お金持ちになるには高級ホテルのティーラウンジでお茶を飲むといいという説があります。一流のサービスを受けるにふさわしい振る舞いをすることで、お金持ちの感覚が身に付き、自然にお金の流れが良くなるという理屈ですが、そう簡単にはいかないでしょう。「このコーヒー一杯でドトールなら何回行けるんだろう」と計算してしまい、落ち着きません。
JALのグローバルクラブにはダイヤモンドやプレミアなど細かいランクがあり、私は一般会員向けのサクララウンジを使用しています。ファーストクラスラウンジには入れないのですが、資格のある会員の同行者1名は無料で利用できるので、社会見学のつもりで連れて行ってもらいました(私が乗るのは、いつもエコノミークラス)。
サクララウンジの食事はビュッフェなので、混雑時には公園のの炊き出し状態みたいになることもありますが、ファーストクラスラウンジは注文したメニューをテーブルまで持ってきてくれます。航空会社の経営はファースト、ビジネス客からの利益で成り立っているのに、エコノミー客でありながらラウンジを利用して申し訳なくなります。

寿司以外にメニューが取り揃えられているので、機内食不要の手続きをしておきました。
本当のお金持ちは、ラウンジでがつがつ食べたりしないのでしょうが、貧乏性なのでデザートまで注文。満腹になったところで奥のライブラリースペースに移動。

この立派な机でメールチェックを渡航先の情報を集めたり、渡航先のチェンマイの情報収集。
こんな立派な場所なのに、私以外には誰もいません。
入った時に執事風の男性から挨拶されました。その後、ぽつぽつと人が来て何かをお願いしています。聞き耳を立てていると、どうやら靴を磨いてもらっているようす。靴を預けて、スリッパを借りて、出来上がったころに取りに来る方式です。

奥のデスクが靴磨きの受付。あまりにも興味深いので、お手隙の時間を狙って話を聞かせてもらいました。
イギリスの高級靴ブランド、ジョン・ロブ出身で、JALのラウンジの一画を英国風にまとめるにあたり、企画段階から関わったとのこと。渡航前は何かと忙しく、靴磨きまで手が回らないという人向きのサービスです。
私の靴に目を向けて「磨きましょうか」。革靴ではなくモンベルのトレッキングシューズなのですから、びっくりしました。ちなみにファーストクラスクラスラウンジにはシャワーブースもあり、Tシャツ姿の旅行者もいて、ドレスコードはありません。私は旅の定番、全身モンベルです。
下の白いラインをきれいにできるというのでお願いすることに。出発の確認のために搭乗券を出すのですが、エコノミー客であることはそれまでの挙動から丸わかりでしょう。
「バンコクまで。そして乗り継ぎ。ということは、最終目的地はチェンマイですか?」
まさに「足元を見る」。チェンマイはタイ北部の山歩きの拠点としても人気の旅行先ですから、搭乗券とトレッキングシューズを出した時点で行き先が推理できるのです。
なお、旅行直前にチェンマイに何度も行った人から話を聞けたというのは、この方のことです。
出発前の羽田空港で、一つの旅に相当する濃密な体験ができました。
靴磨きに特別な思いがあるのは、私の人生を変えた映画の一つがアキ・カウリスマキの「ル・アーブルの靴みがき」だからです。