翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

Kiitos Jore! ありがとう、ヨレ様

「どうしてフィンランドを好きになったのですか?」と聞かれたら、「カウリスマキ映画がきっかけで」と答えています。
1996年の映画『浮き雲』。1990年代の初めにフィンランドが陥った深刻な経済危機で職を失った夫婦のお話です。

たしかにこの映画でフィンランドのことが気になっていましたが、それほど熱が高かったわけではありません。
フィンランド語を学ぶ」「カウチサーフィンでフィンランド人旅行者をホストする」「一人で二週間フィンランドを旅する」、こうしたことを思い立って実行したのは、ここ1年半のことです。

背中を押してくれたのが、ヨレ・マルヤランタ。
1990年代、レニングラードカウボーイズのボーカルです。
カウリスマキ映画のために創作されたバンドで、映画で人気が出たので活動を始めました。だからメンバーは他のバンドからの寄せ集め。巨大リーゼントにサングラス、旧ソ連の軍服のコスプレ、そして「レニングラードカウボーイズ」というバンド名は、自分たちをさんざん痛めつけてきたソ連に対するフィンランド人の意趣返しです。

1993年、レニングラードカウボーイズ旧ソ連赤軍合唱団とのジョイントコンサート「トータル・バラライカ・ショー」が開かれ、カウリスマキドキュメンタリー映画を制作。これを観て、ヨレ様にすっかり夢中になったのです。
http://d.hatena.ne.jp/bob0524/20120916/1347748249

先日、伊泉龍一先生のタロット講座のノートを復習していたら、「世界」のカードについて、こんなふうに習っていました。
「世界」は「与えられた運命を成就する」という最強のカード。どんな状況であっても、その瞬間にできる最大限のことができるという肯定感。
だったら、鑑定で「嵐の櫻井君が好きなんだけど、今後どうなるだろうか?」というお客さんに対して「世界」のカードが出たらどうするか?
この講座に出ていた頃は、まだ本格的に鑑定を始めていなかったので、「街占ではそんな質問もされるんだ、大変そうだな」と思いました。

伊泉先生の解説。
「そういうおかしな人が来たとしても、『世界』のカードが出たということは、『櫻井君が好きだということがすばらしい、最高のこと』という意味。質問によってカードの意味を変えてはいけない」
「『だったら、櫻井君と結婚できるのか?』と聞かれたら、『結婚するかどうかまでは、カードは伝えていない。そんな先のことは考える必要はないのでは。とにかく今、この瞬間、あなたが櫻井くんを好きだという状況は最高』と答えればいい」

こういう講座を受けた数年後に、自分がその「おかしな人」になっていようとは!

「ヨレ様とどうなるか?」でタロット占いはしていませんが、きっと「世界」のカードが出たはずです。
フィンランド」というテーマを持ったことで、楽しいことが連鎖的に起こり、フィンランド人の友人もできました。
フィンランド留学記で「シャイなフィンランド人は、外国人にすぐに心を開くことはめったになく、友達になるためには、かなりの時間が必要。一度友達になれば、絆は強い」という箇所を読んだことがありますが、東京でフィンランド人のカウチサーファーをホストすると、旅先ということもあり、一気に仲良くなれました。

そのまま流れに乗って、2週間の旅に出ました。
4泊させてもらった新聞記者のアンネによると、ヨレ様はヨガのインストラクターもやっているそうです。
「レッスンに出てみれば?」と、からかわれました。

レニングラードカウボーイズ卒業後、ヨレ様は新たなバンドを結成したり、ソロ活動をしていましたが、フィンランド自体の音楽市場が小さいこともあり、芸能活動だけでは食べていけなかったようです。

ヘルシンキの中古CDショップで、革ジャンに刺青というメタル系お兄さんに「ヨレ・マルヤランタのCDはありますか?」と尋ねたことがあります(フィンランドはメタルロックが盛んです)。
店中を探してくれましたが、1枚も見つかりません。
「ヨレはあまり人気がないのね」という私に「そんなことはないよ、たまたま、在庫が切れているだけだからね」となぐさめてくれましたが、それはメタル系お兄さんの優しい嘘だと思います。

私が好きなのは、あくまでもステージで歌うヨレ様。ヨガのレッスンに出るつもりはありません。
それに、20年前のトータル・バラライカ・ショーのイメージを押し付けられても、ヨレ様だって困るでしょう。

フィンランド旅行では、会いたい人すべてに会えましたが、ヨレ様だけは会っていません。
だからといってヨレ様熱が冷めたわけではなく、今でも彼の歌はよく聞きます。
この歌声に魅了されたからこそ、一連の行動につながっていった。地球の裏側で、自分の20年前の歌声が一人の日本人の人生を変えたなんて、ヨレ様は想像もしていないでしょうが、ヨレ様にはいくら感謝してもしきれません。


ZZトップの「ギミ・オール・ユア・ラヴィン」をヨレ様が歌うと、この通り。赤軍合唱団のおじさまたちが西側の音楽にノリノリなのも、ほほえましい。
我が家に泊まったカウチサーファーとトータル・バラライカ・ショーを一緒に観ることがあるのですが、音楽好きのヨルマは「レニングラードカウボーイズは奇妙な出で立ちからコミックバンドと思われることが多いけれど、メンバーはそれぞれ別のバンドで音楽活動しているから、テクニックは高い。ロシア風メランコリーとアメリカのロックをうまく融合させている」と解説してくれました。
ニューオリンズ出身のケネスには「日本人のバンド?」と聞かれました。生粋のアメリカ人からすると、それぐらい東方ぽく見えるのでしょう。