翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えていましたが、2019年3月で卒業。フィンランドが大好き。

カディスの赤い酒

スペイン7泊の旅。

マドリードを基点にスペイン鉄道で回ります。夫は風車の村、カンポ・デ・クリプターナで20年前にデジカメで写真を撮った子供たちに再会したいというので、ここは外せません。

そうなるとあと行ける街は2つぐらい。

バルセロナはオーバー・ツーリズム(観光公害)が叫ばれていて、旅行者に来てほしくないみたいだし、キリスト教の聖地であるサンティアゴ・デ・コンポステーラは歩いてピレネーを超え巡礼してこそ行く意味があるのでは。美食の街として大人気のサン・セバスティアンは地図で見るとほとんどフランス文化圏。

 

最もスペインらしいのはアンダルシア地方。フラメンコや強い日差しに映える白い壁、ひまわり畑など日本人が描くスペインのイメージに近いでしょう。

マドリードから南下してグラナダコルドバセビリアジブラルタルまで行ってモロッコに渡ることもできます。

旅で欲張るのは禁物。行き先を絞ろうと思って地図を見て、目に入ったのが「カディス」という地名。

スペインと新大陸を結ぶ港であり、無敵艦隊がトラファルガーへと向かった軍港です。

そして『カディスの赤い星』。1986年の直木賞受賞作です。スペインにカディスという街があり、そこを舞台に長編推理小説を書く日本人作家がいるなんて。希望の職に就けずに悶々としていた当時の私にはあまりにもまぶしすぎて、読む気になりませんでしたが、カディスという地名はずっと心に残っていました。

カディスにはセビリアから線路が伸びていますから、必然的に行先はセビリアカディスとなりました。

 

カディスの赤い星』、読んでみました。おもしろかったけれど、いかにも昭和のストーリー。「聖徳太子を1枚」と言われても、2024年には福沢諭吉さえ過去になり渋沢栄一となります。携帯電話がない時代、ハードボイルドに生きるのも楽じゃありません。

 

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カディスの港には豪華客船も停泊し、上陸した乗客たちがリゾート気分を満喫しています。行きの飛行機で観た『劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス』は、金持ちの街リヴィエラムーミン一家が浮いてしまうという内容。カディスは「気取らないリヴィエラ」といったところでしょうか。

 

表通りに面したレストランで食べた昼食のパエリアとカディス名物のいかのフライは大味でしたが、それもリゾート地ならでは。

 

夜は旧市街に近いバルに入ってみました。

気候のいい時期ですから、テラス席が好まれ、店内にお客はいません。店のようすを知りたいので、カウンター席に座ってみました。

まずビール。日本ではスペインのビールはあまり評価されていませんが、現地に行けばソフトドリンク以下の値段で生ビールが楽しめます。そして、カウンター上に並んでいるタパスを指さして注文します。魚介類はもちろん、アンダルシアの強い日差しを受けて育った野菜は力強い味わいです。

 

カウンターの中は男性一人でテラス席からの飲み物や食べ物の注文を手際よくさばいています。どんなに忙しくても悲愴な感じはせず、スタッフが楽しそうに働いているのがスペインバルの最大の美点。お酒がおいしくなります。

 

サングリアを作り始めました。計量なんてせずに一気に赤ワインを注ぎ、香りづけのブランデー、炭酸入りのオレンジジュースを加えます。その手さばきがあまりにも見事だったので見とれていると、赤ワインを最後に追加して一杯分をグラスに取り分けて、「味見してごらん」とばかりに私の前に置いてくれました。

 

カディスの赤い星』にちなんで、カディスで何か赤いものを探そうと思っていたけれど、目の前に置いた赤いサングリアこそ私の求めていたものでした。

 

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記念写真を撮らせてもらいました。いかにも味のある顔です。ほぼ満席のテラス席の注文をさばきつつこんな笑顔を浮かべられるなんて、よほどこの仕事に向いているのでしょう。