翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

最後に勝つのは愛ではなく無欲

映画『クレイジー・リッチ』では、財産目当てと誤解され大富豪の恋人の家族からいじめられるヒロインが描かれています。

結局、ヒロインの無欲がみごとに物語を着地させました。

 

日頃は「清貧に生きる」と言っていても、ほとんどの人は大金が目の前に示されると豹変します。

子供のいない伯母の遺産をめぐって骨肉の争いに巻き込まれ、いとこと絶縁することになった体験を通して、お金はつくづく因果なものだと痛感しました。

 

NHKラジオの「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」毎週1回、日本の昔話が英語で放送されます。

 

先日、取り上げられたのが「わらしべ長者」。

わら一本から成り上がるストーリーは複数あるようです。

わらにあぶを結び付けたのを大泣きした男の子が欲しがり、みかんと交換。そのみかんが、反物、馬、屋敷と交換されていくのが一般的ですが、紹介されたのは別バージョンでした。

 

わら一本を持って歩いていると、炭焼きに遭遇。

炭焼きは炭を作る火を起こすためにわらが必要。わらの代金を払うと言われても「もともとただで手に入ったものだから」と代金を受け取らずにわらをあげる。炭焼きから炭をもらう。

 

次に会ったのは刀工。

最後の仕上げに火を入れるために炭が必要だというので、炭を渡す。代金を辞退したら、どれでも好きな刀を持って行っていいと言われ、短い刀をもらう。

 

そして、戦さに向かう武士と出会う。長い刀は持っているけれど2本目の短い刀を持っていないという武士に短い刀を所望される。すべてはただで手に入れたものだから代金は要らないという若者に武士は感嘆し、「この青年なら」と手紙を持たせて自分の屋敷へ向かわせる。青年は家族としてその屋敷で暮らすことに。

  

武士は、無欲の青年に感じ入って自分の家族の命運を託したのでしょう。

 

目先のお金にとらわれていては、それだけのものしか手に入らない。

無欲になった時、人は最高のものを手に入れる。

お話の教訓はそうですが、実生活ではなかなかむずかしいものです。 

  

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 シンガポールの「富の噴水」。

中国系の人は財を求めて風水による建築物を建てるのでしょうが、一般の観光客も楽しめる開運スポットとして開放されているなんて太っ腹。関係者で独占していては、「気」の流れがよどみ、運気の停滞を招くと考えるからでしょう。

 

日本も『クレイジー・リッチ』だったのに

今年、最もおもしろかった映画は『クレイジー・リッチ』です。

 


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なんてよくできたストーリー!

貧しくても美しくて性格のいい女の子が王子様に見初められるのがシンデレラ・ストーリーですが、主人公のレイチェルはニューヨークの大学教授という立派なキャリアを持っています。これがいかにも現代風。

恋人のニックは、シンガポールの大富豪の御曹司ですが、自分の家族についてまったく語りません。

レイチェルと母の会話で「もしかして実家が貧乏で仕送りしているのかも…」というセリフが出てきますが、キャリアも収入もあるレイチェルは恋人の実家の経済状況を気にする必要はありません。

ニックからすると、それまで財産目当てで近づいてきた女性にうんざりしていて、実家と関係なく恋愛関係になったレイチェルの存在はかけがえのないものなのでしょう。

 

そしてシンガポールに行ってニックの家族がクレイジー・リッチであることが明らかになります。

ここからはシンデレラ・ストーリーの王道です。

 

現代は『Crazy Rich Asians』。どうしてチャイニーズじゃなくてアジアンなんでしょう。

 餃子にマージャン、風水と出てくるのは中国文化ばかりなのに。

 

アジアを代表する国といえば中国。日本の影はすっかり薄くなってしまったようですが、日本だって、バブルの絶頂期には「クレイジー・リッチ」と呼ばれていました。

1089年にはニューヨークのロックフェラー・センター三菱地所が、コロンビア映画ソニーが買収しました。背景にあるのは、まさにクレイジーな地価の高騰。東京の山手線内側の土地価格でアメリカ全土が買えるほどでした。

少子高齢化によって国力が衰えている現在からは信じられないことです。

 

それほどお金があったのに、ハリウッドで『クレイジー・リッチ』に匹敵するようなオール日本人俳優の映画は作られませんでした。

 

『クレイジー・リッチ』に登場するのは、すべてアジア系の俳優。原作者には白人女優を主人公とする映画化の話が持ち込まれたそうですが、断り続けたそうです。

ハリウッドでの映画化では白人のヒーローやヒロインじゃないとヒットしないと言われていたのですが、『クレイジー・リッチ』の成功により風向きが変わったと報じられています。

 

 

私が教えている日本語学校は、ヨーロッパに本部があり、欧米の学生が多いのですが、最近ひしひしと中国系の富裕層が増えてきたことを感じています。

「家は中国だけど、イギリスの寄宿学校に入っていて、日本に短期留学」という学生も珍しくありません。

 

国語学習は国力に比例すると日本語教師養成講座で習いました。

ここ数年は日本語学習者の急増により日本語教師の需要が多く、50代未経験の私でも日本語学校で採用されましたが、これからはけっこうきびしいのでは…。

 

『クレイジー・リッチ』は最高におもしろかったけれど、今後についても考えさせられた映画でした。

  

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台湾の夜市の屋台。

映画ではシンガポールの屋台も魅力的に紹介されていました。台湾もシンガポールも、手頃に外食できる場所が多く、女性の社会進出を後押ししているそうです。

母親の手作りの味にこだわる日本文化は世界でも希少な文化として残っていくのでしょうか。

 

賢者の贈り物なんて不可能な世の中

クリスマスが近くなると、オー・ヘンリーの『賢者の贈り物』を思い出します。

 

若い人なら「馬鹿じゃねwww  何をプレゼントするか相手に聞かないのwww」という感想を持ちそうですが、たしかに突っ込みどころの多い話です。

 

懸命に節約してもクリスマスイブに1ドル87セントしかない妻。

愛する夫へのプレゼントが買えないとソファに突っ伏して大泣きする暇があるなら、どうして働かなかったのか。八百屋や肉屋に強引に値引きを迫り小銭を集めるより、よっぽど効率的です。

 

しかし、妻がパートに出て小金を稼いで、適当なプレゼントを買ったのでは、物語になりません。

この夫婦は貧乏のどん底にありますが、もし運がよくなってお金持ちになったとしたら、この年のクリスマスの思い出はかけがえのないものになったでしょう。

 

貧しい中で心を尽くして相手が最もほしがっている贈り物を探すのは美しい行為ですが、今の時代はなかなかむずかしいのでは。

 

一歩外に出ると、100円ショップやコンビニでちょっとしたものは買えます。

安くて品質のいい衣類も大量販売されていますし、メルカリで気合を入れて探せば掘り出し物が手に入れられるかもしれません。

 

 

糸井重里が「ほしいものが、ほしいわ」と書いたのがバブル真っ最中の1988年。

西武百貨店のコピーです。

 

ほしいものはいつでも
あるんだけれどない
ほしいものはいつでも
ないんだけれどある
ほんとうにほしいものがあると
それだけでうれしい
それだけはほしいとおもう
ほしいものが、ほしいわ。

 

あれから30年たって、さらに「本当にほしいもの」を探すのがますます困難になっています。

 

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 無印良品ユニクロを合わせてパクったと言われるメイソウ。アジア各地で展開しています。なかなか気の利いたものが手頃な価格で売られており、若者が気軽に買い物かごに入れていました。アジア諸国も「ほしいものがほしい」時代に突入しているのでしょう。

己亥(つちのとい)の年に種をまこう

2019年、己亥(つちのとい)の年は、大地(己)の下に核(亥)爆弾が仕かけられているような不穏な年です。

開運するためには、この突発的なエネルギーをプラスの形で人生に活かすしかありません。

 

十二支は一般人にもわかりやすいように動物をあてはめていますが、本来は植物の成長の段階を示すものです。

十二支の始まりは子ですが、生命の兆しは亥から始まっています。子は地中に埋まった種であり、丑で紐状の小さな芽が出て、寅でようやく地上に芽を出します。そして双葉になるのが卯。

 

そして十二支は3つずつ、特殊な結びつきがあります。

亥と卯と未は三合木局(さんごうもっきょく)。亥で創出された生命エネルギーが、卯で日の目を見て、未で大きく茂った木となります。

 

ということは、亥は種まきのタイミング。しかも亥の上に載っているのが己、すなわち大地です。これが辛亥(かのとい)の年でしたら、辛は鋭利な刃物ですから、せっかくの種を刻みかねませんし、丁亥(ひのとい)でも、炎が熱すぎて植物の生育には不向きです。癸亥(みずのとい)は陰の極地で寒すぎるし、乙(きのとい)亥は草が多すぎて間引きが必要。

 

となると、己亥が最も成長のポテンシャルが高い年です。

 

じゃあ具体的に何をやるかとなると、本人の五行のバランスや器の大きさによってそれぞれですが、これまでと同じ流れの上にあぐらをかいていてはだめということは共通しています。

 

私自身に関して言えば、3年前から始めた日本語教師もそろそろ次のステップを考えるべき時期かもしれません。日本オタクの学生と学ぶゆるい授業という目標は達せられましたが、いつまでもこのままではいられないでしょう。

 

人生の店じまい、撤退戦に突入した50代後半という年齢で、種まきなんて考えている場合ではなさそうですが、だからこそ手を打っておかなければならないと思います。

 

目先の利益ではなく、後世のためになる事業に投資するとか、ギャラが低いかボランティアであっても、ささやかだけど役に立つ仕事を始めるとか。

衰えていく中でも、やることがあるというのは、年を重ねていく中で大きな支えとなっていくでしょう。

若い頃のように大きな花を咲かせようと意気込まず、小さな目立たない花でも、これから育ててみたいものです。

  

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 韓国・釜山のお寺には十二支を擬人化した像が立っていました。酉、戌と来て手前が亥。中国や韓国では亥は豚です。

 

2019年は60年に一度の己亥(つちのとい)の年

東洋占術を学ぶ前は、干支を気にするのは年賀状のデザインを選ぶ時ぐらいでしたが、今は年運の切り替わりを意識するようになりました。

 

干支は十二支の支の上に干が載っており、全部で60パターンあります。甲子園の甲子は「きのえね」。1924(大正13)年は甲子の年でした。

戊辰戦争壬申の乱辛亥革命など西暦が一般的になる前は、干支が使われていました。平均寿命が60年以下だった時代は、60の干支を言えば「ああ、あの年」と共通認識できたからでしょう。

 

今年は戊戌(つちのえいぬ)の年で、来年は己亥(つちのとい)の年。

東洋占術では、2月4日の立春をもって新年とするのですが、元日を迎えると世間は一気に新年となるので、己亥の気も前倒しで強くなってきます。

いずれにせよ、占いは先読みなので今から己亥について考えておいて損はないでしょう。

 

 

【新装版】干支の活学―人間学講話 (安岡正篤人間学講話)

【新装版】干支の活学―人間学講話 (安岡正篤人間学講話)

 

  

毎年、この時期にこの本を開きます。

安岡正篤は「平成」の案を出したと言われる陽明学の大家ですが、平成の次は誰が考えているのでしょうか。

 

この本には己亥の年の記述はありませんが、昭和44年の己酉、昭和54年の己未、そして昭和46年の辛亥が参考になります。

そして、四柱推命の講座に通っていた時のノートを取り出します。四柱推命と易、九星気学の講座のノートだけは断捨離できません。

 

 

「己」は、糸のもつれを正して規律を正すという漢字。「戊」で茂りに茂った諸々を解消して。筋を通さなくてはならないと安岡正篤は書いています。

 

また、己は自然界では大地を示し、規則正しく畝を作って生産にいそしむことを示す字ともいわれます。四柱推命で自分自身を示す日干(にっかん)が己の人は、生産的であればあるほど開運します。怠け者の己は、土地は土地でも荒れ地や産廃置き場で、すさんだ人生になってしまいがちです。

 

一方、十二支の亥は核の右部分。十二支の最後とされていますが、次のサイクルに向けて準備している状態です。

茂みから突如と現れ突進するイノシシのように、何事かが突然現れるイメージもあります。

 

上に乗っかっている己は、規律、勤勉なのに、下の亥は制御できない起爆性エネルギー。

己亥の年は相当ややこしい年になりそうです。

 

参考になるのが60年前の1959(昭和34)年。

皇太子のご成婚がありました。己亥の年に成婚、60年後の己亥の年に退位。節目通りの折り目正しい選択です。

 

当時の大蔵省は貿易為替の自由化推進を決定し、ドル相場が自由化。景気は拡大し、岩戸景気の真っ最中です。

60年で世相も一回りするのなら、来年の景気にも大いに期待できそうですが、そうぴったりとは重なりません。

国を人にたとえれば、1959年の日本は若かった。若い時期に己亥が巡ってチャンスをつかんで成功したとしても、年老いて同じ干支が巡って来たら、持て余してしまいます。

 

一般に木火土金水の陰陽五行で火が強い年は景気が拡大し、水が強い時期は縮小すると言われます。

己亥は五行の土と水の組み合わせ。土剋水(どこくすい)で水のエネルギーを土で抑えます。本当に水が強くなるのは2020年の庚子(かのえね)の年。庚は金で子は水。金生水(きんしょうすい)で水のエネルギーは一気に強くなります。

日本経済、来年はなんとか持ちこたえたとしても2020年にはどうなるのか。オリンピックや万博どころじゃないような厳しい年にならないことを祈ります。

 

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那覇の福州園には十二支の石像があります。中国式の庭園ですから、十二支の亥は豚。食欲旺盛で丸々と太る豚は中国では財の象徴であり、亥の年は金運アップの年とされます。己は土行であり土も財です。さしずめ「黄金の豚」の年。中国や台湾、韓国では来年の景気については楽観的な予測が出ていることでしょう。