翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)、ビジネス記事翻訳ですが、そろそろリタイア状態へ移行中。JALの「どこかにマイル」で日本各地に出没。ウラナイ8で活動しています。

俗世でサバイバル

穂高養生園から自宅へ戻りました。

あの独特な雰囲気は何と表現したらいいのでしょう。呑兵衛の私がお酒のことを一切思わない空間。そして、朝10時半、夕方5時半の一日二食でお腹がすくこともなく、近辺のトレッキングコースを歩き回っていました。そして温泉に加えて水風呂が! サウナより水風呂を愛する私にとって、こんな完璧な環境は他にありません。

そして、穂高養生園のスタッフは自然と共生し、訪問者に安らぎを与えるという使命を帯びた天使のようなイメージ。厨房はホールからガラス越しに見渡せます。何時間もかけて調理して、細部から手の込んだマクロビ料理ができあがるのです。

食べた後の食器は自分で洗うのがルール。最初は「客なのに、なんで皿洗いを。旅に出たらのんびりしたいのに」と思ったのですが、食器だけならそんなに大変じゃありませんし、厨房スタッフへの感謝の行為です。一人一枚用意された布巾で食器を拭き上げるのは、食後の楽しい儀式となりました。

タオルや歯ブラシは持参、チェックアウト前にシーツ、掛布団カバー、枕カバーは外して所定の籠に入れておきます。そしてシャンプー、ボディソープ、洗濯洗剤は備え付けのものを使い、香りの強い製品や柔軟剤が使用禁止なのは、化学物質過敏症の方への配慮です。

 

三泊四日の滞在を終えて、下界へ。

自宅で荷をほどき、翌日の朝食用のバナナや牛乳、ヨーグルトを買うために「まいばすけっと」へ。有人のレジが二台、セルフレジが一台のコンパクトなお店ですが、定番商品がスーパー価格で買えて野菜や生鮮食品もあるので、我が家の冷蔵庫と呼ぶほど活用しています。

私の前のお客さんが何だかもめている様子。セルフレジが使用中だったので、「次のお客様」と呼ばれてレジの台にカゴを乗せると「まだ客がいるのに、次の客を呼ぶんじゃないよ!」と怒気をはらんだ女性の声が飛んできました。会計が終わったのに、まだ文句を言いたかったのでしょうか。

ああ、再び俗世に戻ってきたんだと実感した瞬間です。穂高養生園ではこうしたクレームや悪意、いら立ちとは一切無縁の世界でしたから。

怒りの女性が店を出るのを確認して、レジの若いお嬢さんに「気にしないでね」と声をかけました。「お気遣い、ありがとうございます」「こちらこそ、いつもありがとう」という会話で、少しでも心の傷が癒されるといいのですが。

サービスが売りの一流ホテルやレストランならいざしらず、コンビニやファストフードの店員さんに多くを求めすぎる人がいます。その一方で、レジの担当者の人格をまったく無視する人も。「イヤホンをしたまま会計をするお客さま、私たちはロボットじゃありません」という投書を読んだことがあります。

 

穂高養生園は天国のような場所ですが、たまに行くからいいのであって、ずっといたら浮世離れして退屈しそう。トラブルも起こるし、思い通りにならないことも多いけれど、私は俗世で生きることにします。

 

俗世と天国を結ぶ特急あずさに乗ると、いつも心が弾みます。