4月から湯島聖堂で月1回、「陰陽五行思想の原理と応用」という講座で『呂氏春秋(りょししゅんじゅう)』を読み進めています。
『呂氏春秋』とは、中国の戦国時代末期、秦の呂不韋が学者を集めて編纂させた書物で、歳時記のルーツのようなもの。
春夏秋冬を孟(始め)、仲(中頃)、季(末期)に三分し、天文気候に対応して、人がやるべきことを記したものです。
『呂氏春秋』を貫く思想は「天人感応」。天と人間は対応関係にあり、人間がやることの善悪が自然界の変化を引き起こすというものです。
講師は日本女子大教授の谷中信一先生。昨年、陰陽五行の基礎を半年間にわたって学び、その続きとして受講しました。
先月の講座では季春紀(春の末期)を読みました。
「季春の月。日は胃に在り」
太陽は二十八宿の胃宿に位置しています。「胃宿とは牡羊座」と谷中先生が説明されて、一瞬、占い学校にいるような気になります。
太陽星座が牡羊座となるのは、春分の日からの1ヶ月間。年によって変動がありますが3月21日から4月20日です。
洋の東西を問わず、古代の学者たちは日が暮れると学者たちは星空を熱心に観察していたのでしょう。
西洋占星術では木星は幸運の星とされます。雑誌の星占いで「12年に一度の幸運期が到来」とあるのは、木星が自分の星座で入ってきたということです。
木星は公転周期がほぼ12年であることから、年の十二支を司る星として中国では「歳星」と呼ばれています。
先日、kamomeskyさんのブログを読み、夏の一番暑い時期を英語でdog daysと表現することを知りました。
夏に犬が暑そうにしているからではなく、dog daysのdogはおおいぬ座の一等星シリウスを指すそうです。夏の明け方、東の空に昇るシリウスが見えることから、この表現が生まれたとのこと。そして、シリウスは中国語では「天狼星」と犬にまつわる名前がついているのが興味深いとkamomeskyさんは書いています。
『呂氏春秋』にはこんな一節もあります。
今の世では占卜や祈祷による治療をよしとするので、そのために疾病がいよいよ流行する。譬えていうと、弓を射る人が射ても中たらないとて、(技の拙さを棚にあげて)的を直そうとするようなものである。
(中略)
巫の占いや医者の治療、さまざまな薬による療法、これらはいずれも病を駆除して癒そうとするものであるが、もともと昔の人はそれを軽蔑していた。というのは、それが根本を忘れた末節だからである。(楠山春樹訳)
これが書かれたのは紀元前239年頃。医術が占いと同列に置かれて、両方とも馬鹿にされています。
湯島聖堂へはJR御茶ノ水駅から聖橋を渡って向かいます。大成殿、孔子像の前を通り、講座が開かれる斯文会館へ(写真は大成殿の門)。
中国の地図が掲げられた高い天井の講堂で星や暦の話を聞いていると、自分がどの時代のどの国にいるのか一瞬わからなくなります。