翡翠輝子を名乗るようになって、日本国内唯一の翡翠の産地である糸魚川にぜひ行ってみたいと思っていました。
2016年に糸魚川で大規模な火災が発生。午前10時に出火、日本海の強風にあおられてあっという間に燃え上がり、翌日の夕方まで30時間燃え続けたそうです。
自然災害ではない火災でこれほど大きな被害はめずらしいのではないでしょうか。
火災があった地区を歩くと、新しい家も立ち並び、かなり復興していました。
「糸魚川温泉ひすいの湯」へ。お隣の姫川駅から徒歩5分。大糸線の本数が少ないのですが、バスも走っていました。フォッサマグナから湧き出るお湯がすばらしいし、サウナと深い水風呂も完備。雄大な山と川が広がる露天風呂には外気浴のスペースもあります。
観光案内所の人はもちろんのことですが、ひすいの湯の人たちもホスピタリティあふれていました。受付のおじさんも愛想よく館内の案内をしてくれるし、閉店時間が2時だと知らずに軽食コーナーに行ってしまったのですが、こころよく生ビールやつまみを出してくれました。
糸魚川駅には「ヒスイ王国館」という観光物産館が隣接しており、せっかく翡翠の産地に来たのですから、何か翡翠を買おうかと売り場を見て歩きました。食べ物以外のお土産を買わない旅を実践しているけれど、特別な機会ですし。しかし、いいなと思ったものはけっこうなお値段です。
その時ふと思い出したのが『ムーミン谷の彗星』。
ガーネットの谷でガーネットの美しさにうっとりし、一つでもたくさん持って帰ろうとしたスニフ。だけど、オオトカゲににらまれ、せっかく拾ったガーネットを落としてしまいます。
がっかりしているスニフに、スナフキンはこう言います。
「自分で、きれいだと思うものは、なんでもぼくのものさ。その気になれば、世界じゅうでもな」
「ものは、自分のものにしたくなったとたんに、あらゆるめんどうが、 ふりかかってくるものさ。運んだり番をしたり…。ぼくは、なんであろうと、 見るだけにしている。立ち去る時には、全部、この頭にしまっているんだ。 そのほうが、かばんをうんうんいいながら運ぶより、ずっと快適だからねぇ…」
ヒスイ王国の入り口には巨大な翡翠の原石が飾ってあるし、駅前のヒスイロードにも勾玉やオブジェがごろごろあります。この地だからこそ翡翠も輝くのであって、東京に持って帰っても意味がないのでは。スナフキンのいう通り「糸魚川という翡翠の街がある」ということは頭にしまったし。
糸魚川で一泊し、翌日は「えちごトキめき鉄道」と「愛の風富山鉄道」を乗り継いで金沢へ。電車の発車までヒスイ王国館のカフェへ。閑散としていてお客より働いている人のほうが多い状態。コーヒーはとてもおいしかったし、カップやトレイも素敵でした。
ヒスイ王国館で買った糸魚川名物の笹寿司を「えちごトキめき鉄道」で食べました。山菜や卵焼きの素朴な味。今回の旅で一番、買ってよかったものです。