4年前の夏に我が家にホームステイしたフィンランド人のヘンリク君がこの秋から京都工芸繊維大学に交換留学すると知り、日本で一緒に見た映画『かもめ食堂』を思い出しました。ヘルシンキの日本語教室ではよく話題に出るそうです。
ヘルシンキで日本食の食堂を開いたサチエ。フィンランド人は店の中を覗くものの、客足はさっぱり。サチエの家に居候させてもらっているミドリは、なんとかしなくてはと知恵を絞ります。
「おにぎりは梅、鮭、おかかに限る」と考えるサチエに「コンビニで、ツナマヨとか新しいおにぎりが人気だから」とトナカイ、ニシン、ザリガニのおにぎりを提案。いずれもフィンランド料理の食材です。
市場で食材を買ってご飯を炊き、試食。実際に食べてみると、おいしくない。とても食堂では出せません。
恐縮するミドリにサチエは「やってみたからわかったことだってある」と言います。
サチエのおにぎりのポリシーと同じように、人にはどうしても変えられない向き・不向きがあります。
わざわざ向いていないことに挑んで消耗するのはエネルギーの無駄。そのためにも自分の性質をよく知っておくべきで、占いを活用するのも一つの手段です。
かっちりした組織で働くのが苦手な私は、会社勤めは切り上げ、30代からフリーランスで働いてきました。
しかし、何を血迷ったのか、副業で日本語教師になってしまいました。外国人との交流が得意だから、日本語教師に向いているという思い込みが選択を誤らせたのです。そもそも学校が大嫌いだったのに、教師になんて向いているわけがなかったのに。
実際に教えていた3年間に加え、日本語教師の養成講座の費用と労力。3年で辞めたことを告げると「なんてもったいない!」と言う人もいました。
いや、ぜんぜんもったいなくないから。
日本語教師にならずに年老いたら「やればよかった」と悔やんでいたことでしょう。「やってみたからわかったこと」は、教師と学生ではなくフラットな関係で外国人と関わりたいという希望です。
「結婚や子育てはコスパが悪い」と言われますが、だったら一番コスパのいい生き方はすぐ死ぬことではないでしょうか。
かもめ食堂のフィンランド風おにぎりは不発に終わりましたが、カリフォルニアロールは世界を席巻しています。とりあえずやってみることで、やめる決断をしてもいいし、続行してもいい。人生が広がり、次の一手を打つことができます。