六花の村に行きたかったのは、テレビ東京の「カンブリア宮殿」に六花亭の社長、小田豊氏が出演する回を見たから。
六花亭の本社は帯広。東京出店の誘いは何度もあったけれど、あえて進出せず北海道にとどまりました。東京ではデパートの北海道物産展などの催事でしか買えないので、六花亭のコーナーはいつも大人気です。
東京に進出しなかったのは、品質維持にこだわったためですが、コロナ禍で多くの企業が大きなダメージを受けている今となれば、英断といえるでしょう。
六花亭では従業員の意見を積極的に採用し、報奨制度も充実。残業ゼロで有給は100%取得。社員・パートで6名以上で旅行に行くとなれば旅費を会社が7割負担してくれるそうです。
そんなホワイト企業で作られているお菓子だと思うと、ますますおいしく感じられます。
六花の森にある花柄包装紙館。六種の花を描いた坂本直行氏がコラージュした原画が並んでいます。
東京ドーム約2個分の広さがあるという六花の森。心地よく晴れた初夏の一日だというのに、駐車場はがらがらです。地元に根強いファンがいるとはいえ、観光客のお土産需要激減で六花亭の業績にはかなりの打撃なのでは。
しかし、六花の森のスタッフはそんな心配を微塵も感じさせません。
包装紙に描かれた十勝六花は森のあちこちに植えられています。「シラネアオイ」と書かれたプレートを読んでいると、通りがかった園芸担当のスタッフが「シラネアオイは春が見頃で、もう終わりました」と申し訳なさそうに声をかけてくれました。
カフェで水のおかわりをもらおうと給水機に近づいたら、スタッフがあわてて飛んできて「感染防止のために、給水機を止めてあるんです。申し訳ありません、気がつかなくて」と頭を下げます。
「給水機をご存知ということは、もしかして、こちらには二度目ですか?」と聞かれました。富良野と帯広本店に行ったことがあると答えると「7月1日から、本店も営業再開になったんですよ」と本当にうれしそう。愛社精神がひしひしと伝わってきます。
営業再開した帯広本店でもきびきびと働く人々を目にしました。スタッフの花の刺しゅう入りのマスクが素敵で、お客さんから「売ってないの?」「写真を撮っていい?」と声がかかっていました。残念ながら売り物ではないそうです。休業期間中にアイデアを募って制作したのかもしれません。
全国チェーンの企業はマニュアルがしっかりしていて、どこでも一定の基準のサービスを受けることができますが、地方を旅すると、こういう地場産業の強さを感じられるます。