ここ2ヶ月ほど、呼吸についての原稿に取り組んでいます。京都の整体師の先生のお話をうかがい、大量の取材データを書き起こす作業もいよいよ大詰めです。
その整体師の先生は、白隠禅師の教えを実践しています。
白隠禅師は、仏教修行に打ち込むだけでなく、病を治す治療法を考案した江戸中期の禅僧です。
たとえば、軟酥(なんそ)の法は、今で言うイメージ療法のようなもので、鴨の卵ぐらいの大きさの軟酥(柔らかいバター)の丸薬を頭に乗せているのをイメージし、丸薬が頭から両肩、両手、胸、内臓、そして足の裏まで浸透し病を癒す情景をひたすら想像するというものです。
宇宙にすべてを委ねる内観法、丹田を意識した呼吸法など、薬や手術に頼らず、自らの力で病を治そうとする流れは、欧米でも代替医療の一つとして注目を集めています。
Zenは、スピリチュアル系の欧米人にとっては、おなじみの思想です。
ジョアン・バニングのタロットの解説書を読んでいたら、マイナーアルカナのカード「カップの5」で白隠禅師が紹介されていました。
「カップの5」のカードには、喪失の悲しみにくれる黒いローブの男性が描かれています。
「何かを失うことは、心の痛みを伴うが、成長の新しい可能性を開く」というのが、ジョアン・バニングの解釈です。
そして、白隠禅師のエピソードに続きます。
あるとき白隠師匠は、子どもを認知するように訴えられます。ただしその子どもは、実際には白隠の子どもだったわけではありません。それにも関わらず、その誤った訴えによって、白隠は地位を喪失してしまいました。
しかし白隠は、自分に起こった境遇を受け入れ、何年も優しく子どもの面倒を見続けました。ところが、ある日突然、本当の父親が白隠の前に現れます。
そして白隠は父親の望むとおりに、子どもを両親に引渡します。
そう、白隠はまたもや、喪失を受け入れたのです。
禅のマスターでない人にとって、ものごとの変化を受け入れ、その流れに身を委ねるのは容易なことではないでしょう。
とはいえ、このストーリーから何かを学ぶとすれば、それは喪失を受け入れるというプロセスです。
人は過ぎ去って行くものを押しとどめようともがけばもがくほど、苦しみはより大きなものとなっていくものなのです。
ラーニング・ザ・タロット―タロット・マスターになるための18のレッスン
- 作者: ジョアン・バニング,伊泉龍一
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