翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

神様の御用聞き

今年も押し詰まって来ました。心はもう新年に飛んで、初詣に思いを馳せる人もいることでしょう。

易者として冬至に年筮を立てていると「早稲田の穴八幡宮にお参りしますか?」とよく聞かれます。冬至から翌年の節分まで一陽来復のお守りとお札が授与される神社で、お札を恵方に向くように張ると金運のご利益があり。冬至に大行列ができるそうです。

寒い日の早起きも人混みも苦手なので行ったことがないのですが、お守りとお札が授与されるのは冬至の午前5時からなので、前日から門前にテントを張って待つ人が出現。東京には雪が降っていないとはいえ、夜明け前はかなりの寒さです。そこまで熱心に金運を求める欲の深さが恐ろしいし、そのエネルギーを別方面に向けたほうが金運は上がるような気がします。

 

数年前、日本語教師養成講座に通っていた頃、神社で「日本語教師にしてください」と熱心に祈願していました。東洋の吉方取りは私の専門。南は日が当たって明るい場所ですから文化文明、教育を司ります。たまたま南に吉方が巡る時期を選んで、三浦半島の神社にお参りに行ったものです。

効果は抜群で、外国人留学生相手に教壇に立つことに。ホストファミリーをしているというコネを最大限に使って採用されました。欧米の富裕層の子弟向きの学校だったので、外資系企業で働くというあこがれも実現したのです。

 

しかし「学生はカスタマー、教師はサービス提供者」なので、学生からの評価によっていつ首を切られるかわからない緊張状態の連続。本社があるヨーロッパ、アジア統括本部のシンガポールから来日する上司との対応にも神経をすり減らし、消耗する日々を3年間続けました。ダイエットもしていないの体重が減り、今より4キロ少なく理想体重でしたが、当時の写真を見ると生活苦の貧相な女にしか見えません。

 

神様は「教師に向いていないのに、本当にいいの?」と困惑しながらも「そこまで熱心に願うのならやってみたら?」と夢をかなえてくれたのでしょう。

母の死をきっかけに、洗脳が解けたかのように日本語学校を休職。翌年からコロナで学校自体が休校状態となりました。

今年の春、学校から「週1日でもいいから」と復職の要請が来ました。恐るべし、神社パワー。まだお願いが生きていたのです。あれほど望んでいたことであり、学校も人手不足で困っているというのに、引き受けられませんでした。熱意が消え、あの緊張状態に再び耐えられるとは思えなかったから。身の程知らずの願望で神様と社会に迷惑をかけたと反省。

 

以来、神社で何かをお願いするのはやめました。替わりに「私に何かできることがあるなら、ご用命ください、私を道具として使ってください」と神様の御用聞きとなって手を合わせています。年を取ってできないことが増えても、それなりの役割を与えてもらえることを期待しながら。

 

10年以上前、関西に帰省した折に再会した奈良の友人が「高校時代の同級生が働いてんねん」と大神神社に連れて行ってくれたことがあります。お土産店か素麺屋さんのパートかなと思ったら、なんと権禰宜さん!

東京からライターがやって来たという触れ込みで立派な応接室に通されて恐縮。「便宜上、神道にしているけれど、ご神体は三輪山だから自然崇拝の原始宗教のようなもの」と説明していただいたのを覚えています。

「お金がほしい」「病気を治したい」「結婚したい」といった世俗の願いはとりあえず脇に置いて、自然に対する畏敬の念から手を合わせるのが宗教の本来の姿なのでしょう。

 

新潟の今代司酒造の酒蔵には大神神社の杉玉がありました。酒造りの神社としても有名なので、次回の参拝では「酒癖が少しはよくなりますように」という願いがよぎるかもしれません。

スペイン巡礼のためにピレネーを越えるのも大変そうですが、三輪山登頂も往復4キロで2~3時間のけっこうハードな行程。私がまず行くべきなのはスペインより奈良かもしれません。