昨年11月のシンガポール旅行に続き、再びシンガポールに来ています。
世界中、行きたいところは山のようにあるのに、なぜ同じ場所を旅するのか?
若い頃はとにかく未知の場所に行ってみたかったものです。パスポートに押される入国スタンプが増えるほどに、文字通り自分の世界が広がっているような気になったものです。
でも、あるとき、やたらと新しい国に行くよりも、特定の場所をじっくり味わってみたいと思うようになったのです。
“Been there, done that.”という英語の慣用句があります。
「あそこにも行った、あれもやった」という意味。Tシャツにプリントされているようなクリシェ表現で、あれこれやったけど、もう飽きちゃったという倦怠感がにじみ出ています。
これを口にするようになったら、人生は退屈なものになります。
この考えをもたらしてくれたのは、ある編集者です。
彼は休暇のたびごとに、同じ都市に旅していました。その理由を尋ねると、「季節が違うと、違う風景が見えてくるんだよ」という答えが返ってきました。
シンガポールの場合は、それほど季節感はありませんが、旅する私の経験値は違います。だから違う風景が見えるし、前回の旅では見落としていた発見もあります。
地下鉄の切符の買い方、タクシーのつかまえ方、どこにいい酒場がありそうか。
二度目だと街歩きのコツがかなりわかります。単なる通りすがりではなく、その街の一部分になったような気になれると、本当の旅が始まります。
ザ・バンドの映画「ラスト・ワルツ」でロビー・ロバートソンとリヴォン・ヘルム(今年4月に死去)が、ニューヨークについてこんな風に語っていました。
(ニューヨークに行くのは)
まさに夢の実現。
魅力的だけど、怖い。
一度だけじゃ、だめだ。
恋するまでには、二度、三度と足を運ばねば。
必ず好きになる。最初は「おととい来やがれ」って感じだった。
それでも、馬鹿みたいにまた行くわけだ。
そして最後は恋に落ちてしまう。
リヴォン・ヘルムはアーカンソー出身です。
同郷のよしみでしょうか、ビル・クリントン元大統領は自伝で、この部分を紹介しています。そして、自分も初めてニューヨークに行ったときにまったく同じだったと回想しています。
東洋占術を学ぶ者にとっては、香港や台湾、シンガポールは夢のような都市です。今回の旅で、シンガポールと恋に落ちることができればいいのですが。