渋谷ヒカリエのシアターオーブでミュージカル「ブリング・イット・オン」を観ました。
チアリーディングに打ち込む女子高生のお話で、bring it onとは「かかってこい!」「喧嘩上等」という威勢のいい言葉。
たしかに、チアリーディングの大会で優勝するために「そこまでするか」という強烈な内容です。
アメリカの高校のスクールカーストで最上位に立つのは、男子ならアメフト、女子ならチアリーダーと言われます。
主人公のキャンベルはチアリーディングの名門校の新キャプテン。恵まれた容姿に運動神経、さらに人望も厚く成績優秀というロイヤルストレートフラッシュ並の手札をそろえた勝ち組です。
すべてを持つクイーン・ビー(女王蜂)であったはずのキャンベルが、チアリーディングのない高校に強制的に転校させられることで物語が展開していくのですが、アメリカ人にとって高校時代のスクールカーストはけっこう重たいものなのでしょう。
コロンバイン高校銃乱射事件はスクールカーストからはみ出した男子によるものだとされていますし、卒業後もけっこう引きずるのかもしれません。
映画「サンシャイン・クリーニング」のヒロインは、派遣の家政婦として働いていますが、高校時代はチアリーダー。
豪邸の掃除に行ったら、そこは元同級生の家。「あら、誰かと思ったら…」と声をかけられるのは、とんでもない屈辱でしょう。
「高校時代のスクールカーストなんて忘れよう」という強いメッセージが込められているのが、ミュージカルのエンディングの曲。
「ぜひとも優勝したい」と上昇志向の塊だったはずのキャンベルが朗々と歌い上げます。
In twenty years, it's not a big ole trophy that I'll miss.
(20年もたてば、大きなトロフィーなんて、なんの意味もない)
たしかに。部屋にトロフィーや賞状を飾るなんて、来客に「私は承認欲求が強い」と伝えているようなものです。収納するにもスペースが必要。そんなものはないほうが身軽に動けます。
そう考えながらこの曲を聴くと、教訓に満ちた名曲に思えてきます。
大きなトロフィーよりも、仲間と知り合ったことのほうが意味があるということでしょう。
たしかに、学生時代にどんなにいい成績を取ったかより、今でも会いたいと思える友達がいるほうが卒業して20年もたつと重要になってきます。
キャンベルの転校先「ジャクソン・アイリッシュ高校」なのは、白人の中でもアイルランド系は長らく二流と見られていたからなんでしょうか。アイルランドの妖精、レプラホーンがうまく使われています。
ジャクソン校のスクールカラーがアイルランドのシンボルである緑色なのに対して、キャンベルが元々所属していたトルーマン高は赤。イングランドの色です。