翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

『末期ガンでも元気です』著者ひるなまさんを悼む

大腸の末期ガンの闘病記をネットで見かけ、ウサギの絵柄に惹かれて最初のあたりを読んでいました。著者の漫画家、ひるなまさんが亡くなったというニュースを読み、単行本化されていることを知り、最後まで読んでみました。

 

定期的な健康診断ぐらいしか病院に行かない私にとって、検査や告知、手術、入院、抗ガン剤治療など一連の描写は初めて知ることばかり。

主人公と身内は鳥獣戯画みたいなキャラクターなので、闘病の重苦しさを感じさせません。そして病院のスタッフは全員、美男美女で仕事熱心に描かれていて、ひるなまさんの感謝の気持ちが伝わってきます。

38歳の若さで余命宣告を受けた衝撃は想像もできませんが、漫画という表現手段を持っていたことが大きな支えとなっていたようです。

「手術前後の苦しくつらいときは『せっかく漫画家がガンになったんだから、必ずこの体験を描いてやるぞ』と強く念じることで痛みに耐えていました。今は描くことが生きるモチベーションになっています」とインタビューで語っています。

そして「時系列で情報を整理し起承転結を付けていくことで、現実の煩雑な出来事や感情が渦巻く自分の脳内も整理されていきました」という発言に大きく刺激を受けました。

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オリジナル作品を出せる才能はなく、依頼原稿をこなすだけのライターとしてキャリアを終える私ですが「書くこと」は人生を整理することに通じます。このブログと、仲間とやっているウラナイ8に週1回メッセージを書くことで、自分がどう生きたいかが明確になってきます。スペイン巡礼にしても、漠然とあこがれているだけでは遠い夢ですが、思いを書き綴っているうちにだんだんと身近なものに感じるようになりました。

 

『末期ガンでも元気です』で最も反響がが多かったのは内視鏡検査と虐待の回。実はひるなまさんは、親からの虐待サバイバーです。

どうしてそんな話が出てきたのかというと、入院には身元保証人が必要だから。

これは両親を施設で看取ってもらった際に私も経験しました。かかった費用を清算し、「いよいよとなった時、救急車を呼ぶか、呼ばないか」「亡くなったら、どの葬儀社に任せるのか」の決断を下す人がいないと、どうしようもないのです。

ひるなまさんは「いまわの際に、まさか一生怨み嫌い憎んでいるやつに連絡され、まして私の生死を握られるなんて絶対耐えられない」と両親を保証人にしない道を選びました。

 

子どものいない私にとっても切実な問題であり、60代になる前に死後事務委託に加えて施設や病院の身元保証も引き受けてくれる団体と生前契約しました。業界の中では老舗で全国に8か所支部があるので、とりあえず私が死ぬときまでは大丈夫だろうと判断しました。都市部では保証人の当てがない高齢者が多くなり、疎遠な親戚に無理やり頼んでトラブルになるよりも、こういう専門団体の保証のほうを好む施設や病院が増えているそうです。

 

ひるなまさんは自宅から眠るように旅立たれたそうです。『末期ガンでも元気です』の続編が読めないのは残念ですが、この作品を描いてくれて、本当にありがとうございました。

 

出雲大社の境内のあちこちに、かわいいウサギがいます。