旅の目的にグルメを挙げる人は多いでしょうが、自宅より旅先にいることの多いのでご馳走ばかり食べるわけにはいきません。ダンスのクラスを続けるために体重を増やしたくないし、若い頃と比べると食事の量も減りました。
思想信条とは裏腹に食事に関してはかなり保守的。日本食が一番落ち着くし、味付けは生まれ育った西日本の薄味が好み。海外での食事はどれも味が濃すぎるように感じます。ニューヨークで食べたハンバーガーやチョコレートケーキは脳天を直撃するような主張の激しい味でした。
肉を食べないわけではありませんが、塊肉とか鶏の丸焼きといったいかにも肉食は苦手。ハンバーグやコロッケを食べる程度です。子供の頃は夕食がすき焼きだと野菜と豆腐、こんにゃくばかりに箸を伸ばしていたので肉を食べるように親によく言われていました。
そんなわけでお菓子メーカーのUHA味覚糖をもじって「右派味覚党」を名乗っています。
寿司やラーメンは世界中に進出していますが、右派味覚党として支持したいのは日本の定食。というわけでニューヨークでも大戸屋に行ってみました。

ニューヨークに大戸屋は3店舗あります。行ったのはユニオンスクエア店。
気軽に入れる日本の店舗とは違い、高級日本食店という位置付けのようでした。

鮭の西京焼き定食。ご飯を主食に主菜と副菜、味噌汁。ほっとします。お昼だったのでドリンクは頼みませんでしたが、税金とチップを合わせると30ドルを超えました。
台湾にはおいしいものがたくさんありますが、本格中華より日本の町中華がなつかしくなり、やはり大戸屋に。味付けが少し台湾風に寄せているようで、ニューヨークのほうが日本の味に近いように感じました。
JALの機内誌に連載中の浅田次郎「つばさよつばさ」に十数年前のモンテカルロでの食事シーンが出てきました。モナコは観光立国なのでサービスが行き届いており、浅田次郎が席に着くとボーイが割り箸を持って来ます。
突如、周囲の視線を感じます。当時は日本円もそんなに弱くなく日本旅行ブームも起こっていないため日本人が珍しく、モナコに集うセレブたちは日本人の箸を使う食事作法に興味津々だったのです。
期待に応えようと「いただきます」と日本語で高らかに言い、割り箸を両の親指に挟み合掌、瞑目して低頭。割り箸を丁寧に割り、背筋を伸ばしてサムライの気分で食事開始。
「ごちそうさまでした」と再び合掌、瞑目、低頭。さらに日本人の始末のよさをアピールするために食器を重ね、ナプキンもきちんと畳んで席を立ったのです。
このあたりの思考回路は私と同じ。スペイン巡礼で最も目立っていたのは韓国人、次が台湾人。日本人だって歩いているとアピールしたくなりました。
右派味覚党を名乗るのなら、食事の内容だけでなく食事のスタイルにもこ使わねば。タブレットやテレビを見ながら食事をするのはやめようと決意しました。