旅先では、観光スポットを巡るより、地元の人が行く居酒屋や公衆浴場に行くほうが好き。さまざまな人生を垣間見て、考える種をたくさん与えられるから。外出自粛期間は、ドラマや映画を楽しみましたが、本拠地を離れて直に異なる文化に触れるが旅の醍醐味でしょう。
よく参考にさせてもらっている女性一人旅のブログがあるのですが、温泉宿におひとり様で泊まるけれど、公衆浴場にはめったに行かないとありました。
理由は、地元の人に話しかけられるのが苦痛だから。妙齢の未婚女性にとって「一人で来たの? 結婚しているの?」と質問されると、心穏やかではいられないでしょう。
私はその段階は卒業しているので、地元のおばちゃんの質問も平気です。ただ「子供はいない」と答えた時に、「まあ…かわいそうに…」と同情されると、どう対応していいのかわかりません。もともと母性が欠如している私は、子供が欲しいと思ったことがありません。
そんな居心地の悪い思いをするのに、なぜわざわざ旅に出るのか。東京にいれば、誰に干渉されることもなく気ままに暮らせるのに。
その答えはこうです。
半径数百メートルでなじみの場所だけを行ったり来たりしていれば、不快な目に遭うこともありません。でも、人間はすぐ心地よい環境に慣れてしまいます。その幸せは限定的なもの。自分に合った土地に暮らしているからこそ、のびのびと呼吸できるのです。それを実感するために旅に出てハプニングに遭うのも一興ではないでしょうか。
山形・銀山温泉の立ち寄り湯「しろがね湯」は観光客と地元客の時間を分けているので、妙齢の女性も安心して入れるはずです。
幸せの形は人それぞれ。そうわかっていても、人と自分を比べて不幸を嘆くのが人間の常です。あちこちに旅してさまざまな幸せの形を見ることで、自分の人生はこれでいいのだと実感できることこそ旅の醍醐味です。
コロナが収まることなく、東京から旅に出るのははばかれる状況になってしまいました。再び旅に出られる日を夢見て、さまざまな幸せの形に思いを馳せています。