「成功への抜け道」という占い師のアンチョコのような惹句に引かれてこの本を読みました。
著者のアレックス・バナヤンによると、成功への扉はナイトクラブみたいに3つ用意されているそうです。
1番目の扉は一般向け。長い行列に並ばなくてはいけません。
2番目の扉はVIP専用。
そして3番目の扉はその存在を誰も教えてくれません。成功者はこの3番目の扉を使う。
各界の著名人がどうやって3番目の扉を見つけたかを無名の大学生が突撃インタビューで明らかにしようと悪戦苦闘する話です。
執筆の動機は「成功者がいかにしてキャリアの足がかりを作ったか知りたいのに、書いてある本がなかったから」。
自分が読みたいものを書く。ライターとして理想的です。これから世に出る若者だけでなく、超高齢化社会を迎えてキャリアのシフトを余儀なくされる中高年にも役立つ本です。
ネットのない時代、人とつながるのは本当に大変でした。週刊誌の編集部に出入りしていたのですが、編集者に最も重宝されるのは文才のあるライターではなく、取材源へのルートを持っているライターでした。企画が決まったら、まず取材のアポ取り。「アポが取れたら、仕事は半分終わったようなもの」とよく言われたものです。
ルートを増やすために私がよくやったのは、実際に取材した相手とのつながりを強めること。掲載誌や礼状を送っておくと、「インサイドマン」になってくれる可能性があります。インサイドマンとは、内部の関係者。取材したい人に直接つながるのがむずかしい時は、関係者とつながるのです。
スティーヴン・スピルバーグにとってのインサイドマンは、ユニバーサル・スタジオで働いていたチャック・シルヴァーズ。
ユニバーサル・スタジオのツアーバスに乗ってあちこちを見て回った後、こっそりトイレにこもってツアーバスをやり過ごし、偶然出会ったシルヴァースに映画への熱意を伝え、3日間のフリーパスをもらいます。3日間ユニバーサル・スタジオに通いつめ、4日目からは顔パスに。それから3か月間、防音スタジオや編集室に潜り込み、映画作りのノウハウを独力で吸収したのです。
私のインサイドマンは、別の取材源を紹介してくれたり、新規の仕事先を紹介してくれフリーランスのライターとして仕事は順調に発展していきました。
「サードドア」を書いたアレックスがインタビューしたいのは、スティーヴン・スピルバーグやウォーレン・バフェット、ビル・ゲイツ、レディー・ガガといった超有名人ですから、そう簡単にはいきません。悪戦苦闘がリアルに描かれています。
一番おもしろかったのは、ジェシカ・アルバのインタビュー。テレビシリーズ『ダーク・エンジェル』のセクシー女優として有名ですが、なんと数十億ドル規模の会社「ザ・オネスト・カンパニー」を経営しています。
アレックスが3番目の扉の話をすると、ジェシカも深く共感します。
このドアもあのドアもそのドアも閉ざされているなら、どうすればいい?
自分の力で解決するしかないじゃない。常識を働かせたり、人脈を作ったりしてね。どうやってドアを開けたかは問わない。とにかく中に入るしかない。
ジェシカの会社はこうした採用方針で人を採っているそうです。
高齢者ばかりの国になってしまい、できる限り長く働かなくてはいけない時代。新卒一斉採用みたいなフォーマットではなく、サードドアを探してどこかにもぐりこめる人が求められているのでしょう。
お客として入るのなら、わかりやすい看板が出ていますが、働く側になりたいのだったら、自分専用の扉を探さなくては。
8月8日から活動を始めたウラナイ8のメンバーには、ウラナイ・トナカイの関係者が多いのですが、トナカイとつながった扉はそれぞれ個性的でそれだけで物語になります。私の場合は、地元の行きつけの飲み屋、美容院に請われるままに占いイベントを企画したことで3番目の扉が開きました。
ウラナイ8も、関わる人にとって3番目の扉への媒介となることを目指しています。9月14日のお披露目会でぜひ新しいつながりを見つけてください。