昨年の秋に築20年のマンションのリフォームを決意し、この春から工事が始まりました。
工事開始日の朝、リフォーム会社の現場監督さんが来て、鍵を渡しました。
3週間の家なし生活のスタートです。
大きめのキャリーバッグと通勤ラッシュの電車に乗りたくなかったので、駅前のカフェで時間をつぶし、午前11時に出発しました。
宿泊先は予約サイトを見て、安いところを探しました。同じホテルでも曜日が違えばぐんと値段が跳ね上がるので、だいたい2日ごとに移動していきます。横浜を中心に神戸の実家、山梨の温泉などを転々としながら3週間を過ごす予定です。
元住吉の川崎国際交流センターのホテルは、とても助かりました。
公営のホテルなので、繁忙日でも価格が変わらないのです。夫婦で泊まって素泊まり6400円。一人3200円です。駅からは徒歩で10分ほどかかるのですが、商店街を通っていくので苦になりません。
家もなく日本語教師という職もなく、ホームレス状態の私にとっては、時間がつぶしやすいというのもありがたかったです。図書館や公園、レストランが併設されているし、商店街には居酒屋やカフェもあります。
これまで「締切に間に合うか」「週3回の授業準備が終わるか」と時間と競争ばかりしてきたのに、いきなり正反対の生活です。
時間がたっぷりあるので、ネットのおもしろそうな記事を見ていたら「アドレス・ホッピング」という言葉を見つけました。
この市橋正太郎さんという方は、1年間で合計5カ国、52都市に住んだというツワモノです。
アドレス・ホッピングといえばかっこいいけれど、つまりは住所不定、家なし。
帰る家が定まっていないのは、いかにも心もとないようでいて、開放感もあります。
バックパックで長期旅行なんて若いうちにしかできないと思っていましたが、期せずして長期旅行に出ているような気分です。
市橋さんが「本当に必要なモノなんて、殆どない」と書いていますが、たしかにそんな気がしてきました。家に置いてあれこれ、帰ったらどんどん処分できるような気がします。
毎日会う人が違うわけですから、同じ服を着ていても問題ありません。そもそも芸能人でもないかぎり、何を着ようがあまり気にされることもないだろうから、季節ごとに2~3着ずつ、合計10着ほどの服があればいいのでは。
昨年末に亡くなった私の母は大型のクローゼットにぎっしり服を詰め込んでいました。パーキンソン病で体が動けなくなり、施設に入ってからはレンタルの寝巻きで過ごしました。体は一つしかないのだから、服も靴もそんなに要らないし、バッグだってどうしてたくさん欲しくなるのでしょう。
市橋さんはこう書いています。
Must have(必須)とNice to have(持ってた方がいい)に分けていくと、ほとんどがNice to haveに属するもので、実際これらは持っていてもほぼ使いません。
横浜近辺の友人とランチを食べて、東急ハンズで見つけたクリップ型のキーホールダー。「バッグの中で迷子にならない」という謳い文句と白い猫が愛らしくて思わず手に取りました。小さいものだし、買ってしまおうかと思ったのですが、いやいや、これこそ Nice to have だと、棚に戻しました。
アドレス・ホッピング中に切実に必要だったのは、電源とWi-Fiだけでした。