翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年秋、スペイン巡礼(フランス人の道)。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。おかげさまで重版になりました。

世界を支える数字

ケネス田中先生の「仏教聖典を初歩英語で学ぶ会」。田町の仏教伝導協会で月1回、開かれます。

1月のテーマは四つの聖なる真理(四聖諦)でした。英語では、Four Noble Truth。
第一の真理は「苦しみ(suffering)」、第二の真理は「苦しみの原因(the cause of suffering)」、第三の真理は「苦しみの消滅(cessation)」、第四の真理は「道の教え(the path)」です。

四象八卦、九星、十干、十二支、六十干支など占いの世界では、数字がよく出てきます。
易はまさに数を使った二進法の占術ですし、西洋占星術の12星座は火地風水の4エレメント、活動宮、固定宮、柔軟宮の3区分があります。
そして、あらゆるものを数字に置き換えて占う数秘術というものもあります。

聖なる真理を数秘術で考えてみるとこうなります。
1は点であり始まり。自発的に始めないと無のままです。仏陀はこの世は苦しみに満ちていることを知り、王宮での安逸な生活を捨て、スピリチュアルな道を探すことになりました。
苦しみは八種類あります。生・老・病・死・怨憎会苦・愛別離苦・求不得苦・五蘊盛苦。
birth, aging, illness, death, having to face what one does not like, having to separate from what one likes, not getting what one wants, attachment to the five psysical-psychological components that make up my experience.

2は直線。対立している二つの点を関係づけます。苦しみには、原因があります。
原因は三つあります。貪り、憎しみ、愚かさの三毒です。
greed, hatred, igonorance.

3は三角形。対立する二点に調和の関係が生じます。苦しみが消えてなくなる悟りの状態です。
悟りは英語でnirvana。ロックバンドの名前にもなっていて、英語の辞書にも載っているそうですが、英語圏では涅槃というより、「最高の状態」「幸せ」といった意味に取られているそうです。こういう話が聞けるのが本当におもしろい。

4は四面体。時間と空間が生じ、ものごとが具象化します。悟りを得るための道があることが示されます。
その道は八正道。正見、正思、正語、正業、正命、正精進、正念、正定。
Right View, Right Thought, Right Speech, Right Conduct, Right Livelihood, Right Effort, Right Mindfulness, Right Concentration.
数秘術で8は、四角形を重ねた形。古いものと新しいもののバランス、中庸を意味します。
マルセイユ版のタロットカードで8を示すカードは「正義」。欧米の裁判所には、天秤を持った正義の女神のモチーフがよく見られます。

1月の講座にはカナダ人のロバートさん、イギリス人のロジャーさんも参加。
ロジャーさんは一神教ユダヤ教との比較では、「これをしていはいけない、あれをしろ」というしきたりが多くて、仏教の飾り気のないところに惹かれたと話していました。

そういえば、十戒も10という数字です。
十戒は神から一方的に命じられているのに対し、四聖諦は人間である仏陀が修行の末に到達したものです。「両親を敬え」「殺すな」「盗むな」といった教えは道徳的に正しそうだから納得できますが、なぜ偶像を作ってはいけないのか、安息日があるのかは考えず、そういうものだから守るしかないと有無を言わさず押し付けられるようなイメージがあります。

これに対して四聖諦について、ケネス田中先生はこう説明しています。

When we evaluate the Four Noble Truths, they are empirically and logically based. They do not require us to believe in something that we cannot experience in our lives.
この四つの聖なる真理を考察してみると、いずれも経験と論理に基づいていることがわかります。何か私たち自身が生活の中で体験できないようなことを、無理に信じろというわけではないのです。

ケネス田中先生の講座は昨年の9月から受け始めたのですが、最初の回で目を引いたのが次のセンテンスです。
The Buddha was a human being, not a god.
Godじゃなくて、a godなんだ。大学のキリスト教学では、いつもGodという単語を目にしていたので、とても新鮮でした。

昨年末には講座の後に忘年会もあり、受講生や事務局の方々のバックグラウンドもわかりました。
ケネス田中先生は、とても柔軟な考えをなさる方で、私が東洋占術の原稿を書いていることを知ると、「仏教と風水の共通点」といった話題も出てきました。

私の実家は真言宗ですが、高校まで公立だったので、宗教について学んだのは大学のキリスト教学が初めてでした。
海外で仏教徒と名乗っているわりには、仏教について何も知らないまま生きてきました。
四国のお遍路を歩き通したフィンランド人のアンネと出会わなければ、仏教を学ぶ気にはならなかったでしょう。
4月にアンネが再び日本に来たら話すことがたくさんできたし、日本の文化に興味のあるカウチサーファーがやってくれば、これからは仏教を話題にできます。

人とつながることで、学びたいことができ、学ぶことで新たに人とつながっていく。そんな循環を続けるのが理想です。


フィンランド・セイナヨキの教会。禅の影響も受けたアルヴァ・アアルトの設計はとてもシンプルです。