私が教えている日本語学校は、短期留学の学生が多いので、夏の到来とともに学生数が急増します。
夏休み期間、あこがれの国の日本で学ぼうとやって来るオタク・スチューデントたち。
毎週月曜日、新しい学生が入ってきて、金曜日には誰かが卒業していきます。
そんな中、ひときわ強い印象を残したのが昨年の今頃教えていたベルギー人の女の子です。日本語の上級者で「このクラスが一番好き」と熱心に作文に取り組んでいました。ある日、取り乱したようすで教室にやって来ました。ホストファミリーとのトラブルです。旅行で不在になるにも関わらず、鍵を渡して私の家に泊めました。
この話には後日談があります。
秋にやって来た台湾人の女子学生。
とても親切なホストファミリーに滞在しているらしく、「あんなこともしてもらった、こんなこともしてもらった」と本当にうれしそう。
どんな家に割り振られるかで学生の日本での生活は大きく差が出るものだと思いました。
しかしその後、アコモデーション担当者と話していると、なんと、二人のホストファミリーは同じだということが判明したのです。
『月見座頭』という狂言があります。この本で読みました。
「この世に『いい人』と『悪い人』がいるわけではない」というタイトルの章。
中秋の名月の夜、一人の座頭はある男と打ち解け、男が持って来た酒を飲み、すばらしい夜を過ごします。ところが帰る途中に荒っぽい男に突き倒されてます。
「この世にはすばらしく親切な人もいれば、とんでもない暴漢もいる」と盲目の座頭は嘆きますが、観客には前者と後者は同一人物であるとわかります。
「人間はちょっとしたことでまったく異なる自分が表に出てくる」「われわれは常に同じ自分でいることはできない」と著書の植島先生。
人間の性格は固定されているのではなく、関係の中で生じる。
AさんにとってBさんはとてもいい人でも、Cさんにとっては最低な人かもしれません。だったら、人間関係を選ぶことで、性格も変えられるかも。
自分の性格が悪いと自己嫌悪に陥るのだったら、付き合う人を選ぶべきです。
「いきるチカラ」からは多くのことを学びました。
「運は常に回さなくてはいけない」という教え。そのためには旅が有効です。
そして、一人の人間がたくさんの顔を持つべきという教え。
状況の変化に従って自分も変わる。自分が決めたことにこだわってはいけないという教え。