翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年秋、スペイン巡礼(フランス人の道)。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。おかげさまで重版になりました。

映画『365日のシンプルライフ』

映画『永遠の沈黙へ』を観るのを先延ばししていたら、岩波ホールに行列ができるようになり大いにあせったことから、興味がある映画は早めに観に行くことにしました。

オーディトリウム渋谷で『365日のシンプルライフ』を観ました。
フィンランド映画で、多すぎるモノがテーマ。これは絶対に観るべき映画でした。

26歳のペトリが所有物をすべて倉庫に預け、1日に1個だけ持ち帰る実験にチャレンジ。
映画冒頭では全裸のペトリが雪の舞うヘルシンキの街を倉庫へと向かいます。せめて夏に始めればいいのに…
片付け指南本などでは、家の中にあるモノの中から、不要なモノ、ときめかないモノを処分していく方法が紹介されていますが、ペトリの方法はそれを逆にして、まったく何もない状態から必要なモノを1個ずつ選ぶのです。

第一日目に倉庫から取り出したコートを寝袋にして何もない部屋で眠りにつきます。
食料は弟からの差し入れがあり、外食はOKのようです。
1日目はコート、2日目は靴、3日目はブランケット。
ある程度揃ったところで仕事にも行きますが、下着やソックスなしで出勤です。

監督、脚本、主演をペトリ・ルーッカイネンが一人で担当しているので映画制作もかなりシンプルだったのではないでしょうか。

インタビューでペトリは実験を始める前に5000〜20000点のモノを持っていたと語っています。40㎡の部屋はモノでいっぱいだったそうです。
私の家にはもっとモノがあふれています。掃除してもちっともすっきりしません。

ペトリほど過激な実験をしなくても、なんとかモノを少なくしたい。
ヒントとなるのはフィンランドのライフスタイルです。

フィンランドの多くの人は長い夏の休暇をサマーコテージで過ごします。
森と湖に囲まれた簡素な生活を送ることで、複雑すぎる現代生活を定期的にリセットしているのでしょう。

アンネのボーイフレンドの両親のサマーコテージ。
毎年ここで何週間も過ごすと聞き「毎日、何をしているのですか?」と質問してしまいましたが「なんでそんなことを聞くの?」というような顔をされました。
やることといえば、湖での魚釣りやキノコ狩り、料理、薪割り、サウナ。簡単な掃除と料理。隣のコテージとは100mほど離れていますから、近所づきあいはあまりありません。湖の景色をながめながら静かにお茶を飲むだけでも時間は過ぎていきます。

日本人がイメージするぎっしり日程が詰まった観光旅行とは正反対です。休暇の暇は「ヒマ」ですから、モノだけでなくあわただしいスケジュールからも解放されるのが本当の休暇なんでしょう。

旅に出ることは、一種のリセットです。
大きなスーツケースは好きではないので、最小限の荷物を心がけています。これを旅だけではなく、人生全般にあてはめればいいわけですが、知らず知らずのうちにモノが増えていきます。

旅のために必要な荷物だけを選んでいると、自宅にあるほとんどのモノは要らないんじゃないかと思えてきます。
365日のシンプルライフ』では、「本当に必要なモノは100個、生活を楽しむために100個」という台詞がありました。365日もたたないうちにペトリは「もう倉庫に取りに行かなくてもいい」という心境に達しています。