翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

グランマ・ゲイトウッドにあこがれて

これこそ、私が読むべき本だと手に取ったのが『グランマ・ゲイトウッドのロングトレイル』。

 

昨年、シェリル・ストレイドの『わたしに会うまでの1600キロ』を読んで長い距離を歩いてみたいと思うようになりました。

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私の年齢に近いのはシェリルより67歳のエマですが、読み進むにつれてエマと私はあまりにも違うことがわかってきました。

1887年生まれのエマには、11人の子ども、23人の孫がいます。当時のアメリカには子沢山の女性がたくさんいたのでしょう。ボブ・ディランの『ハッティ・キャロルの寂しい死』でも、10人の子どもを産み育てたホテルの配膳係が歌われています。

エマはずっとアパラチアン・トレイルのことを考えてきて、ようやく出発できた1955年には67歳になっていました。身長157センチ、体重68キロ(歩き始めて3カ月で靴を3足履きつぶし、11キロ近く減量しました)。トレイルの費用は介護施設で働いて貯めました。そして、子どもたちにも言わずに家を出ます。誰かに話せば止められると思ったからです。

 何の音沙汰もない母親が一体どこで何をしているのか子どもたちは知りもしなかったが、誰一人として心配はしていなかった。ママは骨ばっていて頑強で、不在だとしても、どんなことを目論んでいたとしても大丈夫なのだと彼らは知っていた。エマが長いこと留守にするのは珍しくなかったから、そういえば姿が見えないと思ったとしてもそれを長く気にすることはなかったのだ。

 

トレイルを歩くエマの記録と並行して、彼女の苦難の人生が描かれています。。

夫は富豪の御曹司で地域では数少ない大学の学位取得者。熱烈にプロポーズされて結婚しますが、とんでもないDV夫でした。エマを自分の所有物のように扱い、フェンスづくりやタバコの加熱処理、セメントの混錬のような男の仕事もやらせたうえ、気に入らないことがあると徹底的に痛めつけました。子どもが次々と生まれ、実家も子沢山の貧しい家庭で頼れず、十分な教育も受けていないから働き口もありません。

 

エマの忍耐が尽きたのは1939年の9月。顔は腫れてあざができ、上下の歯が折れ助骨にもひびが入りました。離婚が成立したのは1941年。結婚35年でエマは53歳になっており、「あれからずっと幸せでいる」と書いています。

 

「なぜ歩くのか」と聞かれて、エマはいろいろと答えています。

「子どもたちがようやく家を出たから」

「これまでスルーハイクをした女性はいないと聞いたから」

「自然が好きだから」

「楽しいにちがいないと思ったから」

「山の向こう側がどうなっているか見たかった。そしてその向こう側も」

 

エマが夫の暴力から逃れて、安心できる場所が森でした。歩くことが好きで森の静けさや安らぎに畏敬の念を感じ、詩を書いて過ごしました。そして、暇な時間ができると百科事典やギリシャ古典に読みふけりました。

女性が当たり前に進学できる時代に生きていれば、あるいは結婚相手がDV夫でなければエマの人生はまったく違うものになっていたはずです。時代や夫に奪われた人生を取り戻すために、エマは一人で歩いたのだと思います。

著者は「世界を探索することは自分の心の中を探るのによい方法なのだ」とエマは考えたのかもしれないと付け加え、そして「トレイルでは、人生のつまらないもつれのようなものが、蜘蛛の巣を取り払うようになくなってしまう」という彼女の言葉を紹介しています。

 

人生の終盤が近づいても、一人で歩く勇気を持ち続けたエマは、あこがれの存在です。

 

帯広の旅では、帯広畜産大学のカフェにも行きました。春と秋の北海道なら、長い距離を歩いてみたいものです。

誠実なだけでも、知的なだけでも十分ではない

連日の旧統一教会と政治を巡る報道。

有名人の合同結婚式霊感商法が大々的に報じられたのが、1992年。あれから30年もたっているので、知らないという人も多いのでしょう。

 

しかし、いい年をした政治家が「知らなかった」で押し通せるのでしょうか。そんな危機管理能力で政治家が務まるのでしょうか。

かといって「知っていたけれど、票が欲しいから利用した」と正直に言えば、倫理観の欠如が露呈します。

 

ヤスパースの言葉を思い出しました。

「誠実である、知的である、ナチス党員である。この3つは同時に成立しない」

若いころ新聞のコラムで目にした記憶があるのですが、ネットで検索するとヤスパースの言葉かどうかは定かでないそうです。

 

原文らしき英文にたどりつきました。

If you are sincere and intelligent, you're not in the (Nazi) Party.

If you are sincere and in the (Nazi) Party, you're not intelligent.

If you are intelligent and in the (Nazi) Party, you're not sincere.

もしあなたが誠実で知的であれば、あなたはナチス党員ではない。

もしあなたが誠実でナチス党員であれば、あなたは知的でない。

もしあなたが知的でナチス党員であれば、あなたは誠実でない。

 

第二次大戦が終わり強制収容所が解放され、ドイツのナチス支持者の多くは、ナチスがやってきたことを知り愕然としたそうです。2番目の「誠実なナチス党員」だったのでしょう。

中には、うすうす感づいていたけれど、ナチスを支持しなければ不利になるので知らないふりをしていた人もいたでしょう。3番目の「知的なナチス党員」です。

 

できれば誠実で知的に生きていきたいけれど、加齢とともに判断力は衰えます。世の中はますます複雑化していき、正しい選択ができるか自信がありません。

 

長崎の大浦天主堂(おおうらてんしゅどう)。命を差し出すほどの強い信仰はどうして生じるのか興味がありますが、永遠の謎です。

 

そして、どの宗教も始まりはカルト。仏陀は妻も子供も捨てて出家して、家族は大いに悲しんだそうです。

キリストも金持ちの青年に「持ち物を売り払い、貧しい人に施しなさい」と説教しました。そんなことはできないと青年が立ち去ると、「富んでいる者が天国に入るのはむずかしい。金持ちが神の国に入るより、ラクダが針の穴を通る方がまだやさしい」と弟子たちに言いました。カルト教団献金集めマニュアルに書いてあってもしっくりきます。

 

今後、私が洗脳される可能性はゼロではありません。占いなんて怪しいものに関わっているし、瞑想や巡礼に興味があるから。信じることで安らぎが得られるならそれもありですが、人を勧誘するようになったらおしまいです。

 

ラム・ダス『覚醒への旅』の一節を肝に銘じます。

 神と悪魔とがある日、街の通りを歩いていったとき、神はからだをかがめて何かを拾い上げたというお話がある。神は手のなかで光り輝くものをじっと見つめた。好奇心を抱いた悪魔はたずねた。

「それはなんです?」

「これはね、真理なんだよ」と神は答えた。

「ねえ」と悪魔は手をそれに伸ばしながら言った。

「私にもたせてくださいーーあなたのために、それを組織化しますから」

 

 

ホテル暮らしを体験してみる

旅暮らしをしてみたいけれど、ズンバが踊れない日が続くのに耐えられず2泊か3泊で切り上げています。

毎日のように通っているスポーツクラブがお盆休みで休館。どこかに旅する絶好の機会ですが、お盆の時期はどこも混んでいて宿泊費は高いし、コロナも心配です。

 

そこで考えたのが、観光地でない近場。NHKの朝ドラ『ちむどんどん』の舞台、鶴見のビジネスホテルに4泊することにしてみました。あまりにも突っ込みどころが多いので、かえっておもしろくなって毎日見るようになっています。

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鶴見は東京から京浜東北線で30分。横浜にも10分ほど行けて、羽田空港に出るのも便利。駅前にはなんでも揃っているし、ここに住んでもよかったかなと思える街です。30年ほど前は、いい大人が昼間にぶらぶらしているとあやしい目で見られることが多く、同業者の多い中央線を選びました。リモートワークが定着した今なら、どこでも住めるし、老齢を迎えれば無職に見られてもどうってことはありません。

 

あこがれのホテル暮らし。といってもビジネスホテルでは、いずれお世話になるかもしれない高齢者施設の入所体験に近いかもしれません。

コインランドリーがあるので着替えもそんなに必要なく、最小限の荷物。仕事用のパソコンと資料がかなりの重さになりました。

 

食事は外食かテイクアウトで、家事を一切しなくていいのは楽です。気候が良ければ鶴見を探索したかったのですが、出発日は関東を台風が直撃、その後は危険な暑さで散歩なんてとてもできません。

気を散らすものがないので、仕事ははかどりました。ランチやお茶で地元の店に行くのもいい気分転換になりました。

 

それでも3日目ぐらいから「家に帰りたい」と思うように。家のほうが広いし、何でもあるし。自分はミニマリストになるのは無理だと悟りました。

でも、自宅で暮らすのがむずかしくなったら、最小限の荷物をまとめて、こうした暮らしを受け入れなくてはいけません。その時が来てあわてたり悲嘆にくれることのないよう、いい予行演習になりました。

 

ウラナイ8の杏子さんは神奈川県民。「横浜にいるのなら、一日ぐらい会いましょう」と、声がかかり崎陽軒アフタヌーンティーへ。

 

杏子さんのお誘いが今回の滞在の最大のイベントに。結局、物より貴重なのは人間関係。所有物が少なくても、こうして気の置けない会話ができる人がいれば、どこでも楽しく暮らせるはずです。

新たな視点を手に入れるための占い

カルトの報道が多くなると、占い業界には逆風となります。

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占いは大手をふって世間に誇れる仕事ではありません。

それでも一定のニーズがあり、斜陽の出版業界で安定した収入を得られているのは占いという専門を持っているからです。

カルトの入口として占いを規制するべきだという意見もわかりますが、うさんくさいもの、不思議なものをすべて封印した世界は息苦しくなります。

 

ウラナイ8の杏子さんが開催する易の読み会では、日常生活で迷っていることをお題に出してみんなで易を立てます。ちょっとハードルが高かったヒップホップのクラスに出るように背中を押してくれたのは易占のおかげ。

 

かといって、すべての決断を占いにゆだねているわけではありません。

6月末の易の読み会では「原稿執筆カフェのアルバイト」を占ってもらいました。

日本だけでなく世界のニュースで取り上げられて大ブレイクした原稿執筆カフェ。オーナーの川井さんは映像関係を始めマルチに活躍しています。フォーマットを作ったら複数のスタッフで回していくようで、働く人を募集していました。

ワンオペですが、ドリンクはセルフサービス。レジは電子マネー対応のみですが、マニュアルがあればなんとかできるでしょう。応募資格は、店の利用経験があるライター。1時間に一度、お客様の進捗具合を確認する以外は、カウンター内で自分の原稿を書いていればいいのです。

川井さんは年齢差別をしそうもないし、応募すれば採用してもらえるかも。

易の読み会で出た卦も悪くないし、カフェ店員デビューもいいかもと盛り上がったのですが、穂高養生園JAL「どこかでマイル」の帯広の旅が予定されていました。採用された直後に「この日は無理」を連発するのはよくないので、帯広から帰ってから応募することに。

世の中はそう都合よく展開せず、募集の告知は消えました。お客としてカフェに行ってみれば、作家の卵らしい若い方が働いていました。そして、ヒップホップのレッスンに通い出したことで夜のスケジュールはほとんど埋まることに。

 

もし、旅行前でも応募して働くことになったら、有意義な体験ができたかもしれません。タイムマシンがない限り、検証はできません。でも、ライター歴30年の年寄りが若い人向けの場所に座ろうとするのは、易の占断では吝(りん)。凶ではないけれど、恥ずかしいことです。

 

高齢者のヒップホップも吝といえば吝ですが、ズンバと比べると混んでいないのでスタジオの目立たない場所で踊っても誰も気にしないでしょう。

易占の結果に従い原稿執筆カフェで働いてもよかったけれど、そうなれば夜のヒップホップのクラスで踊ることはなかったでしょう。

 

とりあえず占ってみるけれど、結果をどう解釈して従うかどうかは自分次第。そんないい加減なスタンスで占いと付き合ってみるのがいいのでは。

 

福岡県庁近くで見つけた方位盤。今でこそGoogleマップで正確な位置がわかりますが、昔の人はこうしたものを大いに頼りにしたことでしょう。

易や九星気学で方位の象徴はわかりますが、実際にどの方位に進むかは自由意志に託されます。

ヒップホップの守破離

ズンバのレッスンで生きる喜びを満喫しています。

コロンビア出身のベト・ペレスが考案したエクササイズです。エアロビクスのインストラクターをしていたペレスがレッスン用のテープを忘れてしまい、お気に入りのラテン音楽用のテープで即興の振付でレッスンをしたのが誕生のきっかけです。

 

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ズンバは南米のスペイン語で「お祭り騒ぎ」。老いも若きも楽しむということで、人にぶつかりさえしなければ、自分なりの踊りでOK。高齢の参加者も多く、思い思いのスタイルでレッスンを楽しんでいます。

 

毎日でもスポーツクラブに通いたいのですが、ズンバのレッスンがない曜日もあります。スケジュール表を見ると、ヒップホップならあります。

ヒップホップは若者のものであり、60代の私にはとても無理…。そう思っていたのですが、意を決して参加してみました。ヒップホップが生まれたのは1970年代のニューヨークですから、若者だけのダンスではなくなっています。

まずインストラクターがステップを解説。何度も練習をしてから決めのポーズの表情まで指導されます。音楽がかかれば、インストラクターの見よう見まねでいきなり踊るズンバとは大違い。

たとえば、腕を胸の前で組み合わせてステップを踏む振付。「腕の位置を固定してください。腕を左右で上下するとコサックダンスになってしまいます」とインストラクター。レニングラードカウボーイズのファンだった私は思わず苦笑。

 

このままヒップホップを続けていいものか、ウラナイ8の杏子さんが主催する易の会で占ってもらいまいした。古代中国の叡智である易でヒップホップを占うという大胆な試み。

私が出したのは雷地豫(らいちよ)。雷は音の象徴。古代中国の聖王は、この卦により地に響く音楽を創造したとされます。音楽は人間だけでなく神も楽しませ地上に招く力があるからです。

他の参加者が出してくださったのは、雷沢帰妹(らいたくきまい)。ノリのいい音楽(雷)で軽薄な私(沢)が舞っています。そして離為火に乾為天。離(火)や乾(天)が重なるのですから、何度も練習を重ねよという天からの啓示でしょう。

 

ヒップホップのレッスンの終盤になると、スタジオの照明を落として「細かいことは忘れて、自分のスタイルで踊ってください。最終的には音楽に乗れるかどうかが一番大切です」とインストラクター。

ヒップホップも守破離。まずステップの型を身に付けることから始め、さまざまな曲で練習して、独自のダンスを踊れるようになりたいものです。

 

シェイクスピアタロットでは魔術師は劇作家のシェイクスピアで愚者は道化。

 

占いも守破離。ロジックに従うだけなら、AIの占いのほうが正確です。相談者の問いに対する答えを自分の通路を通して読み、どんな表現で伝えるかを工夫し、独自のスタイルを確立していきます。