忙しい毎日はいやだと思いつつ、欲の強さのために走り回っている日々。
息抜きになるのは旅です。
旅に行く前は、どんなところなのかあれこれ想像を巡らし、帰ってきたら思い出を反芻。
旅先ではお土産を買いません。家の中は物があふれて、なるべく買い物をしないようにしているので、思い出だけが残る旅はとてもいいお金の使い方です。
「お土産を買わない旅」を教えてくれたマイケルと会ったのはちょうど4年前でした。
ショッピングの時間を取らなくて済むので、観光の時間が長く取れますが、有名なスポットを見て歩くよりも、地元の人の日常を垣間見たり、思い入れのあるものに触れるほうが強い印象が残ります。
たとえば、ベトナムのハロン湾のホテルで出されたウェルカムドリンク。
しょうがの味が効いて、長旅の疲れが一気に取れました。チェックイン後、ホテルのバーのハッピーアワーに繰り出すと、バーマンがせっせとウェルカムドリンクを作っていました。チェックイン客がどんどん押し寄せているのです。
「それ、さっき飲んだけどすごくおいしかった」と声をかけると、「もっと飲む?」とおかわりをくれました。
二杯目もしみじみおいしい。どんなお茶の葉を使っているのか聞いたら、彼が取り出したのは何の変哲もないリプトンのティーバッグ。
紅茶は普通だけど、一晩かけて煮出したしょうがのシロップを入れるとのこと。
翌日、出向いた 野菜市場には葉付きのしょうががずらりと並んでいました。私が普段使っているチューブのしょうがでは、あの味は出せないでしょう。
風光明媚なハロン湾で珍しい光景も目にしたはずなのに、ハロン湾で真っ先に思い出すのはウェルカムドリンクです。
釜山でも忘れがたいのは、海を見渡す竜宮寺で飲んだゆずのお茶。瓶入りのゆず茶を水で溶かして氷を入れただけなんですが、坂道を登って疲れた体に染みわたるようでした。
しょうがとゆずのお茶、どちらも作ろうと思えば作れますが、旅先の味は再現できそうにありません。実際に作ってがっかりするよりも、思い出だけにとどめておいたほうがいいでしょう。
さて、次の旅ではどんな思い出ができるでしょうか。