翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

身体より先に頭が衰える

 加齢による体の衰えを感じるどころが、高熱が出ても気合いで翌朝までに治してしまします。ところが、頭のほうは完全に弱ってきています。

 

イタリア人のマギーを連れての伊東へ温泉旅行。

マギーは来日4日目だというのに温泉に行ったことがないというので、計画しました。

 

車を使わないので、電車やバスの時間など事前に調べることがたくさんあります。

 

しかし、実際に旅に出てみるとトラブルの連続。

宿の最寄り駅(南伊東)に送迎バスが来るものだと勘違いしていました。

実際は伊東駅でした。そして、伊東駅で予定時刻の数分前になってもやって来ません。他のホテルの迎えのバスは次々に来ているのに…。

おかしいなと思って改札の前まで行ってみると、ホテルの係の人がいて、バスが止まるのは駅からちょっと離れたところだと教えてくれました。あわてて駆けつけてぎりぎりで乗れました。

 

間抜けなことばかりが続きます。

夕食のチケットを忘れてレストランに行ったり、出かける先の割引券をバッグに入れたまま預けて外出しかけました。

 

毎日、毎週のルーティンワークなら、慣れているのでなんとかこなせるものの、旅という非日常の場でどんどんボロが出るのは、頭の働きが相当衰えているからでしょうか。

 

かつて、お茶の水湯島聖堂の陰陽五行講座に通っていたことがあります。

中国哲学研究家で『五行大義』がご専門の中村璋八先生は当時、80代でした。

 

ある日、講座の直前に「中村先生が急病のために休講」というアナウンスがありました。中村先生ご自身は、高齢のため講師を辞退しているのに、無理にお願いして開いてもらっているので、文句を言う受講者はいませんでした。

 

数週間後のこと。開始時間になっても、先生が現れません。事務局の方は「ご自宅に連絡したら、家を出られたとのことなんですが…」と困惑している様子。お年がお年だけに、悪い想像が広がります。

 

後日聞いたところによると、先生は講座の日時をまちがえられて、床屋さんにいらっしゃっていました。

そして、先生からは「こんなことをしてしまって、もう無理です」と申し出があり、講座はなくなりました。

次に先生の名前を目にしたのは新聞の訃報欄でした。

 

どんな立派な先生でも、加齢によりスケジュールが守れなくなるんだ…。

高齢化社会の到来で、70歳、いや75歳まで働くべきだと言われていますが、 個人差があり一概にラインは引けません

世間から求められても、働けなくなる日はやって来ます。ぎりぎりまで続けるか、迷惑をかける前に潔く身を引くか、考えておくべきでしょう。

 

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 「ウェルネスの森 伊東」はリゾートマンションタイプ。個室の寝室があり、食事はバイキングなので外国人を連れていくには最適です。ただ、ちょっと広すぎて居心地が悪いと感じました。

 

玉手箱を少しずつ開ける

月火水の週3日、日本語学校で教えています。

 

先日、火曜日の授業を終えたあたりから、体がぞくぞくしてきました。関節も痛み始め、体の中から熱くなり、風邪のひき始めです。

 

そういえば、月曜日の授業で「土曜と日曜は風邪をひいて家にいた」という学生がいました。その学生からうつされたのか。そして、火曜日のクラスで学生にうつしたかも。

 

火曜日の授業では苦手な文法を教えなければならず、授業準備に苦しみ、なかなか眠れませんでした。睡眠不足も悪かったのでしょう。

 

やっとのことで家に帰り着き、熱を測ったら38度6分!

水曜日の授業を休むわけにはいかないのに…と思っているのは私だけで、休めばだれかが代講を引き受けてなんとかなるものでしょうが、できたら代講は頼みたくありません

 

「気合で治す」と念じました。

帰宅したのは午後2時ですから、明日の朝まで時間があります。

  

市販の風邪薬を飲んで布団に潜り込みました。

睡眠不足もあり、すぐに眠り汗びっしょりで目が冷めたのが午後7時。熱を測ると37度台に下がっていました。よし、この調子。

翌日の授業準備の残りを片付け、午後10時に風邪薬をまた飲んで、朝起きたらすっかり治っていました。

 

どういわけか、頑丈な体に生まれてきました。

小学生の時は、病気で学校を休む友だちがうらやましかったものです。

 

若い頃に就職した会社の上司は、入退院を繰り返していました。

部下の私に「健康に生んでもらった両親に感謝しなさい」と言うのですが、どうせなら健康よりも美貌とか才能に恵まれたかったと思ったものです。想像力が欠如していたし、生まれながらに自分が持っているものの価値は実感しにくいのでしょう。

 

もし私が人を使う立場だったら、ブラック企業まっしぐらです。

「病気なんて気力で治せる」と部下を追い詰めてしまうでしょう。

 

50代の半ばをすぎると、さすがにこのまま人生が続くとは思えません。

今回はうまくいったけれど、次は同僚にめいわくをかけるかもしれません。

 

病弱だった人は、老後の生活にも比較的スムーズに対応できるように思えます。

体力に限界があることを知っているほうが加齢のよる衰えも受け入れやすいでしょう。

私のようなタイプは一気にガタが来て、駄目になっていきそうです。

 

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熊本・指宿の竜宮神社。

今の私は玉手箱を封印している状態。一気に開けると、立ち直れないぐらいショックを受けそうです。玉手箱を少しずつ開けて、加齢を実感しようと思います

アイルランドの恩送り

我が家に滞在しているイタリア人のマギーは日本で就職活動をしています。

 

マギーの来日は4度目なので、手取り足取り世話をする必要がなかったのでなんとかなりました。仕事の締切や日本語学校の授業準備で時間がほとんど取れない日も多かったし。

 

とはいえ、民泊をやっているわけでもないのに、自宅に人を泊めるのはちょっと疲れます。

 

どうして引き受けたのか。

マギーがまじめで優秀な学生で印象がよかったこともありますが、私自身が若いころ、外国でさんざん世話になってきたからです。

自分は上の世代から恩恵を受けて、下の世代に対して知らんぷりというのは気が引けますから。

 

「恩送り」、英語で"Pay It Forward"という言葉があります。

誰かから受けた恩を、その人に直接返すのではなく、別の人に送ること。そうやって順繰りに恩を送っていくので、自分が誰かに恩を売っても、見返りは期待しません。

 

受けた恩を返さず、かといって別の人に送ることもせず、「親切にしてもらってラッキー!」といい気になっている人は、いつかツケを払わなくてはいけないのではないでしょうか。

 

20代最後の夏、会社勤めを辞めてフリーランスになろうと思い立ち、その前に3か月間アイルランドを旅しました。

そこで出会った親切な人たち。泊めてくれた人もいました。カウチサーフィンやエアビーアンドビーなんてなかった時代です。当時のアイルランドは、ヨーロッパの西端の素朴な国でしたし。

 

その時に訪れた田舎町にあったアイルランド国立の日本庭園。村の人たちの協力を得て、週刊誌に記事を書くことができたのがフリーランスライターとしてのデビューでした。

とりわけ、日本庭園の園長で日本留学も経験していたキャサリンにはお世話になりました。アイリッシュタイムズの記者も紹介してくれたので、記事の材料を集めることができました。

 

bob0524.hatenablog.com

 

今回、イタリア人のマギーをホストしたことで、彼女の人生にも何らかの変化が起こることでしょう。そして、マギーが次の世代へと恩送りをすることを想像しています。

 

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熊本の小泉八雲旧居。彼の父は アイルランド人、母はギリシャ人でした。

フリーランスになった当初はアイルランド関係の原稿を書く機会も多少あり、小泉八雲のお孫さんの小泉時さんにインタビューしたこともありました。

その後、アイルランドの原稿だけでは食べていけず、依頼された原稿は何でも書くようになり、最終的に東洋占術と翻訳が残りました。

 

外国語を学ぶストレス

村上春樹の小説に、大学でスペイン語を教えている男性が「砂漠に水を撒くような仕事」と言い換えるシーンがあります。

 

その国に移住するというのなら、言語の習得は最優先事項です。

でも、大学での副専攻とか、私が教えている日本語学校の学生のようにオタク趣味が高じて来日した学生にとっては、趣味の延長のようなもの。

 

村上春樹は翻訳を数多く手がけ、アメリカの大学で日本文学を教えたりスピーチもしています。英語以外にも、ドイツ語、フランス語、スペイン語ギリシャ語、トルコ語を学ぶなど、かなりの外国語好きのよう。

でも、年を取ってくるとさすがの村上春樹も「スペイン語トルコ語の動詞活用をやみくもに覚えたりするよりは、自分にとってもっと切実に必要な作業があるのではないかという気持ちが先に立ってくる」と書いています。

 

やがて哀しき外国語 (講談社文庫)

やがて哀しき外国語 (講談社文庫)

 

 この本に、村上春樹アメリカでスペイン語教室に2か月ほど通った体験が書かれています。語学教師になった私にとって、とても考えさせられるエピソードです。

 

クラスは4人。村上春樹に、年配の主婦が2人、そしてヤッピー風の銀行員。

この銀行員は会社の命令でスペイン語を習うことになり、「本当は語学なんかやりたくないけれど、会社が授業料をだしてくれるからいいけれど」なんて愚痴ばかりこぼしています。

もともとやる気がない上に、語学のセンスもなく、文法も発音も覚えられずクラスの進行の邪魔になっていきます。

自分はこの初歩スペイン語のクラスで無力だけれど、社会に出ればいっぱしの人間なんだということを誇示したがる。はっきり言ってたまんない男である。先生もかなりめげていていたみたいだけれど、アメリカのこの手の学校の先生は生徒からちょっとでもクレームがつくとアウトなので、我慢強く最低の生徒にペースを合わせて授業を進めることになる。誰かがひっかかっていると、先に進めない。こうなると「生徒」というよりはむしろ「カスタマー」と呼んだほうが近い。

この箇所で私は何度も頷きました。

 

フィンランド好きが高じてフィンランド語を習いに行ったのですが、短期記憶が試されるような授業ですっかり嫌になりました。

たとえば、野菜や果物の模型を使って、「なになにを食べます」、「なになにを買います」などを教師に指名されて発言していきます。

瞬時に名詞と動詞を覚えて声に出すのは、けっこうきついものがありました。そういうのが得意な人と苦手な人の区別がはっきりわかります。

自分の記憶力の悪さに嫌気がさして、フィンランド語教室に行かなくなりました。

 

そんな苦い経験があるから、私が教える日本語学校の作文クラスは「自分のレベルで、自分のペースで書きましょう。すべてはあなた次第」をキャッチフレーズにしています。

 

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外国語を学ぶのはかなりのストレスです。

たしかに、恥をかいて記憶にインプットする方法もありますが、AIが普及すれば、そんな苦労もなくなるかもしれません。

何がいいのか試行錯誤しながら、日本語の授業を続けています。

 

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 熊本・阿蘇山のポストは地震の被害で口が塞がれていました。

反応のない語学学習ほど悲しいものはないと思います。

 

あなたの生活は、誰かのあこがれの生活

イタリア人のマギーがやって来ました。

3年前の夏に日本語学校で教えた学生です。

 

彼女の夢は日本で暮らすこと。

「必ず、また日本に来ます」と言い残してイタリアに帰国しました。

 

歓迎パーティーと称して、近所のイタリアンレストランへ。

マギーは愛称で本名はマルゲリータ

ナポリでピザの修業をしたというシェフにぜひピザ・マルゲリータを作ってもらいたかったのです。

 

マギーがボローニャ出身だと聞くと、シェフはもちろんスタッフたちも色めき立ちました。毎年、社員旅行でイタリアに行き、今年はボローニャ近くのワイナリーに行ってきたそうです。

「イタリアのどこに行くか、各自がプレゼンテーションして決めるんです」とスタッフの女性。みんなイタリアが大好きで、イタリア料理店で働くことを心底楽しんでいるようです。

 

日本に生まれたのに、イタリアに恋焦がれる人たち。

そんな人たちが作ってくれた料理を食べるマギーは、イタリアに生まれたのに、日本で暮らしたくてたまらない。

 

生まれる国や場所、家庭を選べない状態で人生がスタートします。

中には、生まれたところで満足して一生を終える人がいる一方で、自分にもっと合った場所があると感じる人もいます。

 

マギー来日2日目は、友永ヨーガ学院へ。マギーはイタリアでヨガのインストラクターの資格を持っています。

3年前の春、断食コースに一緒に参加していたフランス人女性が友永ヨーガでインストラクターとなり「英語でヨガ」というクラスを受け持っています。

  

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クレア先生はアルプスの近くの街の出身ということで、マギーの出身地がボローニャだと聞くと「ご近所さん」と喜んでいました。

 

フランス人の先生に英語で教えてもらいながらヨガに取り組み、隣には日本移住を夢見るイタリア人。一瞬、自分がどこにいるのかわからなくなります。

 

マギーにとってクレア先生は日本移住を果たしたあこがれの先輩ということで、聞きたいことがいっぱいあるようです。クレア先生は快くメールアドレス交換にも応じていて、今後、いいアドバイザーとなってくれるでしょう。

 

マギーの夢がどこに行きつくのかわかりませんが、少しは手助けができました。

 

私自身、若い頃はアイルランドにあこがれ、ここ数年はフィンランド熱に浮かされて過ごしてきました。

移住とまでは考えませんでしたが、なんとか外国とつながりたいという思いが、翻訳や日本語教師の仕事をしています。

日本は国力が衰えつつあるようですが、幸いなことに日本にあこがれる外国人たちはたくさんいます。

 

日本に生まれ、日本に暮らしていることを当たり前のように思っていましたが、考えようによっては、とても幸運なことかもしれません。

 

 

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昨日はハロウィーン。魔女や死神、侍、ピカチュウが教室にやってきてカオス状態。

ガイコツはスウェーデン人のマイケル。原稿用紙に日本語を縦書きするという、今どきの日本人はめったにやらないことに熱心に取り組んでいます。