翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

午後4時過ぎの聖天宮(せいてんきゅう)

埼玉在住の占い師の友人に誘われて、坂戸の聖天宮(せいてんきゅう)に行ってきました。

とにかく不思議なお宮です。

昔は道もなかったという辺鄙な地にいきなり出現する中国建築。
当初、友人は「あやしげな新興宗教の本部?」と敬遠していたのですが、調べてみると台湾の道教のお寺です。

建てたのは、康國典という方。四十歳半ばに不治の大病をわずらい、道教の神「三清道祖先(さんせいどうそ)」によって一命を取り留めました。感謝の気持ちを現すためにお宮を建てることを決めたのですが、台湾ではなく日本、しかも埼玉県坂戸に建てるようお告げがあったというのです。
着工は昭和56年。当時は道もなく一帯は雑木林。台湾から宮大工を呼び、15年かけて完成しました。

友人とは午後2時過ぎに駅で待ち合わせたのですが、うっかり駅を乗り過ごしてしまいました。待ってくれた友人は、車のエンジンをつけていたため、バッテリーが危うくなり、修理工場に寄ることに。ハンドルの具合もおかしいというので、途中の北向き地蔵でおろしてもらい「占いが当たる」というご利益のお地蔵さんに祈りつつ待っていました。

修理工場によると、ベルトが切れていて、よく工場まで運転できたと感心されるほど危険な状態だったそうです。

代車を貸してもらい、聖天宮へ向かいます。
「あのまま進んでいたら、レッカー車移動か、最悪、事故を起こしていた」という友人。待ち合わせに遅れたことで結果的に危険を回避できたのは、早くも聖天宮のご利益がもたらされたのだろうかと話しながら聖天宮に到着。

門扉が閉まりかけていました。
案内板を見ると拝観時間は午後4時まで。数分、過ぎています。
しかし受付の方は「せっかく来てくれたのだから、ゆっくり見ていって」と中に招き入れてくれました。

15年かけて作られた豪華な建築です。道教のお宮としては日本最大級。中華街の関帝廟媽祖廟よりも立派です。
本殿で案内してくれるのは、台湾出身の青年。時間外勤務になるのではと心配したのですが、ありがたい道教の教えを伝えるのが嬉しくてたまらないかのように、丁寧に説明してくれます。拝観時間を過ぎているので、境内にいるのは私たちだけです。

聖天宮は、個人的に建てられているので、布教活動は一切していません。そして建築費も維持費も台湾から送られてくるので、儲ける必要もないのでしょう。拝観料金の300円では光熱費にも足りないと思います。

道教の神仙思想は、陰陽や八卦のルーツです。東洋占術を生業としている者にとっては、ぜひお参りしておくべきお宮です。
捧げ持ったお線香の煙に託し、三清道祖に感謝の気持ちを送り、今後も東洋占術の道を勧めるように祈りました。

パワースポットと呼ばれる場所は、訪れる人の欲望が渦巻いて、どこか禍々しいところもあるのですが、聖天宮は、そんな気配が一切感じられない、すがすがしい場所でした。