東京のオリンピック招致が決まった2013年9月、私はフィンランドにいました。
カウチサーフィンで泊めてもらっていた編集者のエリカが職場を案内してくれるというのでヘルシンキの出版社を訪れていました。
その日はノキアがマイクロソフトに買収されるというニュースも舞い込んできました。「ノキアはフィンランド人にとっては希望の星だったから、今日は戦争に負けたような気分」とエリカの同僚。来日経験もある彼女は「オリンピック開催するに向けて、ますます混雑するだろうけど、日本には勢いがある。こんな小さな国であるフィンランドとは違う」と続けました。
それがこんな展開になろうとは。
人と同じように国にも運気のアップダウンがあるのなら、よりによってこのタイミングでオリンピックを招致するのは、なんと運が悪いことか。フィンランドと日本はロシアの隣国という共通点がありますが、ロシアによって苦汁をなめてきた歴史を持つフィンランド人からすると日本がうらやましいと言われましたが、日本の運気も尽きてきたのでは。
一方のフィンランド。ノキアは通信設備メーカーとして復活を遂げ、国別の幸福度ランキングではいつも上位にランクインしています。
どんなに運のいい人でも、一生同じ状態が続くわけではなく、何をやってもうまくいかない時期が必ず巡ってきます。
低迷期を脱して、次に巡って来る幸運を享受する人は、損切りができます。
どんなに敏腕なトレーダーでも、値上がりする株ばかり買っているわけではありません。思わぬ展開で目論見がはずれることが必ずあります。損切りして被害を最小限に抑えて次の投資先を探し、トータルでプラスになればそれでよし。私は投資先を選ぶのに占いを使いませんが、易経の山沢損(さんたくそん)から風雷益(ふうらいえき)の流れを知ったことで、損切りがうまくなりました。
投資だけではありません。
たとえば、結婚まで考えた相手のぞっとする本性が見えた時、きっぱり別れられるか。
お金もエネルギーもかけて取った資格が役に立たない、あるいは自分に向いていない、その業界に未来がないとわかったら、さっさと次に行けるか。
そして現在、日本がオリンピックを損切りできるか、世界から見られています。
これまでかけてきた費用が無駄になるから予定通りオリンピックを開催すべきだという政治家は、へたくそな投資家と同じ。いつになったら損切りするのか、じりじりしながら待っています。
フィンランドの友人たちとヘルシンキ郊外の森によく出かけました。日本から一番近いヨーロッパ。思い立ったらいつでも行けるはずだったのに、ずいぶん遠い国になってしまいました。