翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年秋、スペイン巡礼(フランス人の道)。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。おかげさまで重版になりました。

先を急がず生きる

仕事からは引退するはずだったのに、なんだかんだと編集者から連絡があり、あわただしい日々が続きましたが、ようやく一段落しました。会社勤めとちがって、フリーランスには、はっきりとした引退はないのでしょう。

 

学校を卒業して働き始めてから、ずっと「締切より早めに出す」「もっと効率的に」という言葉に踊らされてきました。

熊野古道を歩く時も「今日は7時間半も歩かなくてはいけないから、早めに出発して、夕方には目的地に着いて立ち寄り温泉に行く」と目論んでいました。

 

ラテン的な生き方がまったく身に付いていないのです。

bob0524.hatenablog.com

 

熊野古道からの帰り、白浜温泉に一泊しました。南紀白浜空港から近いので。

紀伊田辺駅から白浜温泉行きのバスに乗ると、白浜駅からどっと人が乗って来ました。さらに人気観光スポット、とれとれ市場ではバス停に長蛇の列。とても全員乗れそうにありません。運転手さんが「もう一台バスが来ますからお待ちください」とアナウンスして、ドアを閉めようとしたところ、列の後方から数人の人たちが走って来て強引に乗り込んできました。列の先頭の人が「並んでいるんですけど」と声をかけても、おかまいなし。乗った人に降りろというわけにもいかず、そのままバスは出発しました。

次のバスがいつ来るかわからないし、数分の距離なら無理やり乗り込んで目的地に早く着きたいと思うのは誰も同じ。ずうずうしい人が得をする世の中。

 

行き交う人とにこやかに挨拶を交わしていた熊野古道を離れて、俗世に戻って来たと感じた瞬間です。

出家でもしない限り、俗世で暮らすしかありませんから、せめて自分だけは先を急がないようにしよう。そのうち仕事もなくなり、時間はたっぷりあるのだから、急ぐことはなくなるだろうし。

NETFLIXの「クィア・アイ」で、ジョナサンがよく"After You."と言います。ドアを開けて、「お先にどうぞ」と相手を先に通すのです。ジョナサンのソフトな口調がとても素敵。私も口癖にしたいものです。

 

熊野古道のハイライトは、発心門王子から熊野本宮大社までの7キロ。比較的歩きやすく休息所や道案内もよく整備されています。

イタリア人グループに道を譲ったら「グラッツィエ、シニョリーナ!」。さすがイタリア人、一人で歩いていれば高齢女性も「お嬢さん」か。

善意の人しか歩いていなかったのは、みんな聖なる道を歩く幸福感に包まれていたから。だからこそ巡礼の道なんでしょう。