今年、最もおもしろかった映画は『クレイジー・リッチ』です。
BD/DVD/デジタル【予告編】『クレイジー・リッチ!』2.6リリース/12.12デジタル先行配信
なんてよくできたストーリー!
貧しくても美しくて性格のいい女の子が王子様に見初められるのがシンデレラ・ストーリーですが、主人公のレイチェルはニューヨークの大学教授という立派なキャリアを持っています。これがいかにも現代風。
恋人のニックは、シンガポールの大富豪の御曹司ですが、自分の家族についてまったく語りません。
レイチェルと母の会話で「もしかして実家が貧乏で仕送りしているのかも…」というセリフが出てきますが、キャリアも収入もあるレイチェルは恋人の実家の経済状況を気にする必要はありません。
ニックからすると、それまで財産目当てで近づいてきた女性にうんざりしていて、実家と関係なく恋愛関係になったレイチェルの存在はかけがえのないものなのでしょう。
そしてシンガポールに行ってニックの家族がクレイジー・リッチであることが明らかになります。
ここからはシンデレラ・ストーリーの王道です。
現代は『Crazy Rich Asians』。どうしてチャイニーズじゃなくてアジアンなんでしょう。
餃子にマージャン、風水と出てくるのは中国文化ばかりなのに。
アジアを代表する国といえば中国。日本の影はすっかり薄くなってしまったようですが、日本だって、バブルの絶頂期には「クレイジー・リッチ」と呼ばれていました。
1089年にはニューヨークのロックフェラー・センターを三菱地所が、コロンビア映画をソニーが買収しました。背景にあるのは、まさにクレイジーな地価の高騰。東京の山手線内側の土地価格でアメリカ全土が買えるほどでした。
少子高齢化によって国力が衰えている現在からは信じられないことです。
それほどお金があったのに、ハリウッドで『クレイジー・リッチ』に匹敵するようなオール日本人俳優の映画は作られませんでした。
『クレイジー・リッチ』に登場するのは、すべてアジア系の俳優。原作者には白人女優を主人公とする映画化の話が持ち込まれたそうですが、断り続けたそうです。
ハリウッドでの映画化では白人のヒーローやヒロインじゃないとヒットしないと言われていたのですが、『クレイジー・リッチ』の成功により風向きが変わったと報じられています。
私が教えている日本語学校は、ヨーロッパに本部があり、欧米の学生が多いのですが、最近ひしひしと中国系の富裕層が増えてきたことを感じています。
「家は中国だけど、イギリスの寄宿学校に入っていて、日本に短期留学」という学生も珍しくありません。
外国語学習は国力に比例すると日本語教師養成講座で習いました。
ここ数年は日本語学習者の急増により日本語教師の需要が多く、50代未経験の私でも日本語学校で採用されましたが、これからはけっこうきびしいのでは…。
『クレイジー・リッチ』は最高におもしろかったけれど、今後についても考えさせられた映画でした。
台湾の夜市の屋台。
映画ではシンガポールの屋台も魅力的に紹介されていました。台湾もシンガポールも、手頃に外食できる場所が多く、女性の社会進出を後押ししているそうです。
母親の手作りの味にこだわる日本文化は世界でも希少な文化として残っていくのでしょうか。