。

延命治療はせず、食べたくない人には無理に栄養補給もしない。静かにこの世を去っていける場所があれば、心安らかに老後の日々が送れるのですが…。

 

f:id:bob0524:20191006125903j:plain

スペインのセビリアで見かけたタトゥーの店。

島旅の記録

トーベ・ヤンソンは77歳になるまで夏は島暮らしを楽しみました。

無人島に小屋を建て、親友と二人で住み創作に打ち込む日々。生活必需品はすべてボートで運ぶという不便な生活ですが、それが創作意欲を刺激したのでしょう。

10年ほど前にその島を訪れたのですが、観光で行くのも一苦労、夏の間だけでも住むなんて絶対に無理だと思いました。

 

bob0524.hatenablog.com

 

軟弱な私はもっと大きな島を目指します。しかも飛行機で。

JALは沖縄や鹿児島の離島をプロペラ機で結んでいます。

 

f:id:bob0524:20200211161204j:plain

 

グレタさんが知ったら「よくもそんなことを!」と絶句しそうですが、島に暮らす人々にとって定期的な飛行機の航路はお守りのようなもの。普段はフェリーを使っていても急病人の搬送など、飛行機が必要になることもあるでしょう。航路を維持するためには、観光客も乗せて、ある程度の収益が必要なのではないでしょうか。

 

島に行くか、山に行くか、どちらかを選ぶとなると私は島に行きます。

山奥の村はのどかで自然も豊かですが、閉鎖的なイメージがあります。もちろん観光客として訪れるのなら歓迎されますが、四方を海に開かれている島の開放感を心地よく感じます。

 

7年ぶりに石垣島を訪れました。

 bob0524.hatenablog.com

 

前回、街歩きガイドさんから教えてもらった「路上寝」という言葉。酔っぱらってそのまま路上に寝ることです。なんてワイルド! 

飲み屋街には「路上寝禁止」と注意書きが貼ってあるところを見ると、あいかわらずの習慣のようです。

 

すばらしいお店だと感動した辺銀食堂は、要予約の9900円おまかせコースのみの高級レストランになっていました。新しい店もいろいろオープンしている一方で、7年前と同じ居酒屋や喫茶店も営業していました。

 

写真を撮っている姿が、いかにも観光客然としていたのでしょう。すれ違う若い女性から話しかけられました。

日本語でも英語でもないし、彼女の風貌もアジア系なのかヨーロッパ系なのか…。

 

何やら路上を指さしています。彼女が一生懸命伝えようとしたのは、ハート型をしている石でした。私が理解してスマホを向けて撮影すると、「ね、素敵でしょう、とても気に入っているの」と言いたげににっこり笑いました。

 

f:id:bob0524:20200211161320j:plain

 

これこそ島旅。

どこから来たのかわからない者同士が、情報を交換する。石垣島八重山諸島行きのフェリーが発着する玄関口ですから、多くの人が行き来しています。

 

この本を読んで、種子島にも行ってみました。

 

 ビジネスマンが書いた本なので、学術的にはあいまいなところも多いと批判されていますが、おもしろく読めるし、考えるヒントもたくさんあります。

 

種子島に鉄砲が伝来したのは、たまたま漂着した船にポルトガル人が乗っていて鉄砲を積んでいたからとされます。しかし出口氏は、当時の海上交易はたくさんの情報を持っていて、儲かりそうな場所を選んで物品を運んでいたのではないかと考察します。

鉄砲が求められるのは、紛争が起こっている地です。当時の日本は室町幕府の力が弱まって群雄割拠となっているタイミング。「鉄砲を日本に持っていたら高く売れるのではないか。どうせ持ち込むなら、目の青いポルトガル人を連れて行ったほうがありがたみがます」と中国の商人は考えたのではないか。

昔も今も日本人は外タレに弱い。種子島の領主にとっても、漂着としていたほうがお上に咎められる可能性は低くなります。早速、高値で買い求め解体し構造を調べています。

歴史を動かすのは財。海の男のロマンもあるだろうけれど、結局はお金の匂いが人を動かします。あちこちを転々と移動するタイプは財を確保しなければ暮らしが成り立ちません。

 

島を歩いているだけで、人生に新しい風が吹いてくるような気持ちになります。トーベ・ヤンソンみたいに夏が来るたびに同じ島に暮らすのにあこがれますが、適度に稼いで気ままに南の島を行き来するのもいいものです。

テレビも時計もないサウナ

交換留学で京都の大学で学んでいるヘンリク君は、寮にシャワーがあるのに好んで銭湯に通っているそうです。

「他人の前で裸になるなんて恥ずかしい」と温泉にも行きたがらない外国人留学生もいるのですが、サウナの本場であるフィンランド人は日本の銭湯にもすんなりなじみます。

ヘンリク君はサウナのある銭湯にも足を伸ばしたら、たまたまサウナが改装中で本当にがっかりしたというので、東京に滞在中、銭湯巡りを決行。

 

到着日には、我が家から徒歩10分たらずの銭湯へ。サウナと水風呂もあるアットホームな銭湯です。京都からの移動の疲れが取れたと喜んでいました。

 

翌日は両国の江戸東京博物館へ行ったので上野の寿湯へ向かいました。

 

f:id:bob0524:20191229130043j:plain

 

寿湯の翌日には我が家から20分ほど歩き、テレビ東京の『サ道』にも登場した銭湯に行ったのですが、サウナと露天風呂の温度がちょっと低すぎたようで、ヘンリク君にとっての東京のベスト銭湯は上野の寿湯だそうです。

寿湯の女湯は男湯に比べると手狭でサウナも一種類だけ。老舗の銭湯だからしかたがないのでしょう。同じオーナーが鶯谷にオープンした都内最大級の銭湯「荻の湯」は新築だけあって女湯も広々としていました。次回はぜひヘンリク君を連れて行きたいものです。

travel.spot-app.jp

 

フィンランド人が日本のサウナに入ってまずびっくりするのは、テレビ。サウナは神聖で、親しい人と語り合う場だからです。

うーん、たしかに私もサウナのテレビは好きじゃありませんが、常連同士のおしゃべりはおもしろいこともありますが、内容によって苦行にもなります。

 

フィンランド人はサウナで深い話をするので、たまたま一緒になった人も共感できるのかもしれません。

 

bob0524.hatenablog.com

 

ヘンリク君の実家にはサウナがあり、よくお父さんと一緒に入っていたそうです。

そしてお父さんの教えは「サウナは我慢競争ではない。人より長く入ろうとするのではなく、自分にとってベストの時間で入ればいい」。

 

私はいつもサウナの12分計とにらめっこしています。最短でも8分、調子がよければ10分はサウナに入り、2分の水風呂。リラックスするはずなのに、頭の中で数字を数えばかり。

 

サウナ、水風呂、外気浴。できれば時計にしばられず、自分の感覚で楽しみたい。

そして生活全般も体内時計で暮らしたいものですが、まだそのレベルに達していません。

暮らすように旅する

島根在住の友人がいるので、毎年のように旅をしています。

去年からはもう一人の友人が加わり、三瓶山の温泉で深夜まで盛り上がりました。

 

同行者は東京のご近所さんでスポーツクラブ仲間。

本業はシナリオライターなので、旅先ではいつも、「ここに住んだらどんな暮らしになるか」と想像しているそうです。

 

旅先では、なるべく現地に溶け込むようにしています。旅先の荷物を最小限にするのもそのため。島根の友人には「まるで隣町に来たみたい」と荷物の少なさに驚かれます。

 

長い旅では、コインランドリーを利用します。

せっかくの旅行なのに1時間以上もコインランドリーで過ごすなんて時間がもったいないと思う人もいるでしょうが、現地の人の生活を垣間見るには格好の機会です。

 

昨年の春、自宅のリノベーションで3週間、東京と横浜近郊のホテルを転々としました。横浜中華街近くのコインランドリーに行くと、場所柄かレストラン関係の人がテーブルクロスや布製のナプキンをどっさり洗っていました。近くに東京芸大の横浜キャンパスがあるためか、アーティスト風の若者も洗濯にやってきます。

持参した本を読みながら、次々とやって来る人を見ているだけで時間があっという間に過ぎました。この世界のどこでも、人々は食事をしたり洗濯や掃除をしていると思うと、毎日の生活が愛おしくなります。

 

昨年の秋のスペイン旅行ではセビリアで洗濯することになりました。

 

ホテルからコインランドリーまで徒歩で10分ぐらい。グーグルマップを頼りに歩いていきます。

最新の洗濯機を備えたこぎれいなコインランドリーですが、使い方がよくわかりません。洗濯の終わりを待っている親切そうな年配の人に「どうやって洗いますか?」と聞いてみました。

「いや、あの…私は英語が…」と、しどろもどろな反応。スペイン人は英語が苦手な人が多いようです。没落したとはいえ、世界に冠たるスペイン帝国の末裔ですし、国内にいる限り自国語で用が足りるのですからわざわざ外国語を学ぶ必要がないのでしょう。日本と同じです。

根が親切な人が多いので、隣の若い女性に「あなたなら説明できるでしょう」と役割を振ります。

その女性は読んでいた本を傍らに置き、「それでは私が」と立ち上がりました。まるで舞台役者のよう。さすがオペラ『セビリアの理髪師』の地です。

 

「まず、コインをここに入れて」とショーが始まりました。

手持ちのコインで足りません。ホテルのフロントが混んでいたので両替せずに来てしまいました。

「じゃあ、そのお札を両替機に入れましょう」と彼女は続けます。

ところが、両替機がお札を受け付けません。何事にも大らか(いい加減)なスペインですから、コイン不足で放置されているのです。近くには両替してくれそうなお店もないし、かといってホテルまでは徒歩で10分なので引き返すのも面倒です。

 

「このお札をコインに両替できる方、いらっしゃいますか」と観客に向かってアピール。みんな財布を出してコインを数え始めました。

 

無事に10ユーロをコインに両替できて、洗濯スタート。日本風に手を合わせて感謝のおじぎをして舞台の一幕が終わります。

 

洗濯でさえこんなエンターテイメントになるセビリア。この街を再び訪れたいと強く願った夜でした。

 

f:id:bob0524:20191008174231j:plain

 昨年の8月8日に発足したウラナイ8のノベリティグッズを洗濯物入れとして活用しています。

アウトプットするから、学びはおもしろい

夏瀬杏子さんの発案により、3回にわたって開催した九星気学講座、参加者の皆様、本当にありがとうございました。

 

東洋占術をあれこれ学びましたが、最も効果を実感しているのが九星気学です。「あなたはどんな人か」という診断ではなく、「どうすれば開運するか」という処方を伝える実利的な占術だからでしょう。

 

改めて感じたのが、アウトプットの楽しさです。暇つぶしといっては語弊がありますが、年齢を重ねて働く必要が少なくなっていくにつれ、「いかに時間をつぶすか」が課題になってきます。

 

図書館やスポーツクラブ、ショッピングモールのフードコート、果ては場外馬券売り場…。暇を持て余した高齢者のたまり場となっているそうです。働かなくては生活が成り立たないという高齢者も大変ですが、お金はあってもやることがないというのも虚しいものです。

 

 

先日訪れた江戸東京博物館でもこのテーマを考えさせられました。

 bob0524.hatenablog.com

 

江戸東京博物館のガイドは、高水準の歴史知識と語学力が求められ、交通費も支給されないまったくのボランティアなのに、なかなか募集がなく、たまに募集があってもかなりの高倍率だそうです。さもありなん。博物館を訪れて来る外国人は毎日違うし、常に知識と語学をブラッシュアップするモチベーションも保て、退屈とは無縁です。

 

そう考えると、私がこれまで仕事の手段としてきた「占い」というジャンル、老後の暇つぶしとしても最高だと思い至りました。

 

知識をインプットする楽しみもありますが、ある程度まで行ったら対面鑑定をしたり、今回のような講座や読み会を開催できます。知識だけを詰め込んだ人がぴたりと当てたり実生活で開運しているとは限らないのも占いのおもしろいところです。

 

昨年、誕生したウラナイ8では、メンバーがそれぞれのスタイルで活動しています。

夏瀬杏子さん主催の易の会はいつも楽しみです。参加者が持ち寄った占的をみんなで占い、それぞれの読み解き方を披露。本を読んでいるだけでは行きつかない新たな通路が開きます。

そして、今回、九星気学を講座という形で言語化することで新たな発見があり、受講料をいただくのが申し訳ないほど。一番学んでいるのは私です。

 

ウラナイ8のメンバー最年長だから、確率的には死ぬまでウラナイ8と関わっていける可能性も大。占いを学び、アウトプットする場としてウラナイ8を活用する人の輪がもっと広がっていけばと願っています。

 

f:id:bob0524:20191229130109j:plain

先日訪れた長崎の孔子廟

学びて思わざればすなわち罔(くら)し、思いて学ばざればすなわち殆(あやう)し

学ぶだけで自分の頭で考えなければ、暗い状態のまま。かといって自分の考えだけで突っ走り、学ぶことがなければ危険。

インプットとアウトプットのバランスを取るのが、老後も退屈しない秘訣でしょう。