『運は遺伝する』という刺激的なタイトルの本。
ベストセラー作家の橘玲と行動遺伝学が専門の慶応義塾大学名誉教授の安藤寿康の対談。橘玲の『言ってはいけない』を読んだ安藤寿康が、「偽悪的芸風の行間に垣間見られる愛」があると感じて実現した対談です。
まず、運が遺伝するとは? 親の運が悪かったら子どもも運が悪くなるのでしょうか。
体力や抵抗力は遺伝しやすいので、いざというときに踏ん張りがきかず病気になったりすると不本意な境遇に陥るのはありがちでしょう。
強盗や交通事故といった遺伝とは関係なさそうな不運も、「危険な場所を恐れない」「目立つ行動をする」「不注意」といった行動パターンによって引き起こされたなら、遺伝が影響しています。
これまで遺伝について大っぴらに語ることはタブーであり「優生思想だ!」と非難されることを恐れて遺伝学の研究がなかなか進まなかったという話。日本では「人の能力を決めるのは遺伝ではなく環境」「大事なのは教育」とされていたから。そうした建前により、発達障害の子どもを持つ親は「自分の育て方が悪かったのでは」と自責の念を抱きます。育て方ではなく遺伝の要因のほうが大きいと知って救われる人も多いでしょう。
容姿や身長、体重、運動能力については遺伝の影響が強いのは暗黙の了解。歌舞伎の世界に至っては「芸事の血」が代々受け継がれることが前提です。大ヒットとなった映画「国宝」の裏テーマは糖尿病ではないでしょうか。名門の血を受け継いだら糖尿病を発病するのですから、いいことばかりではありません。
『運は遺伝する』では、遺伝のおかげで成功した人は、社会貢献すべきかという話題も出ます。
たとえば、イーロン・マスク、ジェフ・ベゾス、ビル・ゲイツ、スティーヴ・ジョブズといったシリコンバレーの成功者。彼らの親は富豪や名門ではありませんが、莫大な富を築けたのは、優秀な遺伝子と運によるものです。
欧米のリベラル(左派)は「遺伝ガチャにたまたま当たっただけでとてつもない金持ちになるのは不公平。超富裕層に課税して、その富を貧しい人たち分配すべきだ」という「運の平等主義」を主張しているそうです。

格差社会を描いたコロンビアのストリートアート。
精神的、肉体的にはあまり好ましくない遺伝子を受け継いだような気がしますが、世俗的にはまずまず人生だった私はどうやって社会還元すべきか考え続けています。

